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8の扉 デヴァイ
私の、石
しおりを挟む「ねえ、ちょっと、あれ。やってみてよ?」
「うん?何の事だ?」
「あの、キラキラだよ。パァッて、飛んだじゃない。」
「ああ、それな。」
ウエッジウッドブルーの部屋、極彩色の星屑がブワリと拡がり艶やかに、舞う。
霧の様な、空気が膨らむ様な、勢いはあるがふわりとした不思議な、様子。
一旦大きく拡がったそれは、ゆっくりとその場を漂いながらキラキラと光を受け反射していた。
その、様が。
あの極彩色のフサフサと同じに見えて、私の中にストンと落ちた。
そう、これは。
私の腕に、嵌る石だと、いうことが。
大きな彼の身体が星屑に包まれ見えなくなって、段々とその光の粒が小さくなってくる。
暫く、その美しい様をじっと、見ていた。
消えてしまうのが勿体無いと、思うのは花火に似ているかもしれない。
少しの切なさを感じた瞬間、パッと星が消えあの小さな、狐が。
深い紫の眼で、私をじっと見ていた。
食堂から青の廊下を歩いていた私は、自分の部屋の扉を開け鮮やかな髪色を見つけると、何故だかあの、キラキラが。
無性に、見たくなった。
あの、フワリと飛ぶ感覚、金色に似てはいるが異なる腕の強さと大きさ、安心感と違和感。
確かめたかったのかも、しれない。
朝とは「私の石だろう」と、話したけれど。
この人、本人からは。
結局、何も聞いていないからだ。
「危険なもの」ではない事だけは、解るのだけど。
でもさ、やっぱり仲間ならもうちょっと、何か、うん………。
仲良くなりたい?のかな?
でも別に仲悪くも無いし…ちょっと揶揄いがちだけど、基本的には私の事を解って、守ってくれてるのも、分かる。
うん………?
もしかして。
あれ、かな………。
結局、あのまま部屋から消えていた千里に、「何を確かめたかったのか」は訊けていない。
私にとって。
とても、気になる内容だ。
ここまで考えて、そうなのだと、気が付いた。
そっか………私の石達は、私を応援してくれてるって。
解ってるけど、この人には反対?されてそうで、嫌なんだ…。
私の石は、もう私の一部みたいなものだ。
ずっと一緒に旅してきたし、ずっとこの、腕に。
ピッタリと、くっついている、もの。
答えてくれるだろうか。
その、理由を。
まあ、ダメ元で。
訊いて、みようか………。
フワリと背中の毛が波打って、金色の毛が光を含む。
私の視線を誘う様に、ふわふわの尻尾まで振り始めたこの狐は、何を考えているのだろうか。
しかし、深淵を覗き込む様な色に変化した、深い紫は。
私の、ずっと、ずっと奥迄を、覗こうとしている様に見えて。
思わず、身構えてしまう。
いや。
でも、駄目だ。
多分、この人が全てを見ようと思えば。
何処までも見えるのだろうし、私が「見られたくない」と、思っていることも。
きっと、見えてしまうのだろう。
やましいことなど何も無い。
隠したいことも。
見られると、ちょっと恥ずかしい部分は、あるけど。
それだって、彼との、証明になるのなら。
顔が真っ赤になるくらい、耐えて見せますとも。
ええ。
吸い込まれそうな、その眼に思わず目を瞑りそうになる。
でも。
負けない、もん。
勝負か分かんないけど。
でも。
こういう時は、いつだって。
目は、逸らさないものだと。
決まって、いるからだ。
それに。
私だって、千里の中を。
覗けるんじゃ、ない…………?
ふと、思い付いてその紫の眼を捉えた。
不思議な眼、しかし先程迄の恐ろしさは無くただ美しい宝石の様な紫に変化したそれを、じっと見つめる。
奥に、何かある。
あの、紫の中には。
複雑な色、虹彩なのかあの多色の毛と同じ様に小さく光る、キラキラの、なにか。
それを確かめたくて、捕らえたくて、私の中に、取り込みたくて。
取り込んで、みれば。
「わかる」だろうと、知って、いるから。
ブルリと極彩色の毛並みが震えた。
「おい、待て。分かった、分かったから。」
うん?
パッと眼を逸らした極彩色は、フワリとベッドに乗り私に「こちらへ来い」と、眼で言った。
部屋へ入って早々に、「キラキラ」を所望していた私はまだ入り口の側だ。
そのままゆっくりと、ベッドへ向かい端に腰掛けた。
極彩色はその毛並みをアピールする様に、フワリと揺らし私の側へ、来ると。
抗えないフワフワを持ってして、私の膝の上に滑り込んだのだ。
ううっ、まだ解決してない気がするけど…。
このフワフワには、抗えないっ………!
違和感は、感じたけれど。
信頼してない、訳じゃないし、毎日足元で寝ているのは、事実なのだ。
可愛いものは、可愛い。
うん、それはしょうがない………。
でもこの人絶対、解ってやってるよね………。
それだけは少し、悔しいけど。
そこまで考えて、自分が自然と毛並みを堪能している事に気が付いた。
恐ろしい、事に。
手が、自然にフワフワの背中を、撫でていたのだ。
うーん、フワフワ、恐るべし。
ボーッと、その温かさとフワフワを堪能していた。
千里は、何も喋らないし。
私も。
特に訊きたい事は、思い浮かばなかった。
何故だか。
きっと、あの中を覗いたからか。
なんとなく、だけど彼の思っている事がじんわりと沁み込んできたからだ。
多分、この子は。
ただ、私達のことを心配しているのだと、思う。
色んなものが、事が、見えるから。
きっと朝の言う「千里眼」というのも、当たっているのだろう。
そんな気は、する。
なにしろ私は、少しだけあの紫に触れて満足したのだ。
やはり、これも。
「ここ」に、嵌る筈の石だと。
解った、からだ。
「うん。」
そうしてぐりぐりと毛を撫で回すと、頭を切り替え面倒な案件を考える事に、したのだ。
そう、いよいよ迫る「披露目」とやらの、件を。
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