透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

不思議な部屋

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もしかしたら、千里かとも、思った。

また、悪戯しているんじゃないかと。

でも、どうやらそれは外れだった様だ。


「うっ、わぁ~~。」

いきなりアンティーク調になった、空間。

古い木の温もり、暖かな色合いと落ち着く雰囲気。
凡そ飾り気の無いその部屋は、さながら魔女の、部屋だった。


「え?てか、なんで?何が?意味分かんない。でも、素敵!」

パッと見て全体が見渡せるこの部屋はそう広くなく、すぐに誰も居ない事が分かった私は全開で喋り始めていた。

「え?なに?誰が…私をここへ…いや、それは今はいいわ。とりあえずどこから見よう?あの棚!何があるんだろう?いやいや待って、とりあえず手前から行くか。」

ドライが吊られている一角、壁一面が小さな引き出しで一杯の側、テーブルの上には所狭しと何かの道具や瓶、古い本などが置かれている。

イストリアの店とも似ているけれど、それよりも個人の部屋感が強く、重厚な感じがするのはデヴァイという場所の所為だろうか。
調度品が古くていいものばかりだという事が、分かるのだ。

そう、よく見ると魔女の部屋にしては豪華な彫刻が施されているテーブル、壁の引き出しの取手は見事な彫金で一つ一つが違ったデザインだ。

「でもアレなら何処に何を入れたか分かり易いな?」

そう言いながらも全体をぐるりと見渡して、確認していく。
この部屋の、空気、性質、何の為にここにあるのかを確かめる、為に。

どうして「今」、「私の前に現れたのか」を、確かめる、為にだ。


暫く見ていたけれど、何ら怪しい雰囲気は感じられなく、ただ心地の良いこの空間。
凡そあの青の屋敷に、色的には合わない場所である事だけが、分かったけれど。

「ちぐはぐな様な、合っている様な………。」

多分、部屋だけ見れば「古い」だけで、ここにあってもそうおかしくもない豪華さである。

ただ、その全体の古さが。

その、ハーブやら秤やら、なにやら不思議な道具との相性を高めていてやはり魔女の部屋の様に見えるのだ。

「うーん、でもとりあえず。素敵だから?いっか。」

どう見てもこの部屋を警戒する理由が見当たらなくて、溜息を吐く。

すると、ヒラリと私から蝶が舞い出てまたこの空間が危険なものでは無いと知れる。

「て、いう事は…………。」

まさかのもしかして、ここは。

私の為に、「在る」って、事じゃない??


現れたタイミング、もう誰にも使われていない事が分かる雰囲気、しかし埃も被っていないこの空間は「さあ、使って下さい」と言っている様にも見え始めた。

都合のいい、解釈かもしれないけれど。

でも、この空間はきっとまじないかスピリットの一種で「私に見せたくない」ならば、きっと現れていないだろう事は分かるのだ。

それならば。

「ふふん、使わぬ手は、無いだろうな。うん。」

「何、言ってんのよ。探したわよ。」

「ひゃっ!!」

飛び上がった私を、冷めた目で見ているのは勿論朝だ。

「え?朝?何処にいたの?てか、ここに来れた?」

「何意味分かんない事言ってるの。なーんか、怪しい道、と思って待ってたら全然来ないから。ちょっと戻ったら別の道になってて。私だから良かったけど、これ普通の人なら来られないわよ?」

「え?そうなの?てか、なに、どうなってたの??」

朝の説明によると、この廊下は途中から「ズレて」いるらしくて。

その先に在るのが、この部屋だと言うのだ。

「まあ、ウイントフークに何とかしてもらったら?ここはまぁ、さながらあんたの仕事部屋って所かしら?誰も来れないと困るものね?まぁ別でまた部屋を創ればいいかもだけど………。」

「え、ここがいい!」

「………まあそう言うと思ったけどね。それにしても、いい空間じゃない。癒されるわぁ、イストリアのとこと似てるものね?」

「そうそう!朝も思った?いいよね、この落ち着く感じ…私もレナの真似して癒しの店でもやろうかな………。」

「………。」

丁度そこにあった皮張りの椅子に沈み込んで、深く息を吐きこの部屋に溶け込んでいく。


古い、匂いとハーブの香り。

褪せていない香りを不思議に思いつつも、「この空間だから」という理由が浮かんで一人納得した。

深いバーガンディの皮の色も、この部屋によく馴染んで目に心地良い。
よく、部屋を見ていくと家具や調度品に使われている色が「赤」「青」「緑」「黄」と多色なのに、そのどれもが深く馴染みのいい色で部屋に溶け込んでいて。

それも、この部屋が青の屋敷の中で異質に映った理由なのだと、思った。

なにしろ、私的には色があると嬉しいけれど。


「さ、とりあえず戻りましょう。この空間だと、時間の流れが分からないわ。」

朝の声に現実に引き戻され、目を開けた。
既に、半分寝ていた様だ。

「いかん。」

そうして心地の良い椅子に別れを告げると、部屋を出る。

内側から見た扉は、やはり古い木特有の飴色とこの部屋に合う彫刻が施されていて。

「うん。」

やっぱり、私の部屋にしようっと。

ウイントフークの顔を思い浮かべつつ、「何て説得しようか」と考え始めたのであった。



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