419 / 2,079
8の扉 デヴァイ
私達の関係
しおりを挟むうっ、綺麗だな………。
どうしても、寝そべる千里と「あの狐」姿の可愛らしい千里が、噛み合わない。
どちらかと言えば猛禽類か、猛獣の様な雰囲気を醸し出すその人型は何故こうして私の見張りの様な事をしているのだろうか。
金色とは、知り合いらしい。
ベイルートは「目的は同じ」と、言っていた。
本部長の、お咎めも無し。
………それなら?
いや、それなのに?
「見張り」なの?
いやでも、「見極める」って、言ってたな………?
「なんか、怪しい。」
私はぐるぐるしながらも、千里の瞳をずっと、見ていた。
その、私のぐるぐるに合わせて変化する、色。
まるで私の疑問に返事をする様に変わるその色を、不思議な思いで見つめていた。
だって本当に。
「全部お見通し」の様に、その色が変わるからだ。
この人、「サトリ」とかなんじゃないの………?
家にある妖怪の本を思い出しながらそんな事を考えて、いた。
うっ、ニヤニヤしてるわ………。
その顔を見ていると、なんだか急に馬鹿馬鹿しくなってきた。
そう、私はこの人の事について考えるのを辞めた筈だ。
あの三人が、許しているならば。
きっと、考えるだけ無駄な筈なのだ。
「やーめた、辞めたっ!」
そう言って、パッとベッドから降りクローゼットから着替えを出す。
そうして洗面室へ向かいながら、一つだけ注意をしておいた。
「その、お前達の達って。気焔、だよね?お兄さんじゃ、ないよね??」
「そこかよ。………まあ、そうだろうな。」
そうだろうな、って何よ?
「分かった、それならいいの。」
そう言って、緑の扉へ滑り込んでハタと気が付く。
あ!
そっか、ベッドに入んないでって言わなきゃいけなかったんだ!
しかし、時既に遅し。
部屋へ戻ると既に紫の姿は見えない。
ただベッドの真ん中が、あの大きな身体の跡を示していて。
「………ベッドメイキングして行ってよ。」
そう愚痴りながら、朝の支度をする事にした。
もう!
何なのかな、あの狐は。
………でも。
ふと、思う。
色は違えど、それはそれで落ち着く、あの腕の中。
何か知っている様な、居心地の良いあの空間。
うーーーーん??
「で?洗うの?洗わないの?」
「ひゃっ!………ああ、ごめん。」
タオルを持ったまま、鏡の前でぐるぐるしていた私。
それを見て、どうやらヤキモキしていたらしい鏡に突っこまれてしまった。
そうしてとりあえず、朝の支度を始める事にしたのだ。
「どうかな?上手になったでしょう?」
無邪気な顔をしたイリスに訊かれながら、少し焦げた朝食を食べていた。
「うん、味は美味しいよ。」
「なら、良かった!」
スピリットに細かな言い回しは通用しないのだろう。
食べながらもあれこれイリスに教えているシリーを横目で見ながら、つい笑ってしまう。
まあ、楽しそうに毎日張り切ってやってるみたいだから、何よりでしょう…。
そうして私達が朝食を摂っていると、朝が食堂へ入ってきた。
「…結構そんな格好も似合うわね?」
「あまり目立つわけにはいかないからな。」
あれ?
聞き慣れた声に、振り向いた。
「えっ。」
「なんだ。」
「……………いや………うん。」
そこには、金色が立っていたのだけれど。
「なぁに、見惚れちゃった?」
「いや、うん、まあ。」
「揶揄い甲斐のない子ね。」
朝に茶々を入れられながらも、目が逸らせなかった。
入ってきた、金色が。
見た事のない、服を着ていたからだ。
え………何それ………私の服は?
まあ、仕方ないのか………?うん?
なに、青の家から支給されたって事?
ラガシュ?
ラガシュなの?
この仕業は………。
見た事のない、服とはいえデザイン的には以前ベオグラードが着ていた服に近い。
私の世界で言えば、詰襟だろうか。
紺地に青の装飾が付いたそのジャケットの様なもの、白のシャツに同色のパンツ。
初めて見た、そのきっちりとした姿に私の頭は混乱していた。
「え、うん。………ああ。」
まごまごしている私の様子を見ながら、朝が言う。
「依る、あなたお風呂、見てもらった方が。いいんじゃ、ない?」
「う?うん?そうね、うん。」
そうして私達は、澄ました顔の朝に見送られ食堂を出た。
いや、追い出されたに近いかも、しれないけど。
えーーーーーー、?。
青い廊下を歩きながら、まだ私の頭は混乱していた。
その、混乱の原因が背後を歩いている。
何故だか並んで歩かないのは、わざとなのだろうか。
逆に、落ち着かないのだけれど。
ぐるぐるしているうちに、部屋に着いた。
まあ、そう長い距離でもない。
当然の様に、扉を開けてくれた金色の横を目を合わせない様スルリと通り抜けた。
いや、見れないのだ。
そちらを。
とりあえずそのまま真っ直ぐ、ベッドに座った。
私の頭の中からは。
「お風呂を見てもらう」なんて事は、すっかり飛んでいたからだ。
何故だか近付いてこない、金色は下を見ている私の視界に足元だけが映っている。
見慣れない靴。
紺のパンツはピシリとした生地で、良いものだろうという事が分かる。
センタープレスが効いたパンツに、アラビアンナイトが噛み合わない。
いや、似合っている、似合い過ぎているのだけれど。
私の頭の中が、混乱中なのだ。
痺れを切らしたのか、声が降ってくる。
「どうした?あいつが何か…?」
あいつというのは、千里の事だろうか。
まあ、何も無いわけじゃないけど……。
いつもなら、なんとなくでも私の言いたい事が解る金色は見当外れの事を心配している。
つい、この間迄はずっと一緒にいたから。
勝手に、私の言いたい事など察してくれるものだと、思っていた。
でも………。
えっ。
言うの?
何を?
「千里の事じゃなくて………」?
「あなたの事です」、って??
なにが?え?
なんだろう?うん??
自分でも自分が「何に」ぐるぐるしているのか、金色の何に、戸惑っているのか分からなくなってきた。
ふと、顔を上げた。
見れば。
解るかと、思ったのだ。
あ
まず………
その、金色の瞳と目が合った瞬間、私の中の何かがブワリと燃え上がり、顔が一瞬で熱くなる。
身体全体もザワリとして。
爪先から、頭まで「あの焔」が駆け巡った様に自分が一瞬で塗り替えられたのが分かる。
居た堪れなくたって逃げ出したいけれど、私は既に「あの瞳」に捕まっていて。
そう、逃げ出せない事は解って、いた。
彼が私に近づいて来て、言い様のない感覚に襲われる。
久しぶりの金色、会っていない時間はそう長いものではないけれど。
多分、私達にとっては、長かったのだ。
再び自分の中の金色の分量が、減っている事に気付いてドキリとする。
近づいて来た、彼が。
何をするのか、解るからだ。
恥ずかしくて拒みたい気持ちと、早く欲しい気持ち、そんな事を考えてしまう自分がまた、恥ずかしくて。
しかし、私の前で一度立ち止まると、そっと手を取った金色。
その、握られた手から何か、判るのだろうか。
「感じたままで、良いのだ。」
そう、言われてしまったら。
もう、恥ずかしいとか。
そんなのは、押しやって。
スルリと、私の気持ちを口に出した。
多分、想えば、伝わるのだろうけど。
口に出して、言いたかったのだ。
「いっぱい、頂戴?金色が、溢れるくらい…。」
顔から、火が出そうだったけど。
ああ、これ私も炎出せるかもだわ………。
そんな事を思いながら、深く、安心できるその腕の中に沈み込んで、行った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます
天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。
王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。
影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。
私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる