透明の「扉」を開けて

美黎

文字の大きさ
426 / 2,079
8の扉 デヴァイ

それぞれの家の商売

しおりを挟む

「なんか、ショック…………。」

いきなり門前払いを食らった私は。

金色に手を、引かれながらもふらりふらりと歩いていた。


ここ、デヴァイでは各家を繋ぐ廊下があり、その先にそれぞれの家の町、というか店があるらしい。

千里の説明じゃ、半分くらいしか分からなかったけど。

「実際見ると、よく分かるわぁ…。」

青の家に入った時は、そのまま真っ直ぐに奥の部屋に連れて行かれた。
だから、あまり見れなかったのだけど。

その奥の屋敷に至る迄は、表の店の間を通り抜け奥に入る感じだ。
その、屋敷の手前にある店とは。

商店街の様に、幾つかの店が並び何かを売っているのが見える。

「お前が好きそうなものが多い。気を付けろよ。」

その、金色の言葉に「なにが?」と思ったけれど店先を見て納得した。

どうやら青の家は文具系を扱っているらしく、ノートやペン、インク、本等等。
確かに私の好きそうな物ばかりが、並んでいたからだ。


「えー、やだ!可愛い!ていうか、結局なに、これどういう仕組み?」

街の様になっているとは、聞いていたけれど。

私の感覚で言えば、屋台や小さな商店街が近いと思う。


廊下から、青の区画への扉を開けた時に感じた、全く違う空間に来た様な、空気。
空は無いが、開けた場所に出た感覚がある不思議な場所だ。

しかしその空間に大して違和感を感じなかったのは、ここが「青」だからなのかもしれないと思った。
フェアバンクスの空間も、青いからだ。

もしかしたら、黄の家は黄色なのかな………。

青というよりは落ち着いた紺色に近い深い青は、空間の色としては心地よく同じ色合いで並んだ店達も知的な雰囲気である。

「ねえ、他の家は何を扱ってるか知ってる?」

「ああ、聞いた気がするが………。」

どうやらあまり興味がないのだろう、考え始めた金色を他所に私の視線は忙しかった。
何やら楽しそうなものが、沢山あるからだ。

「待て。」

しかし、そのうちの一つの店に入ろうとしていた所、首根っこを捕まえられてしまったのである。

「え?なんで?」

「まだお前に対する方針が決まっていない。そう顔を晒さない方がいい。」

「うっ。はぁい。………でも、決まったら連れて来てね?絶対だよ?」

「はいはい。」

大丈夫かな………。
でも、絶対他の家にも行くもんね!

何を扱っているのかは知らないにしても、きっと他の家の店も楽しいに違いない。
それは、ここを見れば分かる。

「なにしろ、一度戻るぞ?」

「うん。」

とりあえず、私はまだウロウロしない方がいいのだろう。
来る時は、廊下では誰にも会わなかったけど。
全くもって、誰もいないという訳では無いのだ。

しかし、来る時とは違い帰りは二人きりだ。
どうしたって目立つので、飛ぶ事にしたらしい気焔。

店の端まで連れて行かれた私は、久しぶりの感覚に安堵を覚えつつ、そのままフワリとフェアバンクスの空間に戻ったのだった。




「俺もあまり興味が無いからな…まあ、そのうち分かるだろう。」

「ウイントフークさんに訊いたのが間違いだった?でも他にいないよね………あ!ベイルートさんか!うん?まだ?まだなの??」

帰ってきたウイントフークを捕まえて、各家が何の商売をしているのか聞いたのだがイマイチ要領を得ない。

しかし「お茶はある」という何故かその部分だけ自信を持って言うウイントフークは、糞ブレンドと何か関係があるのだろうか。

「姿をどうするか決まれば、他の家にも行くからな。その時、見ればいいじゃないか。きっと訊かなくとも紹介してくると思うぞ?銀は上客でもあるからな。」

「そうなんだ………。」

それなら、仕方ないか…。

それに、結局教えて貰ったとしても。
まだ、ここから出られないのなら意味が無い。

「ま、お茶がある事は分かってるんですけどね??ミストラスさんとかパミールも、ああそれにアラルもみんな持ってたしな………。」

あの銘柄。
お茶は何処かの家が独占しているのか、各家で扱っているのか。
その家其々で違うのならば、是非全種類飲み比べてみたいものだ。


「とりあえず、お前は。は、無いんだろう?」

「まあ、そうですね。どうしても危ないって言うなら、アレですけど。それに。」

「なんだ。」

「多分、見せびらかして引っ掛かるものをとっ捕まえた方が、早く解決しそうだし?」

「…………まあいい。」

呆れた顔のウイントフークだが、きっと本部長だって私が囮になった方がいいとは思っているのだろう。
きっと、金色の手前、口には出さないだろうけど。

表立って反対してこないので、そう思っているのがよく分かる。

それに。
私は自分に、どのくらいの時間が残されているのか、分からないのだ。


「あの、夢………。」

なんとなく、時間が無い気はする。

焦っても、仕方のない事だとは思うけれど自分に打てる手があるならば。
使うに、越した事は無いのだ。


「とりあえず、今日はもう休め。」

「はぁい。」

何もしていないけれど、疲れた気はする。

気が張っていたのだろう、夕食後にシリーがお茶を持って来てくれた時、甘く感じたのでそれに気が付いた。


「糞ブレンドは、人気あるのかな………。」

「馬鹿言ってないで、寝なさい。オヤスミ。」

「………おやすみ。」

お茶のワゴンがいつの間にか無くなっていて、ウトウトしている間にシリーが片付けてくれた様だ。

いつの間にか足元へ潜り込んでいた朝に返事をして、布団を引っ張る。

そうしてあの、フワリと包まれた金色の感覚を思い出すと。
そのままストンと、眠りに落ちたのだ。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

笑う令嬢は毒の杯を傾ける

無色
恋愛
 その笑顔は、甘い毒の味がした。  父親に虐げられ、義妹によって婚約者を奪われた令嬢は復讐のために毒を喰む。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...