透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

フォーレスト

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暗闇に浮かび上がる、白い靄。

徐々にふわりとしてきた靄は、フワフワな何かを形作りを私に見せている。

なんだ、ろうか。
スピリット?

これは、夢?

そもそも。
辺りは真っ暗だし自分が寝ているのか、どうかも。
分からない。


しかし近くには他に何もないことを私は、ただその靄が作る形を見ていた。

なんとなく、だけれど。

「知っている形」だと、思った。

しかし、記憶の中を探れども答えは出そうにない。


フワフワと形を取ったそれは、多分動物だと思うのだけど。

大型犬より大きく、牛より小さい。
そんな感じの、生き物。

その靄から感じられる気配から、危険なものではないのが分かる。
しかしきっと、この靄は「私が知っている」もので、思い出せないならば実体化しないに違いない。

きっと、そう。

謎の確信を持って一人頷くと、ふと、思い当たった。


じゃ、ないんじゃない?

そう、なんとなく、だけれどきっとこの靄の事を知っているのはデイディエライトではないか。
そう思ったのだ。

目を瞑り、心の中で呼び掛けてみる。
この頃は、あの銀の家で会ったのが最後だ。
夢も最近は落ち着いてきて、自分の中の激しい感情の浮き沈みも。
治っているような、気も、する。

分かんないけどね………。

なにしろ。

ねえ?
知ってる?
この、フワフワの、モヤモヤ。
多分、可愛いよね?

なんだか、迎えにきた様な、呼ばれて来た様な…きっと、ここに居るのを知ってて来た感じがするんだけど?

どう?


サラサラと、自分の中を攫っていくうちに。

段々と、森の光に包まれた様な気がして眠くなってきた。
そして、私の記憶は。
そこで、途切れたのだ。












白い三角屋根の天井、屋根裏の小さな、窓。

私の、小さな世界は、これで全部だ。

あの人が来る様になってから。

私の日課の中の殆どの時間は、ここに居る事に充てられている。
そうは言っても、殆どすることがない私にはこれ迄と変わりが無いと言えば、そうでもある。


時折、貰った本を開いて読んだりするけれど、あの人が持って来たことを思い出した途端、頭の中を過ぎる金色、続きが頭に入らなく、なる。

あまり進まない本をパタンと閉じ、再び流れる雲を追いかけていた。



そんなある日、私にも初めての友達ができた。

特別な日だけ、現れる雲フォーレストだ。

名前は自分で付けた。
あの人が持って来てくれた本、そこから取るのはやや気が引けたけれど「その時間」に、見つけた雲だから。

そう、その雲はあの人が来る日や祭祀の日など何故だか特別な日に現れる事が、多い。

何故その雲に名前を付けたのかと言うと、その雲は他と違って「特別な色」だったからだ。

そう、私と、あの人も。


 「特別な色」だ。


もしかしたら私は、何かこの雲が特別を運んできてくれるのかと、思っていたのかもしれない。

普段は白か、灰色の空、その濃淡で機嫌が分かるその空は滅多に色を見せない。
一度だけ、少し橙が過ったのを見た事があるけれど。

それも、一度だけ。

そんな中、「特別な日だけ」とは言ってもフォーレストが出る頻度は私にとっては高かった。

そう、私が嬉しい日にきちんと現れる、そのフォレストグリーンの雲を「フォーレスト」と名付けても仕方が無いと、思う。

私にとっては、本当に。

幸せを、運んで来てくれる雲だったからだ。



しかし、フォーレストは友達と言っても雲だ。

時折、会いに来てくれるだけで。

呼んでも、来てくれるわけではないし。

一緒に、遊べる訳でもない。

ただ、流れるその間だけは私の話を聞いてくれる、優しい子だ。


いつか。

ふわりと、この屋根に降り立って一緒に遊べる日が、来るといいね。

そう言ったのは、いつだったか。


私が。

消える前に。


お別れは、できなかったけれど。


それが心残りだったことを、今。

思い出した。









目の前にある、靄。

は形を作り始め、私の記憶にはっきりと残っている形に、なる。


「フォーレスト」

思わず呟いた、その小さな声は依るのものだ。

どうやらあの子は寝ているのだろう、それで私に。
フォーレストが?

会いに来て、くれたのだろうか。



この空間は依るの空間でもあって、程良くチカラが漲る場にスピリット達が集まっている。

この世界には、もういないらしいスピリット。

私の世界にも。
いないと、思っていたけれど?

フォーレストが、スピリットなのだろうか。


名を呼んだ事で、徐々に靄から実体を取り始めたフォーレストは、私の想像通りの双頭の羊だ。
何故、頭が二つあるのかは分からない。
強いて言うならば、雲の形が。
だったからである。



少し待つと、すっかりフワフワの毛を備えたフォーレストは、美しいフォレストグリーンの瞳を私に向けゆっくりと瞬きをした。

その、意味が分かった私はフォーレストの柔らかい背に乗ると。

目的地へ、向かったのだ。


この子は。

あの人を、連れてくる友達だからだ。


行ってもいいのか、大丈夫なのかは、分からない。

でも。

私に、それを拒むという選択肢は全く存在しなかったのだ。











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