透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

秘密

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「誰にも知られるな。」
「隠せ。」

「こっちだ!」
「だが、大丈夫なのか?」
「やるしか無い。引き受けるだろう、唯一の…。」

「早くしろ!」
「ゆっくりだ、そうっと………」


美しい青の髪が乱れ、チラリと見える顔に既に生気は無い。

あの、皆の憧れであったこの娘は、既にこの世には居なかった。



あの日、「見つけた」という報告を受け急いで向かった灰色の土地。

あの、旧い神殿に到着した時にはもう彼女の瞳は閉じられて、いた。


「どうしたんだ?!何をした?」

「いや、何も…………」
「何もって事は無いだろう。お前が」
「いや!俺じゃない!」
「いや、あいつが…」

「もういい!とりあえず………確かめたのか?」

その、生気の無い顔色、動かない体。

外傷は見当たらない。
見える、場所には。

しかし、明らかに「生きていない」気を纏ったその体に触れるのは何故だか躊躇われた。

「死体だから」ではない。

きっと「魂が抜けた」状態である事が予想されるその姿で、すらも。

俺達の憧れていたあの、「青の少女」に見えたからだ。

年の頃だって、もう違う。
身体つきも、大人だ。

しかし、髪で顔が見えぬその状態ですら尚、放つオーラの様な、もの。
言いようのない、神々しさ。


やはり。

この娘は…………。

「プラシオライト!」
「ああ。家へ連れて行く。」
「そっちを持て。」

私が躊躇しているうちに、彼女の顔を確かめ首を振ったプラシオライト。
やはり、息をしていないのだろう。

誰が、どうやって。

しかし、今はここを離れる方が先だ。
この神殿に誰かが来るとも思えないが、この人数でここにいるのはまずい。

館にも、誤魔化せるか。



灰色の塗りこめられた空、相変わらずの暗い雲。

前を歩く黄と赤のローブ、続く茶と私達、銀。

ほぼ、全ての家が関わるこの捜索に、青の家だけは参加していない。
何故なら青は、別口で調査しているからだ。

ある時「鉱山で見た」という報告がラピスから齎されてから。
青の家は真っ先に探し始めた筈だ。

あの、失態を取り戻す、為に。


しかしこのプラシオライトは別の目的で各家を動員し、彼女を探していた筈だ。
私に拒否権は無い。

ただ、この秘密を。
墓場まで、持って行くだけだ。





「ご苦労だった。」
「ここで。後はこちらでやる。」

プラシオライトの家、入り口の広い門、大きな木目の扉。

エントランスにも沢山の肖像画や額が並び、いつも何かに見られている様な気がする、この家は。

奥に、秘密の入り口がある。

ここデヴァイで亡くなった者、全てが埋葬される場所、グレースクアッドの入り口だ。
とは言っても、私は見た事がない。

きっと、この世界の、誰も。

見た事は無い、その冥界への入り口。


それを今、守るのは。


「お前ももう、いいぞ。ご苦労だった。」
「ああ、では。」

銀のローブで包まれた体、少しだけ垂れ下がる、青い髪。

あの、髪が。

「再び、見る時がとはな………。」

密かに。
憧れない者はいなかっただろう。

あの、透き通る様な青の瞳、銀に近い青の髪。
「妖精とはこんなものか」と誰もが思った、消えた彼女。

「どうして………。」


だが、私のその疑問は。

長い事、解消する事は無かったのだ。



その場にいたどの、者に聞いても。

「突然倒れた」
「触れただけ」
「掴んでもいない」
「何もしていない」

そんな言葉、ばかりだ。

ただ、突然倒れて。
死んだ、だと?
魂だけが抜けたのか?
そんな事が、あり得るのか?




だがその鍵を握る、一人の娘がここを、訪れるのは。
もっとずっと、ずっと。

後の事だったのだ。






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