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8の扉 デヴァイ
金色と極彩色
しおりを挟む「ねえ。話し合いを、したいんだけど。」
案の定、私は燃える羽に包まれて、いた。
ビッシリと自分を取り囲む金色の羽は、身動きは取れないが心地良いのが始末が悪い。
ずっと、このままでも、いいかと。
ふと、思ってしまうからだ。
だけど、今は。
あの、千里に一言言ってやらなきゃ気が済まないのだ。
だって、そもそも。
なんで、あの人が私達のことに口出すわけ??
なんなの?
もしかして石のリーダーなのかしら………。
なんか大人だし。
えー、だからって許可もらわないとダメとか「お父さんか!」って感じなんだけど??
そこんとこ、どうなの?
ねえ、気焔、さん………?
チロチロと目の前を舞う焔、勢いは衰え知らずである。
もしかして。
私と、千里を話し合わせたくない?のかな??
うーーーーーん??
私の知らない、何か、が。
二人の間に、あるのかもしれないけど。
でもさ。
でも、よ?
ねぇ ちょっと ねえ?
とりあえず、動ける様に、して………。
私の思いが透けている筈の焔たちは、その勢いを緩める気はないらしい。
でも。
私はこの金色に守られているだけじゃ、嫌だし。
千里と、気焔の関係も気になる。
それに。
あの子が、石だとすれば。
「結局、私のところに。戻るの、でしょう?」
それならやはり。
話し合って、お互いスッキリして。
「ここ」へ収まって欲しいと、思うのだ。
手首へ意識を移す。
すると初めて、この空間で石達が話し始めた。
「いつの間に?」
「どうでしょうね?しかし気焔がこうですから。有り得ない話では、ない。」
「確かにあれは、私達には及ばぬ程永く。在るから、ね。」
「ええ、力は持っている筈よ。」
「でも、どうしてだろう?僕達の仲間でしょう?」
「そうね。あそこまで行くと考えが読めないわ。」
「「確かに。」」
うん?
みんな、結局匙を投げてない??
でも、あの千里の言っていた「変化」のこと。
この子達が「有り得る」と言っている、その変化とは「人型」の事ではないだろうか。
なんとなく、だけど。
「私と出会って、変化したこと」
それは。
これまでの言動から考えて、その可能性が高い。
しかし。
それの、何がいけないのかが、分からないのだ。
でも、千里はそれが問題だと思ってるって事だよね………?
「なんでだろう………?」
目の前を異様に美しく舞う焔の羽は、伸びたり燃え上がったりと「これでもか」と私の注意を逸らそうとしている。
考えて欲しくないのか。
「人型」に、なることの、問題?
それを?
駄目なの?
なんで??
その、理由を。
気焔は、知っていると、いうこと………?
分からない。
でも。
隅々まで攫った自分の中に、一つだけ。
ヒントになりそうなものを見つけた。
あの。
姫様が言っていた言葉だ。
「お前は人ではないのだぞ」
これ、かなぁ………。
なんとなくあの時も、引っかかったこの言葉。
思い出してみても、何が、いけないのかは。
どうしてこの事実を、敢えて、あの人が口にしたのかは。
分からない、けど。
「ねえ。でも。どうしていいのかは、分からないけど。」
「ここにずっと、こうしている訳にはいかないし。」
「確かに。あなたの中に、包まれていれば私も心地良いし、安心ではある。でも。」
「そのままじゃ。」
駄目だ、よね?
だから。
出して?まず、この羽から………。
ふわりと、解けだした羽。
大きく巻き付いた一枚が剥がれ出すと、後はザアッと散っていく。
風に舞う様に美しく散る小さな焔を、じっと見ていた。
身体は動くだろう。
でも。
暫く。
彼の余韻を愉しんで、顔を上げた。
「ねえ。」
「何が、心配?」
「駄目なの?でも。」
「私は解ってる。知ってるの。この、物語が。ハッピーエンドだって。」
初めて、あの引き出しで金色の石を見つけて。
最初は、濃い黄色だった、私の石。
どんどん色が変化して、変化して見えて。
他の色さえ、含んだ私の、石。
この、扉を巡る、私の物語は。
結局最後、どうなるのか、分からない。
「でもさ、でも、よ?これは。私の、物語だから。」
「結末は、私が、決めるの。」
主役じゃなくていい、青の少女だって誰だって、いい。
ただ、みんなが、それぞれの「みんな」を見つけて。
それぞれが、「自分の色」で、輝けたなら。
そんな光が、星が。
沢山ある、世界ならば。
「それ、即ち。ハッピーエンドと言うもので。」
目の前を彩る焔は、紅く、深く、白金を伴い明るくも、あって。
複雑な色を含み燃え上がる、美しい羽。
きっと、この羽を集め翼にしたならば、空さえ飛べるだろうと、思う。
そう、思えば。
そう、なる。
そう、する。
そう、したいから、するんだ。
曖昧な終わりなんて、要らない。
悲劇も、含みのある最後も、格好いい終わりでさえ、なくていい。
ただ、そこに笑顔があれば。
私の、みんなの。
それぞれの光で輝いて、在りたいように、在れる、ならば。
「それが一番。いいよ。」
紅が落ち着き、大分金色が増えてきた。
煌めく羽が優しい色に変化して。
私を包む熱さも、大分柔らかくなってきた。
そう、がんじがらめの羽は解けてもふわふわの羽はやはり私を包んでいて。
優しく。
いつでも。
そこに、在るのだ。
「いつでも、か………。」
いつでも?
いつ、までも?
やっぱり。
このこと、かなぁ………。
時折思う、時間のこと。
イストリアと話した「ずっと一緒にいられるか」という、問題。
あまり、考えないようにしてきた私と、彼の。
「終わり」の、問題だ。
ねえ。
でも。
終わりって。
来ると、思う?
そりゃ、生きとし生けるもの、皆、死ぬけれど。
「私」に。
「終わり」は、あるの………?
分からない。
今は、まだ。
分からない、けれど。
でも、私は知っている。
「今は分からない」ということ。
それは、何れ解る、ということだ。
だって。
「私」が。
この「物語」を、創っているのだから。
「そう、でしょう?だから。」
一枚、パッと手のひらに閉じ込めた。
ギュッと握った拳からは、温かい温度が伝わってくる。
この羽は、実体ではなく彼の、チカラや思いで。
その時々で変化しながら、ずっと、そこに在り続けるのだろう。
例え、体が無くとも。
石が、無くなろうとも。
祈りが、想いになってチカラになって、そこに、在り続けるならば。
それはあの、旧い神殿の空間、時が止まった何かを留める存在であったり、その場所であったり、するのだろう。
祈りが想いになって、空へ、昇るならば。
それは白い森へ還る手段であったり、誰かの元に届く、何かになるのかも、しれない。
そう、誰かの祈りが、飛ばした、想いが。
光となって、みんなに降り注げば。
それは、循環してまた誰かの、チカラになる。
真摯な想いは。
チカラに、なる。
そう、「私は」信じている。
だから。
「ね?わかる、よね?」
私の、言いたい、こと。
どう、すればいいのかは分からないけど。
まだ。
でも。
二人で、進めば。
「大丈夫、でしょ?」
「まぁな。」
渦巻く風に集められた羽が焔に練り上げられ、徐々に露わになる金色の彼。
羽が燃え変化して人型になる様は、言いようのない程、美しくて。
ただ、見惚れてしまう。
こんなに、美しいならば。
もう…………。
「よし!行こう!出して!」
「こら。我輩の用件はまだ済んでいない。」
「え?」
そうして姿を表した金色に捕らえられた私は。
そう、充分な、その色を注ぎ込まれたのである。
う、うん。
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