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8の扉 デヴァイ
ラピス 反応
しおりを挟む「あの。どうして、「光る」んだと思います?」
突然の問い掛けに、始めは二人とも答えなかった。
ロランは二つを見比べて首を捻っているけれど。
ヨークは黙々と落ちているガラスを拾い集め、私が「怒っているんじゃ」と、思うくらいは。
長い間、沈黙していたのだ。
「さっき。………作業中に、光ると言ってたな?」
「そうですね。」
沈黙の後、口を開いたヨークから出たこの言葉。
彼は何かに気付いたのだろうか。
じっと考えている灰色の瞳を、見る。
くるくるとよく動くその瞳は、様々な色を映しながら。
キラリと光って、私に「こたえ」を齎したのだ。
「それは「反応」だろうな。「もの」と「まじない」が反応して、光る。俺の場合はガラスだろうし、ロランなら陶器だろう。しかし俺のガラスでも光ったな?」
「成る程………「反応」………それ凄い、いいですね………。」
確かに。
ヨークはヨークのガラスを扱う時に光るのだろうし、ロランもそうだろう。
しかし、ヨークのガラスは破片ですらきっと、「なにかが込もる」筈なのだ。
「それ」はきっと、大きさでは、ないし。
「材質の違い」でも、ないのだろう。
「多分、込もってるか、込もってないかの違いだよね………。だから多分、ガラスでもいいんだよ。………ん?で?反応………?」
私の独り言を解読したのだろう、ヨークが続きを話してくれる。
「確かに俺達は「まじない」で作業をしている。勿論、それは材料にも込もるだろうしその材料とまじないが反応して、作品が出来る。所謂さっきの状態は「作業中」に近い様にしたかったんだろう?」
「そうですね!流石です。」
「しかし、多分だが。実際の作業とは、やはり違う。集中も、多分まじないの種類もな。だから足りない分はヨルのまじないが補った、という事だろう。それが「反応」だ。」
「確かにヨルのまじないは。「光」っぽいからなぁ…。」
「え。」
うん?
なん、で???
いきなりロランに横からそう、言われて。
止まった私は、ギギギッ、と。
首を横に向けて、「なんで?」の目をしてみた。
そう、いきなりの核心を突かれた様な「光」の、言葉に。
動揺、していたのだ。
しかし、私の驚きとは裏腹にロランは軽い口調でこう答えた。
「え?だって、なんとなく。そんな感じが、するじゃないか。」
「ああ、それはなんとなく解るな。」
「えっ?ヨークさんも??」
なんだか二人で納得、してるけど。
男二人、顔を見合わせ頷き合っている。
うん?とりあえず?
あまり、悩まなくてもいいかも、知れない。
多分、この二人に関しては。
「「反応」………「反応」、かぁ。なんかいいな。」
私は最初、二人のまじないが漏れているか、「やる気」の様なチカラが漏れているのかと思っていたけれど。
いいや、多分。
どちらも、正解なのだろう。
ただ、「今の場合」は。
二人の「想像」と「私のまじない」が、「反応」して。
「ああなった」って、ことなんだ。
きっと。
「ふむ。………そうすると………?」
一人でブツブツ言い出した私を放っておいて、二人は作業へ戻る事にした様である。
気が付いて、顔を上げた時には。
既に、二人共が。
私が声を掛ける前の状態に、戻っていたからだ。
遠くで作業をする二人を交互に眺めながら、くるくると回り、漏れてくる思考を垂れ流す。
「えっ。これって私がまじないで星と一緒にさり気なく飛ばせば、いい感じにみんなの祈りと「反応」しちゃって…………「光る」んじゃ、ない???」
「まあ、そうだとは、思うが。」
「う、ひょっ!吃驚したぁ。止めてよ、もう!」
てっきり、一人だと思って呟いたのに。
いきなり背後の、しかも頭上から降ってきた答えに飛び上がってしまった。
「ま、でも。揉めるだろうけどな。」
「えっ。なんで?名案じゃ、ない??」
「まあ石よりはいいだろうが。………とりあえずそれは、帰ってからだな。」
「そうだね………。」
キラキラを、降らせて。
ガラスだけど、「自分のまじない」が、光って。
何か、問題があるのだろうか。
いやしかし。
私が把握していない問題なんて、山程あるのだろう。
その辺りは、本部長の仕事だけれど。
できれば。
やってみたいと。
成功したら、とても、素敵だろうと。
「思うん、だけどなぁ。まあ、でもいきなりガラスが降ってきたら吃驚するか………ん?でも「チカラが結晶化しました!」とか言って?良くない??」
「阿呆。とりあえずそろそろ邪魔じゃないのか?」
「あっ。そうかも。大分中断させちゃったしね………。」
再び舞っている、キラキラの火花と熱い、炉の炎。
邪魔しちゃ悪いとそのまま遠くから声を掛け、お礼を言い、お土産のクッキーを置いて「また」と言っておいた。
私の頭の中の計画では既に、ヨークに屑ガラスを貰う事になっているからだ。
そうして、二人と奥のエーガーにも挨拶を済ませると。
頭の中に炎色のキラキラを宿したまま、白い石畳をつらつらと歩いて帰ったのである。
その日の、夜。
月明かりに照らされた、机に並ぶドライハーブ。
私の作ったスワッグは、すっかり褪色しているがカタチは美しく保たれ壁の花になっている。
その下のベッドでは、規則正しく上下する白い刺繍のベットカバーが胸の中をホッコリと温かくさせて。
笑顔になった視線をそのまま、紺色の景色へ滑らせて空と屋根の境目を探す。
この時間なら、まだ。
星空との境目は、見つけ易い筈だ。
そう思って、目を、凝らしていると。
ガラスに映った、紫の光が見えた。
「うん?起きてたの?」
ティラナを起こさない様、小さな声でそう言って口を押さえた。
この狐ならば。
私の表情だけで、言いたい事は分かるに違いないからだ。
うん、とりあえず目で訊けばよかったわ………。
椅子で丸くなっていた千里は、察したのかピョンと飛び跳ね机の上に飛び乗る。
そうして目線を合わせると、意味深な紫を私に、向けた。
しかし何を話すでもない、その視線に。
私の頭は、昼間の「反応」の事に自然とスライドしていた。
チカラ まじない
集中 作業 夢中になること
熱中すること 楽しいこと ワクワク
美しいもの 好きなこと
集中の、度合いかな?
でも。
楽しいこと、でもキラキラするって事だしね?
あのガラスは、色とりどりだったから。
「私のまじない」と「二人のまじない」が、其々混じり合ってどんな色になったのかは。
確かめられて、いないけれど。
違う色に、なったのだろうか。
でも。
……………そうなんだろう、な…。
なんとなく、だけど。
「同じ色」に、なるとは。
思えないからだ。
「まあ、そうだろうな。」
絶妙なタイミングで返事をする、極彩色。
「あいつには言わない方が、いいかもな?でもそれなら祭祀は無理って事だろうが。」
「え?…………ん?あ?…………えぇ??ぁ」
おかしな返事をした私を放って、ポンと飛び降り椅子に戻った千里。
えっ。
ちょっと、待っ ん???
まじない 混じる
いやいやいやいやいや そう じゃ
なく てよ????
「ちょっと 」
「おい、煩いぞ。起きるだろう。」
「ぐっ。」
誤魔化され感が、否めない。
しかし。
確かに、ここでこの狐を問い詰める訳にも、いかない。
くっ!
ちょっと捕まえて、首をキュッとやってやろうかと、思ったけれど。
止めておいた。
きっと、人型になって仕返しされるのが、オチだ。
それなら知らんぷりを決め込むのが、いい。
…………でも。
くっ。
なんか、悔し………。
えーー?
でも?
違うよね?反対………されない、よね???
だって アレ とは
ち 違う し ?
ねえ
ちょっと 聞いてんでしょ
もう!
しかし。
すっかり狸寝入りをしているであろう、極彩色の毛並みは微動だに、しない。
くっ!
いいもんね!寝るもん。
フン、だ。
プリプリしながらも、そうっとベッドへ潜り込む。
ああ………まだあったかいな…。
子供体温。
ティラナも大きくなったけど。
まだまだ、子供………。
狐…………
狐が タヌキ 寝入り
「フフフ」
「寝ろ。」
あ。
やだ。
乙女の頭の中を覗くなんて!
デリカシー無いわね…。
て、朝、どうしてるかな………。
そうして、うつらうつらと。
散らかる頭の中は、そのまま夢の中へと突入したのであった。
うん。
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