透明の「扉」を開けて

美黎

文字の大きさ
478 / 2,079
8の扉 デヴァイ

今の本当の私 4

しおりを挟む

たまに、思う。

この人は。

この、石は。

 私のことを、全部、解っているんじゃないか。

そう、思うのだ。




結局、すっかり解った気になって緑の扉を開けてから。

実は、何も解っていなくて。

本当ならば謝ろうと思っていた事すら。

何故だか逆に、慰められた様な気分になってホワホワしていた私。


ちょっと、これは。
由々しき、事態ではないだろうか。

なんで?


「凡そ人の事など分からぬ」とか、言ってる石の方が大人なんですけど?



「うぅーーーん。」

ぐりぐり、ぐりぐりと金髪を撫でていた。

撫でて、いると。
何故だか側にいるのに、寂しくなってきてしまうのは何故だろうか。

あの頃は。
いつでも、すぐに撫ぜれるところに、あった金髪。

でも今は。

…………なんかたまに、極彩色あるし?

それじゃない。


それじゃ、ないんだよ…………。



「ふぅん?」

あ。やば。

確実に上を見ているであろう金の瞳を隠すべく、ギュッと胸に閉じ込めた。
いや、私が隠れたいだけだけど。


しかし、音沙汰のない金髪が心配になってそっと腕を解く。

窒息とか?
するの?石だけど??
でも、息はしてるよね………?


チラリと見た視線が合うのと、体勢が逆転するのと、チカラを注ぎ込まれるのはほぼ、同時で。

瞬時に勢いよく流れ込む金色に全身が震えるのが分かる。


ピリピリと痺れる様な感覚、それが指先までを支配して成す術もなくそのまま、融けて消えたくなるのだけど。

ギュッと、私を縛るその腕が「まだだ」と言って現実へ呼び戻される。

身体はもう金色に支配されていて、そろそろ、頭の中も金色一色に、染まりそうな、頃。


フッと、私を解放したこの人は少し悪い目をして私に訊ねた。

「して。「本当の私」とは。何であった?」


えっ。
今?

生憎今の私の中身は、殆ど金色、なのだが。

思いっきりジトっとした目を向けてやったが、いい顔で笑っている金色を見るとやはり怒れない。

悔しくなって、とりあえず腕の中から抜け出すと。

端に座り、改めて考えを纏める事にした。

纏まるのかは。
分からないけど。






んん?
でも、なんか途中だったよね?

えっと、「本当の私」なんだけど…………。

て、いうか。

「本当の私」、私の真ん中、私というこの「外側」の中にある、ものとは。

「な、に………?フリジアさん、難題…。」


とりあえず、あの時は。

確か「金色」と言われて「あ、あの事だ」と反射的に思ったのだ。

「本当」という、言葉。

その時私は、その反対が「嘘」だと思った。
だから。
パッと思い浮かんだ、最大の嘘。

本当ならば、吐きたくない嘘だ。


だから、「本当の私」は正直であることだと思ったんだよね………とりあえず、この世界に合わせて我慢している事をやろうと思ったんだ。

それに。
フリジアは「色がくすむ」とも、言っていた。

燻むのか、変わるのかは、分からないけど。
を、「望んでいない」と言ってくれたフリジア。

「どちらでもない」とは言っていたけれど、私を心配して助言してくれたのは、解る。
やはり、その辺りはイストリアの師匠だ。
きっと言わずにはいられないのだろう。

自ら中立を示したとしても。



でも、やっぱりそれしか思い付かないって事は、とりあえずそれでいいんだよね………?


少し不安になって、金色を確認する。

先程の場所には未だ自由に寝そべっている金色が、いて。

「いつでもいいぞ」という優し気な色を宿した瞳で、私を誘惑しているのが分かる。

いやいや、まだ。
まだ、もうちょっとはっきり…?

うん?でも、もう無いかな?


その時ふと、思い出したあの白い箱。

スタスタとお気に入り棚へ取りに行き、ベッドへ戻る。

キラリと箔押しが光るその箱に手をかけた時、気が付いてしまった。


「ん?あ、でもこれ読めないんだった………。」

ヒラリと落ちた、一枚のカード。

それと共に挟まっていた一枚の紙が落ちる。
割と小さなその紙には、カードのメッセージが書かれているがそれは読めない古語なのだ。


いつの間にやら起き上がっていた金色が、シーツの上のカードを手に取りじっと見ていた。

そうして私にその一枚を、戻すと。


人間ひとは何故「普通の正解」を求めたがる?お前の。「本当」なのだからお前の感じた事で良かろうよ。」


描かれた、丸に放射状の点線があるカードに視線を留めたまま、そう言ったのだ。

「成る、程………。」

確かに。

だから?

フリジアは、特に何も言わずにこのカードを寄越した?
きっと、私がこの文字を読めない事はあの人なら解っていた筈だ。


じっと、手元を見る。

ホログラムが美しいそのカード達は、どれも想像力を掻き立てる、簡単だが何とでも取れる図柄だ。
きっと、見る時の気分で左右される様な、その類のカード。




やはり、「私の真ん中」が、それだからこそ見えるという事なのだろう。

「直感」を。
生かせということなんだ。



「そう、かぁ………。流石だな………師匠。」

確かに、このやり方ならば「その時の私の真ん中」は分かりやすいと思う。

「それなら、ちょっと引いてみようかな………。」

そう、すっかり忘れそうになっていたけれど。

そもそも私は、アリススプリングスに呼ばれているのだ。
その、前に。

景気付けに魔女にお呼ばれする予定だった。

だけど。

、なっちゃったんだよねぇ………。


チラリと金色を確認しつつも、カードをバサリとベッドに拡げる。
キラキラと金の箔押しが光って、どれも見える様にどんどん拡げていった。

もしも、この金色が彼の金色に反応したならば。

もっともっと、キラキラと輝く筈だと。

そう、思ったからだ。


全てを拡げ終わったところで、腕組みをして真剣に考え始めた。


さて?
どれだ?

どの子?
私を、呼んで?

どう、すればどう立ち回れば。

あの家では、無事に済む?

それに。
そう、ウイントフークも言っていた。
あの、家には。

きっと、シンがいると。


何故だか私も、そう思って知っていて、それは確信でもある。

できれば会いたいとも、思う。

それができなくとも。
元気でいるか、無事か、どうかは。

そのくらいは、知りたいのである。


まあ、あの人がどうこうなるとも思えないんだけどね…でも一応、心配じゃない?
ねえ?
私の中の、「あの人」の事もあるし………。


目の端が、一瞬キラリと光った。

あれだ!

パッと手が反応して、光ったカードをパシンと取る。
するとやはりそれは、光るのを止めて普通のカードに変化した。

「さて?」

少し、胸に当ててからそっと捲る、一枚のカード。

それには、何の紋様が。
描かれているのだろうか。


「えっ。」

なに、コレ。

キラキラ。
キラキラ、だよね??

そこにあったのは、所謂、あの絵文字にある「キラキラ」の様な尖った菱形の様な、紋様で。

どうしたって「光」や、「キラキラ」「金色」を、思い浮かべる柄なのだ。


そっとそれを再び胸に当て隠し、チラリと視線を投げる。

「見た、な?」

ニヤリと笑う、悪い金色。

そうして見た事もない、得意気な顔をしながらこう言った。

「心配ない。ウイントフークも、言っていたろう?「色」が、合うのか。確かめる、だけだろうと。」

「えっ?知ってるの??」

「まぁな。」


てか、「色が合うか」なんて。

何、するの?
何か、されるの??

不安しか、無いんですけど???


そうして私のぐるぐるは、再び。

謎の渦へ、巻き込まれていったのだ。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

笑う令嬢は毒の杯を傾ける

無色
恋愛
 その笑顔は、甘い毒の味がした。  父親に虐げられ、義妹によって婚約者を奪われた令嬢は復讐のために毒を喰む。

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます

天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。 王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。 影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。 私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...