透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

星に なれ

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 『この「問題」は この世界次元では

     解決しない』


その、言葉を聞いて ショックだったけど。

でも 何故だか酷く 納得している自分が、いた。



黒く暗い、しかし半分心地良い、自分の中で。

ぐるぐるフワフワと考えていた様な、考えていない様な。

頭の重さが限界を迎えた私の「なかみ」達は、絡み合う「複雑さ」を「ポイ」しろと、全力で訴えて来ていて。

黒く深い、渦の中、その「流れ」なのか「渦」なのか。
兎に角それに身を任せたまま、ぐるぐる、ぐるぐると、ただ回っていた。




そうして「想像ブラックホール」で「複雑さ」と「面倒くささ」「私が嫌いなもの」をぶん投げてきた頭の中は、至極単純な「あるべき私の頭」に戻った様な、気がする。

「あーーーーー。」

息とも声とも付かぬ、音を出しながら書斎のソファーにそのまま寝転がった。

見つかったら「お行儀が悪い」と、叱られるかも知れないけど。

………多分、ウイントフークさんなら一瞥して終わりだな…。

そう決着を付けた私は、久しぶりのスッキリした頭を味わいながら靴も脱いで脚を投げ出していた。
本格的に、ダラダラするのだ。
うむ。


「ま、マシロに見つからなきゃ大丈夫………。」

悪い顔になっている自分を自覚しながらも、今考えると最近の自分が「底無し沼」に嵌っていた事が、はっきりと分かる。

そもそも、私の頭は。

「そういうこと」に、向いていないのだ。

そう、面倒なのとか、複雑なのとかは………あの本部長かキラキラ虫の担当なのよ…………。


私は。

とりあえず、なにか。

「美しいもの」とか「光」とか。

そんなのを、パーーーーっと。

「………やれば。いいのよ、うん。」


「て言うか。ある意味。…………複雑さあれって、上澄うわずみみたいな、ものじゃない??」

だって。

を、取っちゃえば。


 全部が  スッキリ  本当の 事実 物事

 関係  人  結果


そんなのだけが、残って。

あとはそれを「どうする」のかは。


「それぞれが。………決めれば、良くない??それを関係ない人とかが、ごちゃごちゃするから面倒くさくなるんだよ………多分。」


そう、辿り着いてみると。

確かに、千里の言っていた事がよく解る。


 デヴァイここは。

 その上澄が、多過ぎるんだ。


 誰も 彼もが  上澄それに囚われすぎて

 もう 雁字搦め に なって 抜け出せないんだ


「………で。あのお爺さんが言ってたみたく、みんなが其々もがいている、と。」

「うむ。しかし………?」

だから?

結局??

私が ここ に   いる と?


「おんなじ、ことになる、って。言ってたよね…でもそれって、始めにフリジアさんに言われた事と、近いな………??」

猫を被ろうとしていた私に「そのまま」を思い出させてくれた、フリジア。

だから、結局二人の言っていることは、同じなんだろう。


 「ここの景色に同化したければ」

 「ここの色に染まるな」


なにしろきっと。

この「深く暗い沼」から。

出て、それを外から見てみないと。

多分、解らないんだ、きっと。


「でもさ………行けば?行く、で………?なんか、「わかる」のかなぁ………。」

意外と美しい白の天井を見ながら、ポツリと呟く。

この書斎は、深い青を基調としているが白の分量も多い。
多分、それは私が「ウイントフークは白」というイメージを持っていたからだと、思うけど。

あの最初に見た「白ローブ」のイメージが抜けないんだよね………。


あの時、禁書室で出会ったイストリアとウイントフーク、なんと久しぶりの再会が「あれ」だったのが、あの二人らしいと言えば、らしい。

クスクスと思い出し笑いをしながら、ここまで来てくれている本部長の事も、思って。

 やっぱり………
 みんな…………?

 でも、な  絶対「お前は 進め」と。

 みんな、言うんだろう  きっと。


だから、ある意味。

私が進んだ方が、みんなの為にはなるんだろう。
ここで一人でワタワタして、身を晒し続けて。

長老達あの人達が、解ってくれるとは思えないし、きっと光が満ちるのには時間がかかる。

なにしろ、ずっとずっとデヴァイここにいる訳にはいかないのだし。


「うーーーん。後は。私の、「問題」と言うか、いつもの。「行きたくない病」………なの、か。うーーーん。」


それなら?
いっそ??

ある意味景気付けに、長の処へ、行っちゃう??

まあ、行くんだけどさ………。

千里があの感じだと、長の処より次の扉の方が、ハードルが高いじゃんね………。


「何をウンウン唸ってるんだ、一人で。」

「あ。お帰りなさい??」

「ああ。で?どうした?何か用事か?」

いつの間にか戻っていた本部長に、声を掛けられるまで気付かなかった。

そのまま奥へローブを掛けに行き、白衣で戻って来た彼の手には小さな袋が握られている。

「ほら。」

「ん?何ですか、これ。」

無言で差し出す手からその袋を受け取り、開けてみる。

「あ、これ………。」

「そう、この前降った「星」だ。子供達で上手い奴がいてな?一人、ひとつと決めたから回収して来たんだ。その方が、いいだろう?」

「確かに。そう、ですね………喧嘩になっちゃいけないし………いっぱいあると、どう…なるかな??ならないかな??」

「影響の程度が判らんからな。なにしろ子供には一つの方が、いい。石もあるしな。」

「そうですね。………大人は?二つ掴んだ人とか、いなかったんですか?」

「いたかも知れんが、分からん。しかし多分、無理だろうな。」

「?」

少し考えている本部長、私は結局「星が降った現場」を見ていた訳じゃない。
勿論、本部長も反対側にはいたのだけど。

多分、イストリアやレシフェから話は聞いている筈だ。

そうして視線を投げると、ぐるぐると歩き始めた白衣は、星の話と。
私がウンウンと唸っていた、「問題」の話も同時に話し始めたのだ。


「とりあえず、基本的にデヴァイここの奴らは良くて、一つしか掴んでいないだろう。何せあの光を見るのが初めての奴は。多分、反応できないだろうな………ネイアなら分からんが………一応レシフェが調べている筈だ。また、分かれば報告が来るだろう。」

「しかしとりあえず目的は果たせた。お前は俺達の事を気にせず進めばいい。………が、そうもいかないのも、解る。まあ、ここまで一緒だからな。さっさと行けとは、流石に言わん。」

腕組みをしながらぐるぐる周る、白衣を見ていると鼻が詰まってくる。

その私の様子に勘付いたのか、向かいのソファーに座り声のトーンを切り替える本部長。

改めて始まったその、話は。

煮詰まり切った私の上澄を、すっきりさせるには充分過ぎる、内容だった。


「俺はお前に。以前、頼み事をした。そう、母親の件だ。」

いきなり始まったイストリアの話に、髪を押さえて座り直す。
さっきまでゴロついていた私の格好は、お世辞にもきちんとしているとは、言い難かったからだ。

「その、頼み事に対してお前は予想以上の結果を、持ってきてくれた。改めて、礼を言う。まだ、言っていなかったからな。」

「えっ、なんか………なんですか、怖い。大丈夫、ウイントフークさん死んだりしませんよね?何??私、大丈夫??え?泣かせたいだけですか???」

「お前…………。まあ、いい。」

呆れた様子の本部長、しかしハンカチ係が不在の私は既に、袖で顔を拭いている。

「だから、という訳では無いが。もう一つ、頼み事があるんだ。」

「…………えっ。なんですか?いや、やりますけど??…………なんだろう…。」

鼻を啜りながら混乱する私の前で、少し畏まるウイントフークが、怖い。

怖いのか、なんなのか。

しかしあのガラス窓の廊下、泉の中庭の青が思い出されて少し、心が明るくなった。
多分、ウイントフークは無理難題は言わないだろう。

でも、ちょっとは。

難しい内容かも、知れないけれど。


「俺が、思うに。お前は「何かを繋いで」いると、思う。イストリアも同意だ。結局、お前が何処から来て。何処へ、向かっているのか、訊くつもりもないが。」

「多分、「次へ進む」事によって、また「動く」のだろう。この、世界も。どの、世界もだ。」

眼鏡の奥、茶の瞳は真っ直ぐ。
真剣だ。

しかし、私に「お願い」や「命令」をしている訳では、ない。

ただ、彼が。
いやきっと、が。

私に一つの、「道標」をプラスしてくれようとしているのが、解る。


「白の長老の話も、聞いた。………いや、お前、今時目耳も飛んでるし、あいつ千里もいる。分かるに決まってるだろう。まあ、それはいい。」

袖からチラリと覗いた目に、弁解をする本部長。
しかし眼鏡を少し上げると、話を続ける。

「だから全部、引っくるめて。お前は「星」に、なれ。」

「「私は 小さな星」なんだろう?何処へ行っても、その眩い色で光り。その、光が各所に届いたならば。が、「星」や「太陽」「月」の様な、「光」になって。きっと、皆の道標になるだろうよ。そう、この前謳った「一番に ひかる」って、やつだな。」

なにそれ………。

「俺らが共に行けるのは、どうしたってここまでだろう。、これから長に会い、あいつシンにも会って。仲間石達と、進むのだろう?この先、お前達がどうするのか、知る由もないが。出来る限りの、協力は、する。」

「お前が光を降ろす、その段階はもう終わりだ。お前自体が「見える」限り、彼奴は「生贄」を諦めないだろうし考えは変わらない。ここは俺達に任せて。お前はもっと上の、影響を受けない所まで、行け。多分、それが一番、いい。」

「…………影響を、受けない、ところ…?」

「そうだ。今はまだ、お前自身もこの中にずっと居たならば「染まらない」にしても「影響は受ける」だろう。どうしたって「感じて」しまうだろう?これはイストリアが言っていた事だが。同じ場所にいると、駄目なんだ。」

「………なんか、そう、かも…?」

鼻が詰まり過ぎて、あまり頭が働かないけれど。

なんとなく、言わんとしていることは、解る。

「だが、「いつ」なのか「どうする」のか、それは結局任せるからな。簡単じゃないのは、解る。俺達も手ぶらでお前を出すつもりも、無い。とりあえずは、よく考えろ。………いや、お前の場合は考えない方がいいのか………。」

「ま、なにしろ。あいつ気焔は、呼んでおいたからきちんと相談は、しろ?」

なんだか本部長に、そう言われるのはおかしな感じだけれど。

金色が唯一、話をした本部長の事を、私だって全面的に信頼している。

なんとなく、恥ずかしい感じはしたがとりあえず頷いておいた。

「なんか、ウイントフークさん、ハーシェルさんみたくなってきましたね………。」

「俺は「お父さん」では、ない。」

そう言って「シッシ」と手を動かした白衣、見ると扉の前には金色が迎えに来ていた。


本当に呼んでたんだ………。

なんで?
とりあえず、でも。

なんか、頭が  ぐる  ぐる


目が合った金色が、こちらに歩いてくるのを視界に入れると。

この頃パンク気味の頭が限界を迎え、目を閉じる。

そうして暖かい腕の感覚を知ると、そのまま安心して。
思考も、パタンと閉じたのである。

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