透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

石、ガラス、チカラとは

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「これって。まじないの大きさ、とかでしたっけ?」

並べられた石達を見ながら、そう質問した。


再び細かく石達を並べ直している本部長から、返事は無い。

予想通りの反応に、とりあえずの質問を自分も放り出して目の前の秤を眺め始めた。


うーーん?
あの時は………。

確か、屑石となんか綺麗な石を?ん?
近い………離れる距離とかじゃ、なかった??

さっきウイントフークが試していてのは、明らかに「重さ」を計っていた様に思う。

天秤が、傾いていたからだ。

でも以前、試した時はくるくる回ってその離れた距離が………なんか、言ってなかったけな?


ヨークのガラス、私の石、癒し石、屑石。

長机の隙間に綺麗に並べられた其れらは、それぞれに美しく、お互いの色を引き立て合っている。

私のヴェールに付いているガラスは、ここから見ると石とそう変わりない。
隣に並んでいるのが自分で創った石だから、尚更かも知れないけど。

「うん?屑石でも重いやつは重かった…けどやっぱり私の石よりは軽いのか…あれは二個乗せてたっけ?」

「いや、でもやっぱり一番重かったのは多分アレだから………結局、癒し石より普通の私の石のが重いってことだよね………。えー、ガラスはどう…」

「一番、重かったのはこれだ。」

「えっ。ホントですか??」

急に帰って来たウイントフークが持ち上げたのは、私のヴェール。

その中でも一番大きな、金色の、ガラス。

いや、金と言っても。
あの、金色ではなくて黄色っぽい、クリーム色に近い様な色だ。

「えっ、意外。ガラスなのに??」

その、私の言葉に。

じっとこちらを見ている、茶色の瞳が怖い。


えっ。
なんかしたっけ………?

を撒きたい、って言った…のは千里………ん?もうバレた?
いや、早くない??

でも分かんないよね………なんだろう。

て、言うか。

ん?


 石 より  ??

 ガラス が?  重い  


  重い?


「まじないの………」

重さ、なんですかね?とは。

なんだか、訊き辛い。

だって。

は。

ヨークの作った、「込もった」ガラスで。
「私のまじない」が、入っている、もの。

「石」では、ない。


えっ。 なに。 ヤバい系???


じっと私を見つめたまま動かない本部長、その間に私のぐるぐるは危険な方向へ暴走しようとしている。

ウソでしょ………じゃあ。

で、あれば。

 「石じゃなくても いい」って、ことに。

なっちゃう、じゃん…………。



「とりあえず、これに力を込めろ。」

「うん?…はい。何ですか、これ?」

暫く私を観察した後、手近なカケラを掴んで寄越した本部長。

その手のひらに乗せられたそれは、小さな石か、何か。
癒し石にでも、するのかな?

「それは普通のグラスの破片だ。所謂、ただのガラス。」

ふむ。
これに私のチカラを込めて、実験したいという訳か。

確かに、それは。
私も、興味がある。


手のひらに乗った小さなガラスは、柔らかく割れた親指サイズの破片だ。
きっと透明だったろう、そのグラスはこれだけ小さくなると極薄い水色なのが、判る。

その小さな破片をそっと握って、薄くチカラを、込めた。


「どうぞ。」

手のひらからパッと奪われたガラスは、すぐに秤に乗せられて。
反対側に乗せられたのは、さっきの「一番重い」と言われていた、ヨークのガラス。

しかし私のヴェールにくっついているので、少しは重さが減るのではないだろうか。
少し、ウイントフークが持ち上げているからだ。


しかし。

結果的には。
ヨークのガラスの方が重かった。

「ふむ。ちょっと、これとこれにも力を込めろ。少しで、いや、さっきと同じくらいで。」

「はぁい。」

何がしたいのか、それは分かっているつもりだ。

いやしかしこの人は、私の事を何だと思っているのだろうか。


ポンポンと目の前に置かれていく様々な物体、きっとこれらは石、ガラス、その様々なレベルのものなのだろうけど。

しかし、そんな事などお構いなしのウイントフークは次々と石やガラスを秤に乗せ、それを記録していっている。

仕方無い………。
やるか。

それに、私も。

が、一番組み合わせとしていいのかは、気になるもんね………。


そうして私達二人の実験は、黙々と続けられたので、ある。






「これで大体、出揃ったか。」

「やっぱり「これ」が一番でしたね?」
「ああ、まあ、そうだが。」

うん?
違うの??

私が指差しているのは、一番始めに「一番」だったヨークのガラスだ。

様々な、組み合わせで試したけれど。
多分これが一番、重かったと思うんだけど………?


私の言葉に頷きつつも、何かを考えている風のウイントフーク。
その瞳は、じっとこちらに向けられたままである。

なんだか、雲行きが怪しい気がするのは気の所為だろうか。

そんな、色んな意味でドキドキしている私に投げかけられたのは。
再びの、よく分からない、質問であった。


「こうして比べると改めて、よく判るが。お前のまじないが強いのは、どうしてだと思う?」

「え。」

「パッと思い浮かんだ答えで、いい。あまり考えるな。」

「え、はい、えーと?多分、ですけど。これまでの経験から言って、私の世界の方が自由度が高い、から?………そうでもない部分もある、けど、まあこっちよりは………うーん、それに自然がある所も外せないですね。なにしろ美しい景色が、多い。あとは、………なんだろうか。」

「ふむ。それで、ちょっと考えてみろ?もし、お前の世界でも、「みんなまじないが使える」としたら。お前は力が強い方だと思うか?ほら、すぐ答えろ、あまり考えるな。」
「えっ、えっ、多分、はい。なんとなくですけど???」

ニヤリとした本部長が、怖い。

「で?それは、何故だと思う?これは考えていいぞ?」

「何故、パッと思い浮かんだお前が「強い」のか。それは、他と何が、違う?少し考えて、みろ。」

「え。」

急き立てられる様に「言わされた感」は、ある。

でも。
少し悪い顔をしている本部長は、それも想定通りなのだろう。

私がまじないが「強い」と、言うであろうこと。

私と、他の人との「違い」は「なに」か。


これまで比べていた石は、私の力が込もったもの、ウイントフークのもの、レシフェのもの、後は知らない誰かの、もの。
何種類か、力を込めた石があり其々を比べたりも、した。

その中でも。

やはり、「私の」力は重かったし、次がレシフェ、ウイントフーク、他の誰か、だった。

チラリと腕に嵌まった腕輪を見る。

は、とりあえず「無し」前提で、考えていいぞ。」

お見通しの本部長の言葉に頷いて、腕輪に視線を戻す。


キラキラと光る、きっと私の世界でも「いい石」であろう、この子達。

私は腕輪これの所為で、ここでは力が強いのかと、思っている。

でも?

それって、どうなんだろうか。

勿論、石の力もあるとは思うけど。


 石の力

 人の  チカラ 


多分、ウイントフークが実験していたのは「組み合わせ」だ。
石と人、ガラスと人、それぞれの組み合わせで「どう」力が変わるのか。

それとはまた、別の話だろうけど。

「私」は?

この子達が、あるから?

それとも別の世界から、来たからなの?

それとも?

「私自身」に?

なにか、ある の ???




 私の世界

 沢山の 人

  まじない  不思議な チカラ

 見えないもの  信じる 信じない

  夢  想像力

     それぞれの 世界感

 見えているものの 違い

  時空の ズレ  瞬間


 「人間ひとは 見たいものしか 見ない」



      なにを  信じて。


  なにを  自分の生きる 道に。

       採用 するのか



 どう 世界 を 捉えて

 どう 世界を 渡ってゆくのか

 どう  生きて始めて

 どう  死ぬ終わるのか。




「わかん、ないけど。多分。」

「何を、見て。何処に向かって、進むのか、の違いですかね………。」

少しだけ細まる、茶の瞳はあの人にそっくりである。

「別に、「何がいい」のかは、分からないですけど。多分、私は「信じるチカラ」は強いと思うし。…世界は、だって色とりどりで、最後にはきっとハッピーエンドで。って。思ってる………願って?る??いや、だな。」

根拠は、ないけど。

そうに、決まってるんだ。

「うん。」


その、満足気な私の言葉に。

頷いたかに見えた本部長の視線はしかし、私ではなく下の方に、注がれていた。

「ん?」

その視線を追っていくと、すぐに分かった光。

なんと、腕輪が光っていたのだ。
ついでに、指輪も。


「えっ、あっ。うん???」

とりあえず右手で抑えたものの、ウイントフークの視線が怖くてそのまま手を外す。
確かに、私達二人以外は誰もいないのだ。

隠す必要は、無いと言えば、無い。


「それでこそ姫様」
「やっぱり、そうじゃなくちゃ!」
「私達は純粋なものに惹かれるのよね……」

「形じゃないんだよ」
「   」
「「想い」にも、美しさは必要よ」

若干一名、無言なのは光で表しているハキだろう。

いつもよりもキラキラと光って、眩しいくらいである。
みんなも、銘々に嬉しい言葉を言ってくれているけれど。

これは、私がまるっと受け取って、いいやつだよね………??


「何か、言ってるのか?」

「あっ、はい、いや、いいえ。」
「コラ。早く言え。」

「うっ。」

なんだか恥ずかしくて、自分では口に出せない。

「まあまあ、姫様。そのまま伝えてあげれば、よろしい」

えっ。
何言ってるの、宙。


「えっ、で?この他の石とガラスはどうするんでしたっけ?」

そうして必死に誤魔化す私と追求する本部長、密かに呟いている石達。

何やら賑やかな小部屋は、訪問者が来ている事には全く、気が付いていなかったのである。

うむ。

  









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