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8の扉 デヴァイ
それぞれの家の商売
しおりを挟む「なんか、ショック…………。」
いきなり門前払いを食らった私は。
金色に手を、引かれながらもふらりふらりと歩いていた。
ここ、デヴァイでは各家を繋ぐ廊下があり、その先にそれぞれの家の町、というか店があるらしい。
千里の説明じゃ、半分くらいしか分からなかったけど。
「実際見ると、よく分かるわぁ…。」
青の家に入った時は、そのまま真っ直ぐに奥の部屋に連れて行かれた。
だから、あまり見れなかったのだけど。
その奥の屋敷に至る迄は、表の店の間を通り抜け奥に入る感じだ。
その、屋敷の手前にある店とは。
商店街の様に、幾つかの店が並び何かを売っているのが見える。
「お前が好きそうなものが多い。気を付けろよ。」
その、金色の言葉に「なにが?」と思ったけれど店先を見て納得した。
どうやら青の家は文具系を扱っているらしく、ノートやペン、インク、本等等。
確かに私の好きそうな物ばかりが、並んでいたからだ。
「えー、やだ!可愛い!ていうか、結局なに、これどういう仕組み?」
街の様になっているとは、聞いていたけれど。
私の感覚で言えば、屋台や小さな商店街が近いと思う。
廊下から、青の区画への扉を開けた時に感じた、全く違う空間に来た様な、空気。
空は無いが、開けた場所に出た感覚がある不思議な場所だ。
しかしその空間に大して違和感を感じなかったのは、ここが「青」だからなのかもしれないと思った。
フェアバンクスの空間も、青いからだ。
もしかしたら、黄の家は黄色なのかな………。
青というよりは落ち着いた紺色に近い深い青は、空間の色としては心地よく同じ色合いで並んだ店達も知的な雰囲気である。
「ねえ、他の家は何を扱ってるか知ってる?」
「ああ、聞いた気がするが………。」
どうやらあまり興味がないのだろう、考え始めた金色を他所に私の視線は忙しかった。
何やら楽しそうなものが、沢山あるからだ。
「待て。」
しかし、そのうちの一つの店に入ろうとしていた所、首根っこを捕まえられてしまったのである。
「え?なんで?」
「まだお前に対する方針が決まっていない。そう顔を晒さない方がいい。」
「うっ。はぁい。………でも、決まったら連れて来てね?絶対だよ?」
「はいはい。」
大丈夫かな………。
でも、絶対他の家にも行くもんね!
何を扱っているのかは知らないにしても、きっと他の家の店も楽しいに違いない。
それは、ここを見れば分かる。
「なにしろ、一度戻るぞ?」
「うん。」
とりあえず、私はまだウロウロしない方がいいのだろう。
来る時は、廊下では誰にも会わなかったけど。
全くもって、誰もいないという訳では無いのだ。
しかし、来る時とは違い帰りは二人きりだ。
どうしたって目立つので、飛ぶ事にしたらしい気焔。
店の端まで連れて行かれた私は、久しぶりの感覚に安堵を覚えつつ、そのままフワリとフェアバンクスの空間に戻ったのだった。
「俺もあまり興味が無いからな…まあ、そのうち分かるだろう。」
「ウイントフークさんに訊いたのが間違いだった?でも他にいないよね………あ!ベイルートさんか!うん?まだ?まだなの??」
帰ってきたウイントフークを捕まえて、各家が何の商売をしているのか聞いたのだがイマイチ要領を得ない。
しかし「お茶はある」という何故かその部分だけ自信を持って言うウイントフークは、糞ブレンドと何か関係があるのだろうか。
「姿をどうするか決まれば、他の家にも行くからな。その時、見ればいいじゃないか。きっと訊かなくとも紹介してくると思うぞ?銀は上客でもあるからな。」
「そうなんだ………。」
それなら、仕方ないか…。
それに、結局教えて貰ったとしても。
まだ、ここから出られないのなら意味が無い。
「ま、お茶がある事は分かってるんですけどね??ミストラスさんとかパミールも、ああそれにアラルもみんな持ってたしな………。」
あの銘柄。
お茶は何処かの家が独占しているのか、各家で扱っているのか。
その家其々で違うのならば、是非全種類飲み比べてみたいものだ。
「とりあえず、お前は。隠す気は、無いんだろう?」
「まあ、そうですね。どうしても危ないって言うなら、アレですけど。それに。」
「なんだ。」
「多分、見せびらかして引っ掛かるものをとっ捕まえた方が、早く解決しそうだし?」
「…………まあいい。」
呆れた顔のウイントフークだが、きっと本部長だって私が囮になった方がいいとは思っているのだろう。
きっと、金色の手前、口には出さないだろうけど。
表立って反対してこないので、そう思っているのがよく分かる。
それに。
私は自分に、どのくらいの時間が残されているのか、分からないのだ。
「あの、夢………。」
なんとなく、時間が無い気はする。
焦っても、仕方のない事だとは思うけれど自分に打てる手があるならば。
使うに、越した事は無いのだ。
「とりあえず、今日はもう休め。」
「はぁい。」
何もしていないけれど、疲れた気はする。
気が張っていたのだろう、夕食後にシリーがお茶を持って来てくれた時、甘く感じたのでそれに気が付いた。
「糞ブレンドは、人気あるのかな………。」
「馬鹿言ってないで、寝なさい。オヤスミ。」
「………おやすみ。」
お茶のワゴンがいつの間にか無くなっていて、ウトウトしている間にシリーが片付けてくれた様だ。
いつの間にか足元へ潜り込んでいた朝に返事をして、布団を引っ張る。
そうしてあの、フワリと包まれた金色の感覚を思い出すと。
そのままストンと、眠りに落ちたのだ。
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