透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

異色

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「はぁ…………なんだかんだ、楽しかったなぁ………。」

夜の森、金色の星屑に包まれながら入るお風呂は、少し照れ臭いが今日は仕方が無い。


結局あの後、私はやはり畑にも行けず神殿へ戻りそのまま帰る事になった。
あまり期待はしていなかったが、予想通り神殿とイストリアの店だけ見て帰ってきた事になる。

でも、当初の目的は達成できたので、良しとしよう。


その、イストリアの店を出てから、あったこと。
金色の謎行動を反芻しながら、キラキラを愛でていたのだが気が付いたことが、ある。


あの時。

店の横、キラキラ光る木立を入った途端いきなりチカラを注ぎ込まれた私は、やや混乱していた。


えっ。
なに?
なんで???

隙間から見える空のピンク、ふんわりと幻想的な木立の中で、これまたキラキラした金色を注ぎ込まれた、私。

金色と、ピンク。

電飾の様な、キラキラ。

これは夢か現実か。それとも………。


頭の中は幸せな色がいっぱいで嬉しいのだが、思考が全く、働かない。

うーーーーーん………?

そうして結局、神殿には抱えられて戻ったのである。



なんか………もう………。

頬をピタピタして、少し冷ます。
でも、湯船の中だからそう効果は無いけれど。

そこまで思い出して、ハッとしたのだ。
その時は全く心当たりが無かったのだが、今、考えてみると。

「イストリアさん………だよね?」

思い出してみると、もうそれしか無いのが、分かる。

あの時、揶揄われたブラッドフォードの件と私達のこと。
あまり言われたのかは覚えていないけど。

多分、知ってるんだろうな………。
隠すの、止めたって。
ウイントフークさん、チクったな………?


しかし、あの親子がそんな話をする程仲が良いのはいい事である。
そして、それ以外にもイストリアは沢山の事を教えてくれた。
勿論、本部長が言い忘れていること、含めてだ。


「太陽が出てミストラスも力が溜まり易いと言っていたよ。アラルも頑張っているし、これならラガシュの案も実現しそうな気がしてきたね。まだまだ課題はあるが、良い傾向では、ある。」

「コーネルピン?彼はヒプノシスの…ええと、ミストラスと同じ家だ。だから、鐘の件で貸しがあるからね。彼自身は君の事が分かれば描きたいと言うと思うが、家から引っ張り出すのが大変でね?きっと直接当主に話を付けたのだろう。だからきっと君の絵は描かない筈だと思う…が、あの手合いは分からない。ま、何か言われたらあの子に言いなさい。」


イストリアも、絵の件はそう言っていた。

「でも、なぁ………。神殿の絵も完成したら見たいし………その、出来によっては私の絵も見たい………。」

これは正直な本音である。

だって。


あの、カードを描く人だよ??
そんなの、絶対素敵に描いてくれるに決まってるよね??

「あっちを引っ込めて私のやつを飾れば解決しないかな………。」

それで、ディディエライトの絵はうちに飾れば、良くない?

えーーー………結構、名案………。



「ぐっ!あ、っぶなぁ~~。」

うつらうつらして、そのまま沈み込んでいた。

危うく溺れるとこだったわ………。
事件事件。

こんな所に、金色が現れてもシャレにならない。

うん、とりあえず。
出よう。


そうしてぐるぐるのお風呂タイムを終わりにして、着替える事にした。








それから、数日。

あれからコーネルピンからの連絡は無いらしい。しかし何度か彼方には渡っていると本部長から聞いて、楽しみが増えた。

「勿論、見せてくれるんですよね?完成したら。」

「一応そう話しては、ある。しかし覚えているかどうかは、分からんけどな。」

「えっ。どうして?」

「ああいう奴らは。そんなもんだろう。」

えっ。
でもアナタ、同類ですよね??

「阿呆、早く食べろ。」

しっかり顔に出ている私にそう言うと、先に朝食を終え出て行ったウイントフーク。

私は、と言うと。

今日はなんでかお客様が来るという事で、急いで食べている途中なのである。

いや、ちょっと寝坊したからなんだけどね………。


この頃、金色が満ちているからなのか、よく眠れるのだがそのお陰で寝坊する事も多いのだ。

しかし元々早起きな為、そこまでの寝坊ではないのだが朝の時間を楽しみたい私としては些か不本意でも、ある。


「大丈夫ですか?あまり急ぐとまた…。」

喉に詰まらせる事がある私を心配して、シリーがお茶を運んで来た。

「ありがとう、大丈夫。でも、珍しいね?今日は赤の人だって。」

「そうですね?初めて、ですよね。こちらでは。」

「………確かにそうかも。」


今日、訪ねて来るというお客様のこと。

それが、赤の家の人なのだ。

「うーーん。」

正直、赤の家にいいイメージが、無い私。

どうしてもハーゼルのイメージが抜けないのだ。
しかも今回訪ねて来る人は、全くの知らない、人である。

どこから何を聞いて、ここへ来るのか。

全く予想は付かないのだが、本部長としては楽しみらしい。

他人事だと思って………。


赤の家は、こちらではあまり関わりが無い為危険視しているのかと思ったが、本部長的にはそうでも無いらしかった。
ただ、油断はするなとは、言われている。

私としてはあの時ハーシェルのローブを奪われたのが赤だったかも、と思っているので赤は警戒対象なのだ。

もしかしたらウイントフークは、なんとかしてそれを取り返したのではないか。

あの時、ここへ来る前に渡されたハーシェルのローブ。
もしかしてその時、何か取り引きしたのか、弱味でも握っているんじゃないだろうか。

そう考えると、なんとなく腑に落ちるのである。

「うーーーん。」

油断できないのは向こうも同じだろう、きっと。


なにしろ本部長、様々だね。

「ヨル、そろそろ………。」

「あっ、ごめんごめん。」

すぐにぐるぐるの沼に沈み込む私にツッコミを入れるのにも、大分慣れてきた様だ。

うん、朝一人だと大変だもんね………。

そんな朝は、姿が見えないけれど。
もしかしたら、ウイントフークに頼まれてもう応接室に行ってるのかも知れない。

「ごちそうさま!美味しかった!」

そうだとすれば、私も早目に行こう。


そうして食堂を後にした私は、フォーレストと連れ立って応接室へと向かった。






大きなアーチ扉を開け、青のホールを通り過ぎる。

今日も爽やかな青が眩しい天井には、小鳥達の囀りもよく響き一層清々しい朝の雰囲気である。
小鳥達に手を振り、見えてきた応接室の扉にむくむくと湧く、想像。

今日のお客様も魔法の袋を買いに来た人だろうか。

どんな人なのかな…そう言えば赤の女の人には会った事ないな?

そう思いながら、大きな青い扉を開けた。



「ねえ、平和って面白いの?それって、飽きない?」

「…………。」

え?
なに?

どうしたの??

扉を開けた途端、飛び込んできた鋭い声。

応接室には既に客人が、いた。

しかし立ったまま、ソファーに寝そべっている朝を見下ろしながら、何か話している。

怒鳴っては、いない。

いないんだけど………。


ちょっと、厳しくない??
何が?
どうしたの?

そもそも、朝がお客様に何かするとは思えない。

すぐに客人の前に周り、朝を遮る様に立った。


向かいに立つ、その人は。

………?男の人、だよね?


肩までの、長い髪。
そのサラリとした濃灰色の艶のある髪をそのままに、紺に近い青の瞳。

そう高くない背と、細いライン、綺麗な顔立ちも相まってひょっとすると女性かと思う、その容姿。
その綺麗な姿からは想像もできない厳しい声を思い出し、とりあえず口を開いた。

「あの、何か失礼がありましたか?今日はどんなご用件で……?」

いきなり前に立った私に少し驚いた様子はあるが、やはり何故だか臨戦態勢の、彼。

その深い青はじっと、私を睨んだままだ。


て、言うか。

何?

誰??

多分また顔に出ていたのだろう、気を取り直すように頭を振った彼は何故か私に座る様、手で示しながら自己紹介を始めた。

「失礼、しました。赤の家、アイギルと申します。」

「………はい。あの。ヨルです。」

私が店主の筈なのだが、なんでか主導権が握られている気がするのは気の所為だろうか。

チラリと隣の朝に目配せすると、朝はサッサと出て行ってしまった。


えぇ~、何があったのか、言ってってよ!

かなり気まずいが、仕方が無い。

とりあえずの質問はしたつもりだったので、相手の出方を見ようと、そのままじっとその濃青の瞳を見つめていた。



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