473 / 2,079
8の扉 デヴァイ
私のぐるぐる
しおりを挟む「ねえ、アレ。どうしたの?なんか気持ち悪いんだけど。」
「知らん。まあ、放っておけばまたすぐ何か勝手にやり出すんじゃないか?」
なんだか向こうから、失礼な声が聞こえなくも、ない。
次の日の朝の食堂、美味しい匂いがする温かい部屋でイリスの得意顔を見ながら食事を済ませた。
食後のお茶を飲んでいたところで、入ってきたウイントフークは朝に連れられて来たに違いない。
昨日、帰って来てから。
明らかに、私の様子がおかしいからだ。
しかし、おかしいと言っても。
普段より、口数が少ない、だけなんだけどな………?
いつもの「飛ぶ」とは、違った感覚のフリジアのまじないは、やはりかなり体力が削られる様だ。
本来ならば小動物に誘われ、普通に歩いて訪問する様なのだが、私の場合は。
どう、なっているのか分からないけれど「虹」に乗って、やって来たのだと言っていた。
いつもの金色とそう変わらない雰囲気を不思議に思わなかった私は、おかしな子だと思われたに違いない。
まあ、今更だけど。
あの金色に包まれる時に「見た感じ」は似ているのだけど、こちらは私のチカラで飛ぶのだろう。
移動した後の体力の減少が、ハンパないのである。
フウフウ言いながら、ドサリとバーガンディーに倒れ込みそのまま再び、ぐるぐるしていた。
いや、ぐるぐるせざるを得なかった、に近い。
フリジアの言っている事は、解ったと思う。
でも。
あ、また「でも」が出ちゃった………。
兎に角、ウキウキ訪問になる筈だった魔女のお招きが齎したものは、更なるぐるぐるだった。
しかし、それが。
私が前に、進む為には必要だという事も、解って。
「うーーーーーーーん。」
そうしてこんがらがった私は、案の定朝が呼びに来るまでそこで寝ていたのである。
「そもそも、お腹が空いてないってのが、おかしいのよ。今迄一食抜くくらいはあったけど。昨日の昼は食べてない、夜もイマイチ、今朝だって。………まあ、全部は食べるんだけど勢いがね………。」
朝は、私の事をイノシシか何かだと思っているのだろうか。
勿論ウイントフークの返事も、適当なものだ。
この二人、本当に相性がいいと思う。
「そりゃいよいよアレかもな………。俺の作戦に影響が無いならいいんだが、あいつの暴走の範囲が拡がると面倒だな…。まあ、計画外だから、面白い部分も、あるが。」
私はびっくり箱じゃないんですよ、ウイントフークさん………。
しかし。
「俺の計画」とやらの、話を聞いた方がいいのだろうか。
一晩寝てスッキリするかと思っていた、私の心は。
そうでもなく、意外とまだぐるぐるしていた。
寝ると殆どの場合は、スッキリするのだが今回はやはり内容が内容だ。
「はいじゃあ、こっち」みたいに、スッパリと決められないのである。
「うーーん?でも「考えるな」って、言ってたしな…。結局。考え過ぎると、こっちに合わせちゃうって事だよね………?」
えっ。
見てる。
チラリとウイントフークの様子を伺うと、茶の瞳と目が、合った。
私のぐるぐるの内容を、察しているのかどうか。
「この後、部屋へ来い。」
そう言ったウイントフークは、食後のお茶を飲まずに自室へ戻って行った。
この後の話の内容もだけど、お茶はいいんですかウイントフークさーーん。
食後のお茶が欠かせない私としては、その方が気になるのである。
「それならこちらをどうぞ。」
そう、気の利くシリーに言われてトレーには冷たい飲み物と私のクッキーが乗せられている。
「運びましょう」というリトリを断って、一人トレーを手に青の廊下を歩いていた。
うちのスピリット達は、色々と手伝いたいらしいのだけど何せ私とウイントフークの事だ。
多分、人間の使用人なら「楽なお屋敷」とでも思いそうなものなのだけど、あの子達は物足りないらしい。
代わりにミニ庭園の水やりを頼んで、ウイントフークの部屋へ向かっていた。
うん?
これ、両手が塞がってるな?
扉の前で首を捻っていると、朝が開けてくれた。
猫用扉が完備されたお屋敷ではあるが、朝が開けられるタイプのノブが付いているのである。
いつもの様にカチリと開けてくれた扉を通り、テーブルにトレーを置いた。
「お邪魔します」とは言ったものの、ウイントフークはいつも通り奥の部屋にいるのだろう。
物音はすれど姿は見せない。
私は朝が奥へ行ったので知らせてくれたと思い、一人のんびりとクッキーを摘んでいた。
シリー、また腕を上げたね?
これはあの二人の所に遊びに行く時、持って行ったら喜ぶよねぇ。
ていうか、私癒しとかじゃなくてクッキーでも良いかもしんない。
イオス的な店なんてどうかな?
うーん、イケなくも、ない?
まあ、でも。
あっ、またでもって言っちゃった。
フリジアさんが言うのは、「好きなことを好きにやれ」って事だよね………?
うーーーーん?
どう、なんだろうな………。
私の。
真ん中、光、キラキラ、本当の。
こと、とは。
目を瞑り、ボーッとしていた。
昨日から考え過ぎて、逆にポッカリと空いた、私の頭の中。
そこへ、ぼんやりと浮かんできたものは。
ふわりとした、優しい金色。
視界は、それで溢れている。
いや、私の頭の、中なのか。
ただそれが。
やはり、私の真ん中に共にあることだけは、分かる。
やっぱり?
それ?
それなの?
でも。
ああ、また「でも」が………。
できるかな?多分?
どうだ、ろうか。
ただ一つ、確実に判ることは、ある。
こうなってみて、真剣に考えると。
あの人は、かなり私に譲歩してくれてるって事だ。
もし。
私が、逆の立場なら。
きっと、この世界すら…………
「おい、コラ!!」
ん?
パッチリと目を開ける。
何か大きな本で私の周りをパタパタしているウイントフーク、呆れた目で見ている朝。
そうして私の周りには、沢山の金の光の、渦が。
ぐるぐると周りを取り巻いて、いたのだ。
「ごめんなさい。」
「全く。」
「ちょっと待ってろ。」
朝に小言を言われ、しかしウイントフークは未だパタパタに夢中である。
その様子を見るに、きっとあの本に私のチカラを挟んでいるらしいのだが、一体何の本なのだろうか。
そっちの方が、気になってしまう。
かなり光が薄くなり、落ち着いてくるとやっとドサリと座ったウイントフーク。
テーブルに置かれた本に釘付けになっている私に、こう言った。
「それはお前は触るな?で?どうだったんだ?その所為で、変なのだろう?」
「変って………。」
「早くゲロっちゃいなさいよ。一人でぐるぐるしてたって、ろくな事無いんだから。」
「ゲロ…うん、まあ。そう、ね。」
何から、話そう?
婚約の、話?
「本当のことは知りたくない」話?
もし、変わらない人と私達が対立するなら。
フリジアが、「敵」になる、話?
「いやでも、「敵」では、ないんだよな…それじゃ、駄目なのは分かる。だから、対立しちゃ駄目なんだよ。二つに別れない様に、する?でも、それってやっぱり?一つに、するって事だよね??」
こんがらがってきた私のぐるぐるを聞きながら、質問を繰り出してくるウイントフーク。
私はいつの間にか、一人ぐるぐると喋りながら茶の瞳を確認していた。
この人ならば。
私の疑問に、答えをくれるかもしれない。
いい作戦を考えて欲しい。
そう、顔に出ていたのだろう。
要点だけをポツポツと訊いてくるウイントフークに、素直に答えていった。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる