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8の扉 デヴァイ
ラピス 魂の望み
しおりを挟む多分、シャットに行く前よりも大人っぽいデザインになっている。
表情は微妙だが、全体的に「大人感」が出ているエローラを見ながら、そう思っていた。
そう、エローラはまだ私の事を見ながら何やら考え込んでいて。
顔は百面相であり、微妙なのである。
すっかりサンドイッチを食べ終わった私は、アイプのジュースを振りながら下に溜まった果実部分を飲もうと頑張っていた。
「でも。確かに、私も店を継ぐのでなければ難しい質問だわね。」
「ん?」
突然、そう話し始めたエローラ。
表情は真剣である。
「だって………そもそも、店が無かったら服を作っていたかも、分からないじゃない?好きにはなってたかも知れないけど。そう考えると、何にもなかったら。私はどうするかな、って思って。………まあ、でも服は作ると思うけどね。」
辺りをキョロキョロと見渡しながら、そう言うエローラ。
確かに「あれはエローラの店」と、分かる服を着ている子が増えたと思う。
以前はほぼ、同じ様なデザインのものしか無かったのが、色やバリエーションが増えているのが分かるのだ。
「凄いよね………でもやっぱりみんな、飽きてたって事だよね。お洒落は楽しいしさ…。」
「そう!それなのよね。毎日同じじゃ、なんかどんどん自分が………なんだろう、古く?なりそう?みたいな?」
「ああ、なんかわかる気がする。新鮮さは大事だよ。日々に、スパイスは必要よ。」
「うんうん、そうなんだけどこの頃のデザインがさ………いや、違うのよ。」
「ん?」
「いや、ヨルの話だから。私はもう、店を継いでるし。それは、事実。危なかったわ………。」
確かにエローラと服の話になるのは、危ない。
それで今日が終わる可能性だって、あるのだ。
「で、さあ?その「祈り」とか「在る」だか「居る」だかの話だけど。」
「うん。」
「ヨルはどうしてそう思ったの?いや、別にそれが良い悪いじゃないんだけど。純粋に不思議なのよね…「何かが欲しい」とか「こうなりたい」とかじゃ、なくて。「そこにいるだけ」みたいな事でしょ?」
「うん、まあ、そう、だね………??」
確かに?
そう、なのかな………。
言われてみれば、そうだ。
所謂、私達の世界で言う「将来の夢」だって、「何になりたい」と職業などの事を言うのが、普通である。
でも。
私が やりたい こと というか。
「こうなら 心地良いな」
「こうだと 幸せだな」って。
思う、その状態が。
ずっと
きっと ずっとずっと、前に。
「そうで あった 」だろう いつかの 私
それ そのものに 近くて。
それ以外で、「こうなりたい」「幸せな状況」と、言えば。
あの金色に包まれている時…………。
いやいやいやいや、それは待って。
違う。
いや、違くないけど
「私の」だから いや? 「私の」 でも?
ある、な?????
待って。
でもとりあえず、それは。
今は脇に、置いておく話だ。
気を取り直して、灰色の瞳を見る。
「うん………改めて言われると、どうなんだろう…でも確かに。「欲しい」とか「なりたい」とかじゃ、ないんだよね………。「なる」と言うより、「在る」と、言うか。」
「ふぅん?やっぱり、その「夢」が関係してるのかもね。「魂」か………。確かにそれは、あると思うわ。」
「…………!鋭い。」
ポツリとエローラが呟いた言葉に。
私が、感心してしまった。
私はエローラに、全ての夢の内容を話した訳じゃ、ない。
細かな所は端折っているし、気まずい部分は言っていない所もあるけれど。
でも「繋がっている」のは、確かだしチラリと魂の話も、したのだ。
そう、ここラピスでは殆ど知られていないだろう「魂」や「前世」的な、話。
普通であれば、おかしなもの扱いされる所である。
でも、そう、エローラならば。
「エローラってさ………私ツウだよね……レナもだけど。でもレナにこれ言ったら嫌がられるんだよね…。」
「何それ。いいじゃない。………レナもまた来れるといいんだけど。」
「うん。」
それきり、暫く。
二人とも、何も喋らなかった。
まだ、世界を繋ぐには時間が掛かる。
それに。
夢の内容は、貴石に関したものや「それ系」の話も、多かったから。
沢山の「色」が、複雑に織り混じっているのだ。
エローラもきっと、未来の事を考えていたのだろう。
温くなったジュースを飲み干すと、一つ頷いてこう言った。
「でも。とりあえず、ヨルはそれで…いや、それが。いいと、思うわ。何しろその、なんて言うのかしら………「状態」みたいな所が、ヨルらしくて。いいわ。」
考えながらも、そう言ってくれるエローラ。
「うん、なんか。………ありがとう。そう言ってもらえると、嬉しいよ。なんか、「仕事」とかじゃないと駄目なのかなって、思ったりするけど…。」
「あら!仕事じゃないから、いいんじゃない!だから、「そうなんだな」って、思うわよ。成る程、確かに。それが、「魂の目的」なのかも知れないわね…。なんて言うの、利益目的じゃないじゃない?そんな事、あり得ないわよ、普通………フフッ。可笑しい。」
「えっ。」
「いや、いいんだけど。良いんだけど、可笑しい………。」
そう言って、笑い出したエローラ。
どういう事だろうか。
「いい」けど、「可笑しい」って?
ま、いいけど………。
でも。
「魂の目的」って。
なんか、いいな?
流石、エローラ………。
くるくると私の頭の中を巡る、沢山の色、夢。
夢と言うには鮮明過ぎるそれは、時に私を苦しめ、また幸せも、齎すものだけど。
「それ」を見ること、経験した事を思い出す事で「そう思える」ならば。
古い木目の美しさに、テーブルを撫で空を仰ぎ見る。
今日も一等、青い空は。
やはり私を優しく見守り、「それでいい」と肯定してくれている、様で。
嬉しくなって、向かいのエローラに笑い掛けるが未だ笑いっぱなしのエローラ。
その光景が嬉しくて、再び笑顔で空を見上げた。
そうして一頻りエローラが笑い終わるのを待つと。
私達は、再びお喋りをしながらルシアの店へ行く事にしたのである。
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