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8の扉 デヴァイ
私の依る
しおりを挟む何故だか気焔が、あの子を抱き抱えて、帰って来たの。
まあ、いつもの事、と言えばそうなんだけど。
「なあに?どうしたの?」
「慣れぬ世界で、疲れていたのだろうよ。休ませてやってくれ。」
「まあ、それは言われなくとも。………でも、気焔も、大丈夫?無理、してない?」
私の問い掛けには答えずに、ベッドへ依るを寝かせ様子を見ている気焔。
いつも寝顔を見て、文句を言われているのを忘れたんだろうか。
まあ、久しぶりだから。
しょうがないのかもね?
でも、その動かない彼を見て思ったけど。
やっぱり。
お互い。
ずっと、一緒にいたから。
心配なのだろう。
それに。
今は、アイツも、いるしね?
「ねえ。」
「なんだ。」
「まだ、気付いてないの?」
「…………まあ、そうだろうな。」
「我が飼い主ながら、相当、鈍いわね。」
「…………。」
依るは、気が付いていないけど。
あれから大抵一緒に寝ている千里は、ほぼ狐の姿だけれど時折大人に変化している。
夜中にあの子の髪を撫でてたり。
ほっぺを、突いたりして悪戯をしているのをよく、見るのだ。
私は、まあ止めないけどね?
だって。
アレは。
気焔と、同種のもの。
多分、直接聞いてはいないけれど私の鼻が、そう言っているのだ。
多分。
アレも、仲間なのだろう。
でないと、千里と依るが共にいる事を気焔が許すとは思えないからだ。
あの、初めて人になった後千里を排除しない気焔を見て、私の予想は確定になった。
そう思えば、全ての辻褄が合うし。
スピリットとも、違う匂い、依るがあまり違和感を抱いていない事だって納得できる。
やはり馴染みが、いいのだろう。
そもそも、あれだけ一緒に寝て違和感が無い事で、気が付かないのがおかしいと思うんだけど。
ま、依るだからね………。
「なんだかんだ、あんた達との付き合いも長いからねぇ………。」
もう、季節は何週したか。
時間の流れは違うんだろうけど。
しかし流れてはいるのだから、きっとあの子ももう15にはなったろうし、もしかしたらこの世界で16になるのかもしれないしね?
「そしたらそろそろ。結婚、かしら。きっとエローラが煩いわ。」
「何を言っている。」
不満気な口調の石は、これからどうするつもりなんだろうか。
あの子達、忘れてない?
自分がブラッドフォードの婚約者になってるって、こと。
なんか、イチャイチャしてるけどそれ、外では絶対駄目なんだけど?
大丈夫なのかしら………?
でも、確実にこの旅も半分を過ぎ終わりに近づいては、いるのだ。
多分、ここが山場には違いない。
うん、そう思う事にしよう。
もう、私もトシだし?
どこまでついていけるか、分かんないけど?
ねえ?
寝てないでさ、そろそろ起きようよ………。
まだ夜じゃないんだけど。
しかし私達の姫は、まだまだ起きる気配は無い。
甘く、見えないバリアを張っているあの石。
わざとだわ。
まあ、仕方ないか………。
何より、あの子が元気になるのなら。
私も、それでいいしね。
さ、じゃあちょっとだけ二人にしてあげましょうか。
そうしてこっそり、部屋を出ようとした時。
ノックの音が、した。
「なんだ、寝てるのか。」
あらあら。
気の利かないウイントフークは、勿論二人にしてあげようなんて気は微塵も無い。
気焔を呼び付けて、そのまま二人は出て行ってしまった。
あーあ。
ま、いっか。いつ、起きるか分かんないしね?
そうしてチラリとベッドを確認して、薄いカーテンを下ろす。
あの、紐を引っ張るだけだから簡単なのよ?
そうして私もそっと部屋を出て、二人の後を追ったのだ。
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