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8の扉 デヴァイ
世界を救う 方法
しおりを挟むほんのり暖かい食堂、ハーブの香りとスープの、スパイス。
これはきっと、イストリアの畑のものだ。
大人しくテーブルで運ばれて来る朝食を眺めていると、私も一端のお嬢様になった様な気分である。
しかし、中身はいつも通り。
相変わらず「うんうん」と、独り言を言いつつも顎を動かしていると眠かった頭が働き始めたのか。
パッと、ある考えが浮かんで来た。
「えっ。朝、私。閃いちゃった、かも。」
「嫌だ、やめてよ。」
「ちょ、どういう事??聞いて??凄いんだよ。やっぱり………」
「なによ、ちょっと待ちなさい、ウイントフークを呼びましょう。」
「えぇ?」
失礼な。
モグモグとサラダを頬張りながら思い付いた名案は、何故だか「迷案」として処理されそうである。
しかし「呼ぶ」と言われたウイントフークは、隣のテーブルで何やら極彩色と会議中の様だ。
「ねえ。とりあえず聞いてよ。なんか向こう、話し中じゃん………。」
「仕方無いわね………。で?なによ。」
「失礼しちゃう………。」
とりあえずは最後のサラダを食べ切ろうと、再びフォークを口に運ぶ。
ここの所、ずっと魔女部屋で「家探し」をしていた私は、意外と手掛かりが見つからない事に少し落ち込んでいた。
あの「占いからの閃き」から、少し。
兎に角名案だと思って、必ず手掛かりは見つかるものだと思って、いた。
だってあの部屋は。
これまでずっと、私の望んだものが用意されている事が多かったからだ。
しかし今回、何故だが「占い」の「う」の字も見つからず、ションボリしていた私。
ハーブやらなにやら、「それっぽい」ものは、あっても。
あの小部屋で見つけた日記の様な、具体的な物は何も見つからなかったのだ。
そうしてそろそろ、ウイントフークに「フリジアの所へ行っていいか」許可を貰おうと考えていたら。
突然、閃いたのだ。
「ん?で?…………何よ、どうしたの?」
自分もごはんを食べ終わった朝が、そう尋ねる。
ペロリと平らげられた綺麗なお皿を見て、私も自分の皿を重ね、片付ける事にした。
「いつもありがとうございます。」
そう言って、私の手から皿を持って行くシリー。
「こちらこそ、ご馳走さま。今日も美味しかった。今日は?」
「イリスですよ。伝えておきますね。」
クスクスと笑いながらシリーが厨房へ入って行く。
少し待つと。
程なく「やった!」というイリスの元気な声が聞こえてきた。
そうして笑っている私を、ジトっとした目で見ている、朝。
「あっ。ごめん、ごめん。」
「で?」
そう、気を取り直して咳払いをする。
チラリと視線を飛ばしてみたが、多分あの極彩色は聞いている筈だ。
こっちに意識が半分、向いているのが分かる。
それなら、と視線を戻して口を開いた。
「て、言うか。聞いて!本当に簡単なことだったんだよ………だって、みんながみんな、「自分」を、救えば。世界が、救われるじゃん。」
「ババーン」と、発表した、私を前に。
くるりと回った、青の瞳。
その朝の返事は、振るわなかった。
「え、うん、まあ。そう、だけども。」
「…………。」
えっ。
何その目???
おかしくない??
めっちゃ、名案だと思うんだけど???
「まあ、待て。」
私を諌めつつも、何故だか朝の隣に座る極彩色と本部長。
いつから聞いていたのか分からないけれど、確かに私の声は大きかった。
聞きたくなくても、聞こえる程には。
「あんたこの前、「愛がどうしよう」って騒いでたじゃない。そこが解決しないと、それは無理ね。」
「確か、に。そう、だけども…………。」
不満顔の私に、三人は厳し目だ。
「だって、さあ?実際問題、「世界を救う」って。一人じゃ、無理じゃない?でもみんなが自分を救えばさぁ………結局「自分の愛」は、自分でしか見付けられないんだから。結局は、自分で救わなきゃ、どうにもならないと思うんだよね…………。」
「まあ、それは。確かに、合ってる。究極的には、だけどね。」
「でしょう?!?じゃあ、なんで。」
「そもそも、どうするんだ。結局直接的にできることは、無い。」
キッパリと言い切る本部長、朝も頷いている。
まあ、確かにそうだけれど。
でも。
「なにか」を考えてしまうのは。
考えたいと、思ってしまうのは。
どうしたって止められないのだ。
ムッツリと黙り込んだ私を前に、本部長は一枚のカードをスッと差し出す。
それは、あの。
フリジアの魔女部屋への、招待状だ。
「とりあえず。行ってこい。そうすれば、少しは解るだろう。」
「…………なーんか、私が「なんにも解ってない」みたいな言い草ですね………。まあ、そうなのかもだけど。」
「まあまあ。とりあえず、行く気だったでしょう?あそこなら、きっとあんたの話も上手く纏めてくれるわよ。」
「…………まぁ、うん、そうだね…。」
なんだかみんなして。
私の事を、フリジアに押し付ける様になっている気がするのは。
多分、気の所為じゃ、ないのだろうけど。
「とりあえず支度をして来い。」
そう言って「ポン」と狐に変化した極彩色は、一緒に行くつもりらしい。
「はぁい」と返事をして、ティーカップを置いた。
なにしろここじゃ、分が悪い。
きっとフリジアの方が、私に合った解決策のヒントを提示してくれそうだ。
「なーんか、みんなうちの人って私に厳し目だよね…。」
食堂から青の廊下へ出て、調度品達に愚痴を言いながら歩く。
「クスクス」と関係ないお喋りをしている家具達を眺め、その柔らかい空気を取り込んで私も自分の頬を揉み解した。
とりあえず。
また、虹に乗って移動したならきっといい気分転換になるだろう。
そう思って、ウエッジウッドブルーの部屋へ戻ったのである。
なんとなくの気分で「今日はこれ」と、選んだワンピースは水色である。
「うん。」
「いいわね。」
「ありがとう。じゃあ、行ってきます。」
青の鏡に太鼓判を貰い、緑の扉を開けるとそこには既に狐が待っていた。
「ほら。」
「あっ。ごめん、ありがとう。」
なんと食堂にそのまま、カードを忘れていたらしい。
白のカードを咥えた千里は、それを渡さずどうやら「抱け」という素振りである。
「フォーレストは?」
「今日は俺だけでいいだろう。」
「そう?まあいいか…。」
確かに魔女部屋は、そう広くない。
意外とフォーレストは大きいので、とりあえず千里を抱えカードを受け取った。
「では。いざ。」
「なんか呪文とか、無いのか?」
「ううん、よく分かんないけど。いつも手に取ると、勝手に運ばれるの。」
「ふぅん?」
そう言った紫の視線が白いカードを捉える前に、虹が、出て。
ぐっと腕に力を入れ、目を瞑るとフワリとした感覚、気持ちの良い光が私達を、包んで。
「おや、いらっしゃい。」
すぐに聴こえた聞き慣れた声、目を開けるとそこは既に落ち着いた蝋燭の灯りが揺れる、魔女部屋の中であった。
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