透明の「扉」を開けて

美黎

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7の扉 グロッシュラー

私について 6

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暫く。

何の反応もない彼女をじっと、見つめていた。


瞳は再び隠されていて、口元だけでは感情は読めない。

やっぱ、アレだね………。
「目は口ほどに物を言う」って言うのは正解だわ………。


手を差し出しつつ、そんな事を考えていた。

彼女はディディエライトなのだろうか。
それなら何故?手を取るのを躊躇うんだろう。
私が誰だか、分からないとか?
いやいや、それならティレニアでじゃないよね…うん。

ふと、一つの考えが過ぎる。

「彼女が手を取る事で私に何かが起きる」可能性だ。

確かに。
ない、とは言い切れない。

「どう、思ってるの?でも多分。私達は共に行かないとこのままではきっと、前に進めないんだよ。ここ止まりなの。」

そんな、気がする。

だって彼女が、貴石の人でそれが私の中の、何だかよく分からない「恐れ」や「不安」ならば。

やっぱりそれを前に、進めないからだ。


そうして少し、待っていた。

すると彼女は再び手を上げ、前髪を除けると感情の色が映らない瞳でこう、言った。


「本当に、いいの?」

自分そっくりだけれど、感情の無いその瞳に見据えられて。

そう、言われると怖い。


でも。「駄目」とは、言えない。

だってもう、私は解ってしまった。
この子も、「還るべき場所」を求めて白い森を彷徨っていて、その目的の場所はこの世界の元凶なのだ。

私が「悪の枢軸」とまで思っていた、デヴァイとその、長。

もしか、したら。

もしか、するの?

違うの?

悪の枢軸じゃ、ない???
それとも「悪い」んだけど、大切なの?


確かめないと、いけないんだ。

そうして彼女も「還るべき場所」へ、そのただ一つ欲しいものの所へ、連れて行きたいと。

「私」が、思っちゃったんだ。

だって、きっと彼女は私の一部でもあるのだろう。
それを放って。

私だけ、あの金色にぬくぬく包まれる訳にはいかない。それに、落ち着かない、うん。


しっかりと自分の中で、確かめてゆっくりと頷いた。

「大丈夫。行こう、一緒に。」


そう、私が言った瞬間。



ふわりとした、手の感触と白い閃光、私の中の世界が消えるのと、私の意識が途切れたのは、きっと同時だった。

しかし手の温もりを感じた私に、不安は無かったのだ。

その、時は。









いい香りがする。

ふわりとした場所、でもいつもの金色とは違う感触。

何処だろうか。ここは。

自分が何処かに寝かせられているのは分かる。
しかし、気持ちが良くて起きたくない。

少し、疲れている様だ。
それなら、もう少し休んでいようかな?



すると話し声が近づいてくるのが判る。

あ。

聴き慣れたあの声。

ホッとした自分に気が付いて、寝ていようと思ったくせに不安だった事に気が付いた。

そうしてもう一人の声の主も、判った所でここが何処なのか知れる。

「うん?布団?」

パッチリと目を開け、何故こうなっているのかを考え始めると気焔とイストリアの姿が見えた。


「ああ、目が覚めたかい?良かった。少し待ってて、飲み物を持ってこよう。」

あまり心配していなそうなイストリアは、きっと私がぐるぐるのし過ぎでパンクしたのだと分かっているのだろう。

そう、多分。

あの、自分の頭の中での探し物を、見つけた所為で。

私の頭がショートしたに違いない。


でも特別変わってないと、思うんだけどなぁ………?
どうにか、なったの??

起き上がった私の枕元には、アキが置かれていてとりあえずそれを確認した私は自分チェックを始めた。

金色は立ったまま、何か言いたそうだがこの際終わる迄無視しておこう。

だって。
私に、何が起きたのか。

それを把握しないと、説明のしようが無いからだ。



しかし、髪、手や足、服やチラリと覗いた胸元など全体をチェックしてみたけれど。
特に、身体的変化は無い様だ。

「うーーん?大丈夫、か。ね?大丈夫でしょう?」

確認を兼ねて、金の瞳を見た。


え?ウソ?どこ???

少し色の違う、険しい顔の気焔はツカツカと私に近寄り「グイ」と顎に手をかけた。

「ちょ、首が………。」

私の文句などどこ吹く風の気焔は、まじまじと私の瞳を観察している様だ。

仕方がないので、間近にあるその金の瞳を眺めていた。


いやぁ、めっちゃ綺麗だな、この瞳。やっぱりいいなぁ………近くで見るとまたこの真ん中の濃い部分とこのなんて言うんだろうか縁のつぶつぶみたいな所が堪らんわ~、茶、いや茶まで行かないんだけど濃い、金?なんて言うのかなぁ、それがまたいい感じにこの金色を引き締めていてちょっと間違うと怖いんだけどそれを美しいで纏めるセンスって言うのはやっぱり自然が素晴らしいということ?
あ、そうかこの人石だから自然でいいのか。成る程ねぇ。



「大丈夫、だろう?」

少し揶揄う様な声で部屋へ戻ってきたイストリア。
手に持ったトレーには、冷たい飲み物が乗っている。

声が聞こえた瞬間、パッと手を離した気焔はそのままベッドの隣の椅子に腰掛けた。
首を摩りながら、それを見て一言文句を言ってやりたかったが、小言を言い返されそうなので辞めておく。


幾つかのフルーツが入ったその飲み物は、とても美味しそうだ。ジンジャエールにフルーツを入れた様な感じだろうか。

「可愛いし、美味しそう。」

「うん、あれが好きならこれも好きかと思ってね。まぁゆっくり飲んで。」

気焔がグラスを取って、私に手渡した。

そして気焔の向かい側にイストリアが座り、私のベットを挟んで向かい合った二人。

ん?
この状況で続き?

始まっちゃう、感じ??

しかし二人は普通に近況報告をしていて、どうやら既にイストリアが地上に出る方向で話が進んでいる様だ。
私が寝ている間に連絡したのだろうか?


ちみちみと少し甘いそれを飲みながら、二人の会話を聞いていた。

二人の話が私の把握していない話になってきて、自然と思考はその場を離れ、自分の中を探し始める。

そう、私の中の、あの子だ。
ちゃんと、いるのだろうか。


少し、考えてみたけど二人の話し声が目の前過ぎて、全く自分の深い所に入る事が出来ない。

でも、多分。
元々、彼女は私の中にいた筈なんだ。
今までと、変わりはない筈。
ただ、私の「意識」が変わっただけで。

きちんと「見ようとして、見る」事で、違った事が分かる筈だ。


「で、一つ提案なんだが。ヨル?」

「えっ?はい?」

再び間抜けな返事をした所で、我に返る。

二人の話は終わっていた様で、二人とも、私を見ていた。

うん?

何の、話??

金色の瞳を確認しても、読めない。
多分、気焔も知らない話なのだろう。


そうしてイストリアに視線を戻すと、いい顔でこう、言われてしまった。

「まぁ、今、貴石を何とかするのは難しいだろうけど。」

頷く、私。止まったままの気焔。
あんまり見ないようにしとこう。うん。

「エルバには、会っておいた方がいいだろうな。貴石の責任者、というかみんなの母みたいなものだな。」

「エルバ、さん?どうしてですか?」

そりゃ、会えるなら会いたいけど。

多分、イストリアが考える理由は何かありそうだ。

「そうさね。今後の根回しという事も、勿論あるが必要な事だと思うよ。君がさっき何処に行っていて、何を掴んできたのかは分からないが。多分、エルバと話すと判るんじゃないかな?と、私は思う。」

「成る程…………。」

確かに。

私の中にある筈の「なにか」は貴石の人と話す事で判るのかも知れない。
それにきっと、ディディエライトがいるならば。
何かしら、手掛かりは分かりそうな気がする。

でも………?

見てはいないが、目だけをチラリと動かす。

イストリアは私の様子を見て分かったのだろう、こう、言った。

「君は、どう、する?反対は、しないよね?しかし、私は少し心配もある。」

ん?
気焔じゃなくてイストリアさんが反対??!

やや混乱した私が一人ぐるぐるしていると何故だか金色が頷いている。

なんで?
何が?気焔は、分かるの??


「あの、力が島を巡った時。君は、考えていたんだっけ?」

そう、ゆっくりと私に問い掛けたイストリア。

何故だか気焔は私の側に来てベッドへ腰掛けた。


なに?どうしたの?
どういう事??

気焔に手を握られて、色んな意味でドキドキしながら考え始めた。
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