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7の扉 グロッシュラー
ギフト
しおりを挟む変わること。
変えること。
それを、受け入れること。
難しいのだろうか。
それは。
でも、「この世界の人」には。
難しいんだ。
「うーーーーーーーーーーーーーーん。」
「長い、な。」
クスクスと笑いながら、イストリアが言う。
私は未だ寝転がって美しい空を堪能中だ。
イストリアは隣で、ゆったりと座っている。
いつの間にか隣に来ていた彼女に、驚かないでも無かったが、何しろここはまじない空間だ。
それに、イストリアだし?
なんとも、自然な雰囲気で隣にいたものだから違和感は全く無い。
ついでにそのまま、相談を始めた私。
いつもの様に、自分の脳内を垂れ流し始めた。
「いや、前にイストリアさんも。言ってたじゃないですか、「この世界のアレを変えるのは難しい」って。」
「アレって?」
「「変わらないこと」?「変われない」こと?何しろ、ずーーーーっと、同じなんですもんね?」
「まあ、そうだね。」
「私は。嫌なものが、そのままだと嫌だし、変えられるものなら変えれば。いいと、思うんですけど。レナも、言ってたけど。その、「何か古いもの」に囚われて。解放される道を、選ばないなんて。うーーん、分かんない。分かんないんだよなぁ。」
私の話をニコニコしながら聞いているイストリア。
返事は無いのでそのまま再び垂れ流す、私。
「なんで。変わらないのか、変わりたくないのかは、分かんないんですけど。でも、無理矢理、変えたんじゃ意味がない事も、解るんですよ。結構、上の人の言う事は聞くんだろうからドーンとやってルールを変えるとか。できなくないとは、思うんですけどね?まぁちょっと物騒かもしれないけど。」
「でも。それも。やっぱり。最終的には、駄目だと、思うんですよね………。結局のところ、自発的じゃ、ないと。後々、駄目になるのは、分かる。あーーーー。」
ゴロゴロ転がり出した私を、まだニコニコして見ているイストリア。
しかし、そこで彼女は私に一つ、質問をした。
中々に難しい、質問をだ。
「君が持っていて、皆が持っていない、もの。」
「そして、変化を恐れる者と、恐れない者の違いは、なんだと思う?」
…………。
えー、なんだろう。
「それ、アレですよね?モノじゃ、ないですよね?」
「まあ、そうだろうね。」
ううーん?
私が、持っているもので、こうして走れる、理由?
……………ちゃうちゃう。
今、その話、じゃない。
モノじゃないって、言ってたし。
いや、アレもモノかと言えば、微妙だけど。
赤くなった頬をピタピタして、冷ます。
えーと?
でも、多分?
それは。
何度も考えた、あれ。
あれじゃ、ない?
私が、あの光を。
降らせた、理由の。アレ。
みんなに、持って欲しかった、やつ。
そう、多分、「希望」。
かな?
そう思うんだけど。
持っては、いけない、持っては、余計に。
辛くなる、もの。
この、世界では。
ズシン、と重いものがくる。
でも、心に落ちてきたそれを受け止めて、次の疑問に進む。
えーと。
変化を恐れる者と恐れない者の違い?
それも難しいな。
うーーん??
でもな。
これも。
多分。
「希望」に、関係あるよね?
だって、結局。
「希望」が、持てなかったら。
変わるのなんて、怖い。
変化は、いらない。
そのままの方が、まだ、マシなんだ。
うん?マシ、って?
アラルが言ってた、よね?
ああ、あれだ。
大人達が言う、「ラピスやロウワよりいい」ってやつね。
ケッ。
なんなの。それ。
ブワリと自分の色が、変化したのが分かる。
さっきまでは、凪いでいた、私の中が。
ザワザワと騒ぎ出す。
駄目駄目、大丈夫。
落ち着いて。
私、少しは大人に、なったから。
できる。
大丈夫。ギュッと。
そう、あれ、あの金色を。
思い出して?
ああ………いかん。やめやめ。
オッケーこの辺で。
戻らなきゃ………。うん。
そう。
今、考え事中。
考えるのが、仕事だから。
うん。
そうして再び、戻る「変化を恐れる、恐れない」の違い。
でも多分、「中にあるもの」の違いだよね?
自分の。
「希望」?
「成功体験」?
「光」かな?
それが無いと。
確かに、嫌かも。
そう、私だって。
いい、未来を描けなくて。
立ち往生、した筈だ。
ラピスで。
それに、ここでも貴石の事で。
「そっか………。」
顔を上げ、青緑の空の中に水色を探す。
私の左側に見つけたそれは、既に楽しそうな瞳で、私の答えを待っていた。
その薄茶の瞳を受け止め、頷く私。
そうして再び、編集は彼女任せでとりあえず、思い浮かんだ事をつらつらと述べ始めた。
「多分、答えは繋がってて。私は自分の意思を通せる世界から来たから。希望も持てて、「こうすればうまくいく」って、信じられて。でも、この世界の人達は。何をどうしても、自分の意思は通らなくて。それが、当たり前で。」
「多分、そもそも、自分の意思を「持つ」とか、「言う」とか、「それを通す」とか。そこが、そもそも無いのかなぁと。「そんなものだよね」とか「それが普通」って、みんなが思ってて、もし違うと思っても。否定されたり、結局意思は、通らなくて、潰されて。無かったことに、なってしまう。そうして逆に、「望むこと」それ自体が、おかしい、みたいに。なっちゃったのかなあって。」
「期待して、裏切られる事って、怖いから。それなら、期待しない方がいいし。なにも、考えない方が。楽に、生きられる………。って、そんなの。絶対、嫌だけど。」
自分で言ってて。
嫌に、なってくる。
でも。
それが、普通の世界で。
でもさ?
普通って。
なに?
ちょっと違う事を言ったり、したりすると。
不安な顔をする、親や、周り。
それで周囲の顔色を見て。
その、安心する色に、自分を合わせて。
「自分」は、そこには、無くて。
「私の色」は、要らなくて。
消して。
安心、を得る。
「自分を消して得られるもの」って、なに?
そんなの、ある?
相手の、幸せ?安心?
それって、どっちが正しいの?
「わたし」?
「まわり」?「みんな」?
相手の不幸な色は、見たく、ない。
でも。
それは、本当に不幸なの?
「みんなと違うこと」が?
「私がない」ことが??
「私は私」じゃ、駄目、なの?
どうして?
なんで?
何が?
どう、すればいい?
ある程度、顔には出ていたと思うけど。
途中から、黙りこくって考え込んでいた、私。
するとイストリアからの、返事が、きた。
返事というかそれは彼女からの、提案だったのだけれど。
私の、ぐるぐるに対するその提案は至極納得できる、それも私の得意分野の、内容だ。
青緑の空から降ってくる様に、ゴロリと転がる私の上に、それは響いた。
「君がね?持っていて、他のみんなが、持っていないならば。それは、あげれば、いいんだよ。得意だろう?」
「君が持っているのは、ギフトだ。美しい、箱に入っていて、中身を期待してしまう、もの。期待したくない、嫌だと、思っても。どうしたって、惹かれてしまう、美しく抗えないものだ。」
「それが、一人一人にかける、魔法なのか。降る、光なのか。手に入れたい、「なにか」なのか。その、中身はなんだ?そう期待せざるを得ない、もの。抗えない、魅力。できるか?まあ、できると、思うけれどね?それを、与えるのがいいんじゃないかなぁ。」
「ギフト…………。」
「そう。気が付いていると、思うが。そもそも、みんな経験した事が、無いんだ。「満たされる」こと、「願いが叶う」こと。こうして口にすると恐ろしい事だよね。叶った小さな、願いはあったかもしれない。しかし、それを圧倒的に上回る失望。やはりね、空っぽの所には何も生まれないんだよ。君が、撒く必要がある。色々頼んで、申し訳ないけれど。何を、どう、魅せるのか。それは、君の得意とする事だろうから任せるよ。」
「何しろ、前回の光で布石は打った。土壌はできていると、見ていいだろう。あの子にも。あげたのだろう、ギフトを。あの、光を。」
「?あの子…。あ!」
アラルエティーか。
確かに。
ギフトになったかどうか、聞いてみないと分からないけど。
あの後二人で、ミストラスの所に行って何を話したのだろうか。
いい、話だったろうか。
そうか。
帰ったら、また聞いてみよう。
きっと、ヒントになる筈だ。
それと。
「抗えない、魅力の美しい、もの…………。」
「そう。得意だろう?期待しているよ。私は向こうなのが残念だ。あの子に代わってもらおうかな?ハハッ。」
「確かに………でも絶対、譲らなそうですよね…。」
「まあお互い頑固だからな…。」
顔を見合わせ、笑って立ち上がる。
なんとなくだけど、ウイントフークの話が出て店に移動するのかと思ったのだ。
それに。
ローブを叩いて、気になっていた事を口にした、私。
これはこのチャンスを逃さない様にしなくては。
「じゃあ、店に行きましょう!ウイントフークさんまだ「お母さん」って、呼んでませんよね?」
「うん?どうしてそうなった?」
「いや、ここに来たらそのミッションを遂行しようと思ってたんですよ、ずっと。」
「ハハッ!本当に面白いな、君は。でも、言わないんじゃないか?」
「いや、私には報酬を貰う権利があります!」
そう、息巻く私に再び笑い出すイストリア。
その笑顔を見ながら、颯爽と走り出した私に「そっちじゃないよ」と声がかかる。
いや、このまじない空間、方向感覚が…。
うん、何も見ないで走り出したからだけど。
そう思って、イストリアの指した方向へくるりと踵を返す。
よし、早く行こう!
善は急げだ!
そうして私はウイントフークの在宅を願いながら、畑の中をスキップしていたのだった。
うん、感付かれなければ。
イケる、筈だ。
うん。
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