透明の「扉」を開けて

美黎

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7の扉 グロッシュラー

雨の祭祀 始まり

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この日 この時  この場所に


    今の  私が 立っていること


それにどんな意味があるのか



    今   「この 私」 が。






何故だか 少し風が吹く 「この場所」。

心地よい風が私の頬を撫でている。


私が祈ると決めた「あの場所」は、祈りをここから始める事で「この場所」になる。

「この場所」を、白くする気はない。


あの、黒。

どす黒い、「なにか」がある、その跡。


それもまたこの島の一部で。

ここを、形作っているもので。

嫌なもの、禍々しいものではない、という事を私は証明しなくてはならない。

何れ訪れる、光ある日々。


その時、「歴史」として人々が、直視できる様に。
きちんと「知る」ことが、できる様に。


知らなくていいこと、知らなければならないこと。

世の中には沢山のことがあって。

きちんと現実を直視して、同じ過ちを繰り返さない為に、歴史はあるし記録もある。
正しく、残さなくてはならない沢山のもの。

目を瞑らずに、過去を抱えて前に進むこと。


個人個人は好きな、ように。
しかし、この島全体としては。

在り方としてきちんと責任を持って、次へ繋げていけたらいいと。

私は、思う。





何故今風が吹くのか

今日この日だからか

それとも 「風で飛ばせ」と「思った」からか。



「どちらも」。

この、最高の舞台を整える為にきっとこの島が。

空が。

空気が協力してくれているということ。


それならば。


最高の、祈りを。


捧げようでは、ないか。





さあ  じかんだ。



目を閉じ 「想え」。


ありったけの、想いを込めて。

この、島の全てに。

世界に。

人々に。



今在る人も、無い人も、彷徨う人も、漂う人も。

肉体の有る無しは関係がない。

「想い」は同じ。



もう少し 風を練り上げ

「そら」へ

高く舞い上がるようにする

そう  風が必要だ

「みんな」を  助け あそこへいざなう風が



 集え

今 ここに。


扉を出すぞ?

話を聞こう

行きたいものは 行ける扉

残りたいもの  恐れるもの  迷うものは

話を聞こう


今 でなくともいい


  いずれ  時は 来るのだから。



覚悟ができたもの、待っていたものは飛び込むがいい




さて

痺れを切らすものが出ないうちに


祈るとしようか。










風の無いこの島に、風が吹いている。

私が祈ると決めた、あの場所に立ちその「黒」をしっかり目に映して。

ギリギリだけど、怖くは無い。
私は落ちないと、「知っている」からだ。

今から祈りを捧げる私が、「どうにか」なる事はあり得ない。

「そういう風に、できている」。


後方、島の端で見守るのは片側に、シン。

その反対側にウイントフークとブラッドフォードだ。

この狭いスペースを思えば、確かにこの最低限の人数で正解だ。
本部長が何をどこまで、予測していたのかは判らないが流石である。



目を、閉じていると他にも旧い神殿には人が居るのが分かる。

自分の周囲のことなら手に取る様にわかるこの感覚を、不思議に思いながらも、自然に使う。


ああ、あの人はシンに邪魔されているんだ。
ここへは、来れない。

なら、安心だ。



自分がふわりとそのまま何処かへ行きそうな感覚があり、目を開ける。

駄目だ。
何処かに行くわけにはいかない。

まだ。
今は。


今の仕事は、祈ること。

ただ。

真摯に。

「全て」を想って。


さあ、やるか。





目を瞑れ。

想え。

何が 見える?

神か?

人か?

それとも、光か。


「今の」「私」が思うのは。

「神」も「人」が創ったもので。

私達の想像の範疇を出るものでは無い。


それなら。

真に、偉大なるものは。

この世の 叡智は。

「なに」か。


そう 真実は「そら」にあり

「大地」にあり「大気」にあり

この 「自然」の「宇宙」「世界」の


     「輪」のなかに。




溶け込め。

大気に。



私は 全て。


全ては私で

この島は 私に取り囲まれるだろう。


薄く、細かく、粒になって霧になって、もっともっと細かくなって。

ブワリと拡がる感覚、こちらの端から徐々に拡げてゆく私の範囲。

自分の中にみんなが入って、なんとなく思っていることが分かるのが面白い。

大丈夫ですよ、暴走はしませんから。

……………多分。


片隅のウイントフークを思いながら、口の端が少し上がる。



さて。

全てを取り込むのには、時間がかかる。

やりながら、探そうか。


そう、私は自分の感覚を拡げる事で「みんな」を探していて。
きっとこの方法ならば、漏らさないことも、解っていて。

拡がり、確認すると、先ず祈って扉を出し順に進めた方がいい事が分かる。



そうして一つ、頷くと目を開け真っ直ぐに空を見た。


そう、なんにもない、白い雲。


でも、雲だけはいつも私達を見ていた、この空。

それを見ながら、口を開いたんだ。






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