透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

仕切り直し

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淡色から濃色への紫のグラデーション、時折混じる真っ赤な髪。
多くは灰色だが金も多く、結局「何色」と言っていいのか分からない、極彩色の髪はこの頃深みを増した様に思える。

「うーーーん?」

私の瞳の解像度が?
上がった、とか??

……………あり得るから、怖いな………。


「何を唸っている。とりあえず、は予想の範囲内だ。だからお前は、あまり人前に出ない方がいいんだ。」

「えっ?」


贅沢に朝風呂をしている途中、森のお風呂へ私を呼びに来たのは朝だった。

「なんか呼んでるわよ」という、嫌な予感のセリフを聞いて、ノソノソと着替えやって来たいつもの書斎。
待っていたのは極彩色と本部長の二人だけで、朝は既に居なかった。

が、しかし。

「で?、したんだ?」

そう問い掛ける本部長の聞きたい事は、きっと私の変化に違いないのは分かっていた。

だって、あの日の夕食後。
まるでお伽噺よろしく星屑を撒き散らしながら部屋まで帰った私は、それを朝にツッコまれる迄、気が付いていなかったからだ。


そうして一連の説明をした、後。

向かいに座る極彩色の髪色を観察して、ウイントフークのぐるぐるを待っていたのだが、出てきたのはそんな、言葉だったのだ。

「よ、予想の範囲内って?どういう事ですか??」

「………大方、予測はつくだろうが。お前達を利用する、という事は「そういうこと」だろう、とな。」

呆れた目で私が逆に、見られている。

えっ。
ナニソレ。

「気付かない方が阿呆」みたいな目、して!
失礼しちゃう!


プリプリしながらも、「そう思われる様な節」を自分の中で探していると、こうお達しが、出てしまった。

「だから、不特定多数と会うのは、止めておけ。その「占い」とやらは、向こうに任せてお前は祈りの準備に専念しろ。解ってるな?」

「………うっ、はぁい。」

ジロリと眼鏡の奥から、念を押される。

確かに。
「占い」も、やりたいって言ったけど。


フリジアの所から帰ってきて、ウキウキで報告した案件が早速潰れてションボリ、する。
しかし、確かに。

夢のことを少し、思い出してみても。

私が「それ」に向いていない事は分かるし、メルリナイトも占いには精通していると言っていた。
それなら、任せた方がいいだろう。

「うーーーーーん。」

「とりあえず、そうでなくともやる事は沢山あるんだ。そっちに集中しろ。………しかしはっきりとのは、デカイな。だから…その、蝶が………」

ブツブツ言い始めた本部長の目が、怪しい。

「じゃ、ちょっと、もういいですよね?失礼しまーす。」

そう言ってそそくさと席を立ち、書斎を後にした。

あの目は危険だ。
きっと長居したならば、私の蝶を捕獲しようと何やら始めるに違いない。

「どこ行くんだ?」

「ん?別に………決めてないけど。」

一緒に出て来た千里を、振り返りつつ。

ブラブラと手を振り調度品達に挨拶をしながら、とりあえずは青のホールへ歩いて行った。




真っ青な空が美しく映える、白のホール。

いつもは「青のホール」と言っているが、実際壁は殆ど白いし、意匠が青いだけなのである。

そこに大きな空の窓が出来た事で、名実共に「青のホール」となった今は、いい感じに考え事ができそうな開けた空間となっていた。


「はぁ。」

点在する白のベンチ。
その一つに腰掛け、天井を見上げる。

上には窓は無いが、その繊細な青い紋様が美しいアーチの天井は、空が見える窓と同じくらい私を癒してくれるものだ。

「ぁあ…………。」

頭の中のぐるぐるを、また洗い流す様に青い星屑に変え、ザッと流して、ゆく。

「どうした?」

「………ううん、どうも?して、ない………。」

いつの間にか音も無く隣に座っている、大きな男。

この人は狐だからか、石だからなのか。

見た目はデカいが、その静かな気配に感心しつつも自分の中を確認する。


どうも?
して、ない…………のは確かなんだけど?

私が占いを直接、できないのは仕方が無いし。

「ああなる」ことが、分かってからは。
やらない方がいいとも、自分で思うから。

それなら?
うん?何だろうか。


「祈り………祭祀は、星が見えるよう、祈るし?いっぱい参加してくれるといいけど………ブラッドは仕事してくれてるかな…他の区画へ行けるのは、楽しみだしな?うん?そういや、私「楽しむ」って、言ってたんだわ………。」

あの、禁書室で。

、思った筈なのに、そこから怒涛の展開で、今。

こんな感じに、なっていて。

「うん?」

でも。

「嫌、な訳じゃ、無いんだけどな?………なんだ、ろうか。ねえ、なんだと。思う?」

くるりと、隣の紫の瞳を確認した。

この人はきっと、「こたえ」を持っている、筈だから。
教えてくれるかどうかは、分からないけど。


その、深い「宇宙」を思わせるような色は、そのままじっと私の目を見つめ返して、いる。

うーーん
意外と………髪の毛に、やっぱり似てるんだね?

紫の中に、金と…灰色?銀?
それに、赤と少し濃茶
なにしろこの虹彩も凄いんだけど、その周りも普通は同じ色なんじゃないの………

えっ
なんで「こう」なんだろ?
離れて見ると、普通………いや、普通じゃ、ないわ
うん

えっ
なに?

ちか 近いん です けど  ???? ?


ゆっくりと、しかしどんどん近づいてくる紫の瞳。

しかし、目は離せなくて。
負けず嫌いの私は何故だかその瞳を、ぐっと見つめ返した。

「ふぅん。………まぁまあ、だな。」

「えっ。なにが?」

ぐっと近づいた所で、ふと躱し、そう言う千里。

「なに?また、何か確かめた、訳?」

ついさっき思い出したばかりの、千里の予言めいた、嫌な予感。
それに「試されている」と思っている私は、不貞腐れながらもそう、尋ねた。

「いいや?別に。」

「えっ、絶対。何か、隠してるでしょ?ってか、教えてくれなくてもいいけど。一応、身内なんだからさ、その試すみたいな、揶揄うみたいなの、止めてくれない??」

その私の様子を見て、また楽しそうだから、いけない。

余計にプリプリしない様に気を付けながらも、逃さない様に袖を掴んでおいた。
そうでなければ。
またすぐに煙に巻かれて、しまいそうだからだ。


「いや、まあ、そうだな。」

笑っていた千里はそう言って体勢を整えると、座り直して私の事を覗き込む。

いや、真面目に話して欲しいとは思うけど?
こんな、ガッチリだとさ………


紫の瞳に捕らえられて、固まった私はしかし、呑気に再びその美しい虹彩を観察して、いたのだけど。

いつもより真剣な、その少し低い声色に再び嫌な予感がして腕を摩っていた。


「沢山のものが見える様に、なると。いい事もあるが、お前がズレる事も、ある。」

「………う、ん。」

「しかし。「お前の本当」は、いつだって一つだ。それだけは忘れるな?お前は確かに、「全部で一部」だが、いつだって真ん中は「同じ」「ひとつ」だ。分かったな?」

「………はい。」

いつになく、真剣なその、「いろ」に。

圧倒されているうちに、鮮やかな髪色を煌めかせ立ち去った千里。


えっ。
うん、と?

何これ。
予言?

いきなり真剣に「千里眼」に、そう言われたものだから、やや焦るのは仕方が無いだろう。

揶揄うのは止めてと、言ったのは私だ。

うん

でも

え?

いやいや、待って?
別にそう、怖い事言われた訳じゃ、ない………よね???


そう

私 は  自分の?

 真ん中  本当   で

  あれ ば   いい  って こと 


 だよね?????



意味深なその、言い方に戸惑ったけれど。

ある意味、言われている事はそう、いつもと変わりないと、思う。

少しそれを反芻して、自分の心を落ち着かせると、深呼吸して青い空を眺めた。


「…………くぅっ、でも!あの、言い方!」

ドキドキしてしまうのは、仕方無いだろう。

いつもは本当のことなど、言わない千里が。
私に「ズレるな」と、言ったんだ。


「えっ、それって、ズレる様なことがあるって、こと??えーーーー………」

ズルズルとベンチへ横たわり、天井を眺めていた。



   私 は   ちいさな ほ し


小さく聴こえてくるのは、花達の歌だ。

いつも私が謳っているから、覚えただろう、あの謳。
可愛らしい声が、重なって、緩やかに青のホールを彩る。

そこへ鳥達が喜んで舞う、最高のこの、空間。


「あーーーーーー。…………だよね。悩んでるの、勿体無!」

そうして、ガバリと起き上がって。

「よっしゃ、謳いに、行こっ。」

そうして行き先を訊きに、再び書斎へ走り出したのである。








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