692 / 2,079
8の扉 デヴァイ
ある日の会議
しおりを挟む「お前はあまり、喋るな?」
「ああ、解っている。」
ある日の、夜。
ウイントフークに頼まれて、俺は銀ローブのフードの下、不本意ながらもアリススプリングスのローブの中に潜っていた。
どうやら長老達が集まって、定期的に会議が行われるらしいデヴァイ。
勿論、アリスは呼ばれているがどうやらブラッドフォードはアリスが連れて来たらしいな?
「カチリ」と開けた、扉の奥の面々が。
ブラッドフォードの顔を見て、薄ら笑いで顔を見合わせていたから。
きっと色々な思惑があってウイントフークは俺をここに仕込んだのだろう。
最悪、こいつらが帰されたと、しても。
俺は何処かに隠れれば、話は聞ける。
そう、そうしてウイントフークの計画通りなのかなんなのか。
当たり障りの無い報告をして、爺どもは若者達を帰そうとし始めたのだ。
「そう言えば、ブラッドの婚約者はどうだ?他にも色々噂がある様だが。」
「いいえ?仲は良いですよ。」
「ほう?」
「他の色の家にも出入りしているしの?」
「そうそう、あそこの家は意外とまじないも悪くない…」
「ああ、向こうの銀ですな?」
「そうそう。」
何の話をしているのか、誰の事なのか。
しかし、「銀」と言われて思い出したのは突然訪ねて来たあいつだ。
すっかり忘れていたが、ウイントフークはあのコンパクトをどうしたのだろうか。
しかし、爺どもは二人がこの話を話さないと踏んでいたのだろう。
二人は少し、俺を気に掛けた様子だったが。
とりあえずキラリと背中を光らせて「大丈夫」だと合図しておいた。
その時既に、背後の棚の隙間に。
入り込んでいたからだ。
二人からはよく見える位置だが、きっと年寄り達からは見え辛い場所。
そうして暫く。
再びの当たり障りの無い会話の後、正面にある扉を開け、二人が出て行く所を見送ったのだ。
予想通り、二人が居なくなりガラリと変わる、部屋の雰囲気。
なにやら秘密の場所らしい此処は、声は漏れないのだろうが。
コソコソと爺どもが話し始めたのは、この世界の黒い部分、きっとウイントフークが知りたかった内容だった。
「どうです?最近、夢は………」
「ああ、変わらず。」
「うちもだ。あの男は、まだなのか?」
「早々手は出せない様で。やはり守りが………」
「まぁな。」
「焦りは禁物ですぞ。」
「しかし体が保たねば…」
「それもあるが。今度祭祀があるらしいな?」
「そうだ、それもある。今度光が降りれば、まだ大丈夫だろう。」
「ああ、それはある。」
「しかし…」
「一体、いつまで。隠せますか。」
「…………」
「 」
「仕方無かろう。もう、済んでいる事だ。今更、どうにもできない。」
「それもあるが。礼拝は?どうなりますか。」
「ああ、しかしアリスは止める事はせんだろう。」
「止めると困るのは、銀の家も同じですからな。」
「穢れを受けるものがいなくなると…」
「しかし、それはあの子が…?」
「まあ 」
「そうですな?」
「いやしかし 」
「まあまあ。それにしても。この頃、どうです?」
「いや、うちも少しずつ減ってきてはいる。」
「まあ 」「うちも」「そうですな」
「結局………」
「次は 」
「私達もそろそろ。」
「いや。まだ、保つ筈だ。」
「 …そうだな。」
「結局「あれ」は。何処へ向かって、いるのか…。」
それきり、静かになった、部屋。
俺は自分が一瞬、うたた寝でもしたのかと思い、棚からチラリと顔を出した。
が、しかし。
爺どもは。
ただ、腕組みをしてお互い顔を見合わせているだけだった。
最後に話したのは、白ローブか?
一人だけ少し、静かな顔で周りを見渡す男。
他の爺達は、苦い顔だ。
こいつらは。
デヴァイで。
贅沢三昧、それなりに生活を楽しんでいるのでは、ないのか?
少しして、その白ローブが「パン」と手を叩きそれが終わりの合図だった様だ。
爺達は皆、ノロノロと席を立ち。
この部屋には、一人だけその白ローブが何故だか残った。
「…………結局。何の為に、生きて。何の為に、デヴァイを、繋いで、行くのか。」
「全てがある様でいて、しかし感じるこの、虚しさは。なんなのか。思っていても、恐ろしくて口には出せない、問題だ……。」
「いやしかし、気が付いている者も僅か、か。」
「この歳まで、生きても。解りそうに、無いですな。ヴィルよ。」
静かな部屋の中、一人呟く声が聴こえる。
それきり。
何も話さなくなった白ローブ、俺はどうしようかと思っていたが。
寝そうになった時、丁度正面の扉が開いて光が差した。
「ああ、ここでしたか。探しましたよ。」
「今、行く。すまんな。」
そうしてゆっくりと立ち上がった、その白ローブの背後に留まって。
とりあえずはこの部屋を脱出する事が、できたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる