透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

花と謳

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真っ直ぐに、灰色の瞳を見ながら口を開く。

「私が「女性の参加」を、お願いしたのは。」

ん?

ハタと気が付いてブラッドフォードを見るが、「私の発案以外にあり得ない」事に自分で行き着いて視線を戻した。
そう、別にブラッドの所為ではないのだ。
うむ。

姿勢を正して再び口を開く。

「前回の祭祀を見て頂けたなら、納得して貰えるとは思いますが。人数は、多い方がいいんです。それに、「色」も。ここは殆ど、「同じ色」が多いかも知れないけど。」

ピクリと動いた眉毛に言葉を切るが、頷き「続ける様に」示す、アリススプリングス。

色の話が、不味いのかと思ったけど。
「そのままの私」を貫く事を思い出して再び口を開いた。

「女性に外出が許されていない事は、知っています。でも、あそこに作ったのは畑で。食事を作るのは、今は女性だろうし、いや男性も作ればいいと思いますけど…まあ、それは置いといて。」

改善したい点を挙げていくならば、きっとキリがない筈だ。
曖昧に笑っておいて、とりあえず本題に戻る。

「力の、「色」が。多い方が「豊か」なのは、分かりますよね?ええ、なんとなくでいいんです。なにしろ色数は多い方が、いい。それに。」

「私は男性の持つ色と女性の持つ色は、質が違うと思っています。多分、「同じ色でも違う」。だから、豊か?豊富?豊穣を、願うなら複雑で、濃く、濃密な方が、いい。…………分かります?この説明。」

自分で言って、首を捻った。

結局、イストリアに話す様な感じになってしまったから。
朝曰く、「依る語」なるこの言葉達について来てくれるだろうか。
この、二人は。


しかし、何故だか笑っているアリススプリングス、ブラッドフォードはそれを横目で見ながら続きを話す様に促す。

どうして笑っているのか、気にはなるけれど。
全く纏まってもない、終わってもいない話を、とりあえず続ける事にした。

「それに、きっとこれからは協力しないと。世界は、繋がらないしきっと以前の予言通りに…悪い方へ向かうんだと思います。役割がどうだとか、男だとか女だとか。そんなのは、関係無くて。何でも、どこでも、適材適所でやるべき事をやらないと、きっと駄目なんですよ。だからまずは、祭祀を、祈りを、みんなでやるし。畑も、土に触れる事で得るものはきっと沢山あるし。仕事だって、なんだって、世界間の移動でさえも。」

、繋がないときっと意味が無いんだ。また、「一部だけ」にしてしまったなら。、綻びが、出る。そう、思うんですけど…………。」


なんか。
あの人の、笑いが治らなくなってきたんですけど………???

私の目の前で爆笑しているアリススプリングスは、堪えてはいるものの、「爆笑」しているのが、分かる笑い方である。

下を向いて、肩を震わせる彼を困り顔で見ている、ブラッドフォード。
ブラッドも途中まで笑みを浮かべていたが、この人の笑いが酷くなり過ぎて笑うに笑えない状況の様だ。

とりあえず、私は。

ま、言いたい事は、言ったし………?
それにしても。

ここって、こんな花、いっぱいあったっけな…………?


そんな事を考えながら、この温室に近い部屋の中をぐるりと見渡し始めた。



この部屋はきっと、「サロン」的な場所なのだろう。

大きな窓、殆どガラス張りの一面から入る光で室内はかなり明るい。
向かい側のアリススプリングスの髪も、金髪に近く見える位だ。

そうして私の向かいに座る男達の背後を彷徨く極彩色、その周りには彩りの良い花達が所狭しと鉢を並べている。

壁近くには、大きな棚程のプランターにカラカラと花が並び下の方には水が流れているのが分かった。

「成る程…………。」

水が、流れているから。

こんなに、この場はいい「気」が満ちてるんだ。


この外の庭にも、噴水はあるが水が「流れている」かと言えばそうではない。
どちらかと言えば「循環」させているのだろう、やはり違いがあるのが分かる。

自分の神域に水を流す様にしてから、「流れるもの」「動きがあるもの」が持つチカラの凄さを知った。

自分の中に、少し暗い色がある時、訳の分からないモヤモヤがある時も。
そこに、笹舟を流す様に「思い」を流すと。

すっきり、するのだ。

まるで本当に、流れてしまったかの、様に。

だからきっと、本当に重たい「思い」は流れて何処かへ行ってしまうのだろう。
それが、「色」ならばきっと。

あの蝶達と同じ様に、結局美しく変化して私の元に戻るのだろうけど。


視線を流して行くと、少し元気の無い花達の一角がある。

チラリと向かいを見ると、笑い終わったアリススプリングスと何やら小声で話しているブラッドフォード。
話の終わらなそうな二人を見て、すっかり自由な気分の私は席を立ち、花達の所へ向かう事にした。

何故、そこの花だけ元気が無いのか気になったからだ。



「うーん、君達、どうしたのかね?………ああ、かな?」

イストリアの口調を真似ながら、花達をぐるりと見回しおかしな所がないか観察する。
大きなプランター、流れる下部の水の中に丁度詰まっていた様な石を見つけた。

取り除いて、流れる水を確認する。

「うん、多分オッケー。………やっぱり、直ぐは元気にならないかな…。」

一部だけ、クッタリとしている花達。
チラリと背後を確認し、まだ話し中の二人を見て。

ニヤリと笑った私を、極彩色が見ている事に気付く。

えっ。
駄目?

大丈夫、大丈夫。
こっそり、こっそり謳うからさ………
ポワッとした方が、いいかな?

でも、さぁ。
「謳う」方が。

なんとなく、「全部に届く」気が、しない?


きっと直接、聴こえなくとも。

この部屋にある、花達には届く気がする。

なんとなく、そんな気がして小さく口を開いた。

少し奥の壁際にいる私、銀の二人との間に極彩色がいる構図である。
不都合があるならば。

なんとか、してくれるよね………?


そんな視線を紫の瞳に送りつつ、小さく身体を揺らしながら。
既に謳い、始めていたのだ。


 「  私は  小さな 星


   みんなで  瞬き  合う   


  それぞれ   自由に 光り 合えば


    小さな  星の  光 も


        ひとつに   な る  」



   「「  わたし は


      ちいさな   ほし    」」



 「えっ」

一番が終わり、続けようかと迷った、時。

小さな声が「星の謳」を謳い始めた。

えっ

 なに?  どこ?? 誰????


咄嗟にキョロキョロと辺りを見回し、紫の瞳と目が、合って。

その動いた視線の先を追うと、揺れている花達が、いた。


  「「  みんな  で


   それぞれ  ひかり あえ ば


   ちいさな  ほし の ひかり も


        ひとつ に  なる  」」



「えっ、えっ?えーー、可愛」
「阿呆。………まあ、仕方無いか。」

極彩色の顔は見えないが、視線の先は、あの二人。

そう、バッチリ二人は、こちらを見ていて。

まんまるな瞳のブラッドフォード、アリススプリングスは驚愕の表情から。

何故だかまた、笑い始めた。


えーーーーー…………。


しかし、とりあえず私の背後から聴こえるは花達の謳、今は、もう既に。

この温室、全体の花が揺れていて誤魔化しようが無いのも、解るのだ。


え、ナニコレ、開き直って?
謳って、いいやつ???


迷いながらも、花達の少しゆっくりなリズムに揺れる身体、可愛らしい声が私の「なかみ」を「謳って」と呼んでいるのが分かる。

既に鮮やかな髪色は温室の中をぐるりとチェックし始めていて。
ブラッドフォードも同じ様に花達を観察して歩いている。

アリススプリングスだけは、花達と揺れている私を見て、まだ笑っているけれど。


ま、いっか。
お目付役が、注意しないなら。
きっと、大丈夫なんでしょ…………。

そうして可愛いらしい声の誘惑に勝てなかった、私は。

やはり、花達と共に揺れ謳う事にしたのであった。
うむ。



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