透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

それぞれ あること

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結果から、言えば。

石は、そこそこ出て、来たし。

謳って、スピリット達も嬉しそうだった。

しかし何故、こう歯切れが悪いのかと、言うと。


「やっぱり………難しいですかね………。」

は、やろうと思って出来ることでは無いだろう。それに、お前が「色を変える」、「純度を変える」ならば。やっている事は、ここの連中とそう変わらんという事になるな。」

「そう、ですよね…………。」

そう、謳っていて、気が付いたのだけど。

他人ひとの色を変える」「純度を上げる」と、いうことは。

簡単な事では、ないしそれに「他人を変えようと 思うな」というフリジアの言葉が胸に刺さる。

「結局、他人の事は本人に任せるしかない、って事だ。とりあえずこの石は貰っていいんだな?」

「…………はい。」
「じゃあもう部屋でゆっくりしてろ。邪魔だ。」

「ぅっ。…………はいはい、出て行きますよ。フーンだ。」

まさか、ウイントフークに慰めてもらおうと思った訳じゃ、ないけれど。

「そんなに、冷たくあしらわなくてもいいじゃん………。」

解ってた。
解ってたけどさ…。


意気消沈した祈りから、そのまま近場の扉を開けた。

丁度石も出来たし。
なんならいいアイディアを披露しようかと、書斎には始めから立ち寄るつもりだったのも、ある。

しかし、石だけ奪って体良くあしらわれた私はそのままトボトボと廊下を歩いていた。


「ま、方針的には変わってないんだし。とりあえず、祈りあるのみ、よ。」

「うん。」

何も言わずに見守っていた朝が、見兼ねたのか口を開いた。

確かに。
状況的には、何も変わっちゃいないのだ。

ただ、思い付いた案が。
速攻で、却下された、だけで。

「でも自分でも「あれ?」って思っちゃったからなぁ………まあ本部長の所為じゃないんどけどさ。」

ブツクサと言いながら、とりあえず部屋へ戻る。

今日はもう、疲れた気もするし。
今から、魔女部屋や神域へ行くのも、違う。

「うーん、やっぱりお風呂かな…。」

「いいんじゃない?じゃあ私はひと回りしてくるわ。」
「うん。いってらっしゃい。」

そうして、ピコピコと揺れる尻尾を見送りウエッジウッドブルーの扉を開けた。

夕飯前だけど。

「お風呂、入っちゃおうかな…………。」


返事は無いが、部屋の隅で寝ていたフワフワの耳がフルフルと動くのが見える。

起こしちゃ、可哀想だよね…。

そうしてそっと、着替えを用意すると。
とりあえず緑の扉を開けて、森へ滑り込んだのだ。




夕方の森はなんだか贅沢な雰囲気で、夜までの曖昧な光がいつもと違う色を魅せている。

「やっぱり、来てよかった。」

その景色を見て一つ頷くと、支度をしてシャワーを浴び、マスカットグリーンの石を選んでバスタブへ手を掛けた。


暫く深呼吸して、窓の景色を愉しむ。

夕暮れのラピスは、青はあまり見えないけれど。
ここからでも、照らされる白い塀が橙に美しく染まり変化する様は、よく見えるのだ。

緩く呼吸をしているうちに、思考がまたあっちへ滑って行くのが分かる。

まだきっと、私の中には。
ストンと落ちていないからだろう。

そうして考えるでもなく、つらつらと浮かぶままに色を彷徨わせていた。


「…………うん、なんか「入れたくない」んじゃ、なくて。「混ぜたくない」んだよ、なぁ………。」

私の「なか」にある様々な色は、今それぞれ独立して存在していると、思う。

だからこそ。
濁らないし、どの色もお互い干渉し合わず美しく輝いて。

それそのもので、在れるんだ。

きっと、混ざってしまったならば。

お互いがいいところを潰し合い、濁りが生じて。
やはり、それは人間ひとの在り方にも似ているのだろう。


「私は 排他的なのか」
「全てを 含むのか」
「正しい 間違い じゃない」
「私の神域だから 思う通りでいい」
「でも 」

沢山の思いがくるくると回る頭、しかしきっと「真ん中」はこの事を言っていたんじゃないかと。

そう、頭の中ではいつも「ジャッジ」をしがちだけれど。
「いい 悪い」じゃ、ないんだ。


漂う湯気の色を見ながら、辿り着いた「混ざる」「干渉」という結果。

確かに「純度が低い」ものは入れない、という自分のルールは。
それだけ見れば、排他的なのかも知れない。
しかしこの理由に辿り着くと、寧ろすっきりして靄が晴れる様に。

頭上の雲の色も、明るく変化してきて、いた。


キラキラを降らすマスカットの雲を見上げ、渡した銀盤の上に乗るピンクを掴んでお湯に浸ける。

星屑が溶けた、お湯の中では。
マスカットグリーンとピンクのキラキラが、それぞれ煌めき合ってとても美しい光景だ。

なんだか、お肌にも良さそうである。

「うん。やっぱり…。」

混ざり合わずにそれぞれが光る、星屑とそれを含む緩やかなお湯、二色があるからこそ深みや愉しさが出るこのお風呂の時間。

フワリと飛んできた蝶が、また色を差し夜に近づいた森を幻想的に彩っている。


きっと、まだ暗い色の蝶は幾重ものヴェールを脱いで明るい色に変化してゆくのだろう。
私は暗い色も、好きだけれど。

「蝶は………どう、なんだろうな?でも人じゃなくて多分「想い」だからかなぁ………。」

軽く明るく、薄くなって、私に溶け込む蝶達もいる。
勿論、そのまま居る子も、いるけれど。

「うーーん。その辺は流石に分かんないな………。」


流石に少し、のぼせてきたのか。

それとも私の。
脳みその、限界か。


「なにしろとりあえず。上がった方がいいのは、確か…。」

フワフワと舞う子達を「なか」に戻し、少し力が戻ったのを確認して立ち上がる。

そう、思えば。
やはり蝶達も「チカラ」であり、「色」でも「想い」でも、あって。

 うーーむ

 余計に  わからん のだよ

いや しかし

 とりあえず  着替え だ。


「ちょっと、大丈夫?誰か呼びましょうか?」

えっ 誰 を??
鏡同士しか、連絡取れないんじゃないの??

向こうで心配している声が、聞こえる。

しかし青の鏡が呼んだら、誰が来るのか想像できなくてちょっと可笑しくなってきた。
よし、とりあえずは着替えれそうよ………。


そうして青の鏡に、励まされながら。

やっとこ着替えをして、ヨチヨチと緑の扉を出たのである。



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