透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

繋がるもの

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静かな魔女部屋、規則正しく上下する、灰色の毛並み。

大分私に馴染んだバーガンディーの皮を撫で、そのしっかりとした造りを感じつつ、自分の中の色から目の前の机に視線を移す。


あれ」も。

しっかりとした、赤茶の木で紋様が彫られどっしりとした脚は美しく飾られて。
私の目を、今日も楽しませてくれている。

なにしろ、この部屋は目が喜ぶ物が、多いのだ。


そう、お腹が満たされたならば、次は着るもの、住む所、使う物など。
そうやって発展していくと共に「見えるもの」に、集中していたのかも知れない。


 美しく 「見える」もの
 美味しく 「味わえる」もの
 心地良く 「香る」もの
 気持ち良く 「触れる」感触
 美しく 「聴こえる」音 も。


デヴァイここを見ていると、やはりではあるのだろう。

沢山の「良いもの」が集められているここ、「神の一族」の住む場所デヴァイ。

繋がっていた頃は。
「搾取」ではなく、きちんと流通していたのだろうか。
その、仕事や物に対するきちんとした「対価」があったのだろうか。

でも、ラピスなんかはその中できちんと回る様には、出来ていて。
シャットも、ある意味偏ってはいるが、ある程度住む人の意向に沿っては、いると思う。

でも。

所謂、「発展する」ことと、「進化する」ことは私は違っていると思う。 


 「もの」が「豊か」になること。

 「私達」が「進化」すること。

その、違いとは。

「進化」とは「便利」になる事とは違うと思う。

便利それ」ってやっぱり、「外側」だけの、ことで。

結局、「見た目だけ」取り繕っても。

「なかみ」が伴わない、「空っぽな人間」の様なものなのだ。


いつまで行っても、どこまで行っても。

争い、奪い合い、似た様な背丈を一生懸命に伸ばして張り合う人間とは。

私達は。

子供の頃から、「変わって」いるのだろうか。


「…………結局さ。世界が、変わっても。やってる事って「同じ」なんだよね…。」

チラリと開いた青い目、すぐに閉じられたそれは気怠い声で返事をする。

「まぁね。でもさ。私が見た限りでは、「それ」にどっぷりハマって酔ってるタイプと、「抜け出そう」ともがくか、「変えたい」と思ってる依るみたいなタイプか。別れてる気は、するわね。」

「ん?どういうこと??」

「なんて言うのかしら?ほら、不幸が好きな人っているじゃない。悲劇のヒロインみたいな。そんなの、やりたくてやってる人だって多いわよ。」

「そうなの?!?」

「多分。だから、…………なんだろうな。自分だけで精一杯な人と、周りの事まで考えられる人?年齢なんかも、あるんだろうけど。でも歳取っても結局人間「核」が変わらないからね…。」

「か、核??」

私のぐるぐるに起き上がり、座り直した朝。

そうしていつになく真っ直ぐな瞳で。
私を見据え、口を開いた。


「私が思うに。その「役」をやりたくて、やって、それが終わったら「次の役」をやって。そんな事を繰り返してるんだと、思うのよね人間って。」

「それで、その段階が終わったら。次は周りの事が見える様になってきて、あれこれ始めて。「変えるため」に奔走し出す。でもさ、人間、他人ひとから言われてそう変わるもんでもない。そうして落胆して、解ってもらえたり、もらえなかったりして「いい人だったね」って言われて、死んでいく。そんな事をずっとやってるんだけど……。」

「………ど???」

言葉を切り、考え始めた青い瞳はじっと私を見つめたままだ。

この頃ずっと、考えていたこと、私の「なかみ」が見てきたこと。
それと重なる朝の話に、不思議な気分に包まれる。

まるで。

「生」を解説されている様な気分だ。


「でもさ。と、私達が来た世界と何がどう繋がっているのか分からないけど。私は、これまでも沢山の場所を渡り歩いて来たし、沢山人も見て来た。人間どこへ行ってもそう、変わりは無いしもそうかと思ってたけど。」

、「増えてる」気が、するのよね………。」

「…………。」


「なにが」とか、「増えてる??」とか気になる事は沢山あれど。
兎に角心臓がドキドキして、口をつぐんでいた。

きっとこれから、大きなヒントが齎される事が。

本能的に、分かっていたからだ。


「なんて言うのかしら、その「周り」に気付く人が増えて、しかもそれが「繋がって」きてるのよね。明らかに、。ハーシェルも言ってたじゃない?私達の世界あっちは、どうか知らないけど、多分同じ様な感じだと思う。勘だけどね。だから、多分これまでの様には、ならない。きっと、覆される。」

「だから。あんたは。もう、「あんな想い」はしなくていいし、きっと最後は。「ハッピーエンド」よ。」


 「  」

胸の真ん中に「ドスン」ときたその言葉、私はまた何も話せなくて。

それを見て何も言わない朝も、くるりとソファーに丸くなった。



シン、とする魔女部屋、一点を見つめる私の視線は灰色の毛並みに留まったままだけれど。

窓の外の鮮やかな鳥達、光を受け揺れているハーブ。
沢山の「込もるもの」達の息遣い、差し込む光の角度と影。

部屋の端には白いフワフワの寝息も、ここに来てやっと、感じられた。
どうやら私が拡がったのか。

それとも。
スッキリした気でいたけれど、まだまだ縮こまって、いたのか。



耳には「サー」と静かな音が張り、真っ白になっている頭の中。

私の「なか」に、今、あるのは。


    「もう あんな想い は


          しなくていい 」


その、朝の言葉だけで。


その言葉により自分の「なか」から湧き上がる「無念」の様な、感情、感覚。

朝はどこまで知って、そう言ったのかは分からないけど。

もしかしたら。
同じ様な人を、沢山見てきたんだろう。


「自分を犠牲に」「解って 欲しい」
「解ってもらう為に 命を絶つ」
「信じて 報われない」「抵抗する」

沢山の。

それこそ、言い表せない様なことがあったと思う。

それもきっと、必要なことだったし。

今なら。
「そうしてきたから」、私の中に沢山の「色」があるのも解るのだ。


でも、朝の言ってる事はそれに希望を齎すもので。

きっと私達は、何度も「自分の中」をぐるぐるする事を繰り返し、そうして「自分の外」が見える様に、なる。

しかし「自分の中」しか見えない人に「外を見て」、といくら言っても。

「聴こえない」んだろう。

そしてまた「聴こえない事が辛い」ぐるぐるを、繰り返して。

そうしてが。


「聴こえる」人が、増え

「気付いて」いる人が増え

「聴かせる」人も、増えて。


それが繋がってきて、「変わる」んじゃないか、って。

朝は、言ってるんだ。


「…………なに、それ。確かに「ハッピーエンド」………。」


そう簡単じゃない。

「変えたい」、じゃ駄目で、結局私がする事は「光を降らす」ことだけなのだけど。


「なん、だ、ろうな??どうして気付いている人が、増えたんだろ………??」

人間ひとは「聴こえない」なら、「変わらない」なら。

どうして?

こうして、「繋がり」始めたのだろうか。


「分かんないけど。でも、なんか。「空気」みたいなものじゃない??」

目を瞑ったままの朝から、返事が来る。

「………なんか………軽く、なってる、気はするわよ…………。」

半分、寝てるみたいだけど。

「成る、程??」

確かに。

「空気」と言われれば、なんとなく。
解らなくも、ないな??


ここ黒の廊下でも感じている「軽く」なった雰囲気、時折吹く小さな風。

ラピスでも明らかに変わったと。
ハーシェルも、言っていた。
ソフィアも、そうだ。

シャットだって、きっと風通しは良くなっているだろうし。

グロッシュラーなんて。


「畑、できちゃてるし、ね…………???」

確かに、少しずつ、少しずつ。

変化は起きて世界は軽くなっているのだろう。


だから、結局。

それを。

そうして、このまま、「繋いで」、行けば。


「うーーーーむ。やはり。、なりますか。まあ、行くけどさ、行くんだけどさ………。」

でも。

なんとなくでも。

「明るい方向」が、見えてきたならいい。

これから行く、場所がどんなに暗くても。

「私が星になる」し、きっと光を繋いで、そう「成った」ならば。


「えっ。…………なんか、エローラが言ってたみたく「花が咲き乱れ光がなんちゃら」みたいに??なっ、ちゃう???」

「ちょ、煩くて寝れないんですけど………なにそれ、気になるわ。」

「だよね………聞いてよ!エローラがさ………。」


そうして、私達二人の話は。

うん、いつもの様に脱線して行方不明になったので、ある。

うむ。

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