透明の「扉」を開けて

美黎

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9の扉 グレースクアッド

死と再生 2

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  「未だ 死に続けている 自分」


その、「私のしかばね」達を 目にして。

そんな事を考えていた。


頭が受け付けなかったのかも、知れない。

この、「沢山の」「数え切れない」「死んだ私」と融合すること。

積み上がった「想い」、それが「絶望」と「諦め」だったこと、その夥しい数のを併合して。


 「私」は  保たれる のか。


「このままの私」「今の私」で。

在れる、のか。


暫くぼんやりと、していた。



しかし、何かの拍子に。
ふと、思い付いて腕を見た。

「えっ。」

 ない

腕輪が、無い。

えっ なん で


いいや?

か。


逆にそこに、腕輪が無い事でくるくると働き始めた頭。


「何故 無いのか」

それを考えた時に。

闇の中ここ」が。

「私以外」を、入れない空間なのだと、分かる。

と、いうことは?


チラリともう一度、下がる視線「そこ」にあるのは指輪だ。

指輪これは。

「私の一部」として。

認識されているに、違いない。

確かにディディエライトは私の「なか」に、いる。
血縁でも、あるし。

ある意味指輪これは、この人の体でもあるのだろう。
あの「消えた記憶」からも、そう思う。


「ふむ。」

後は?

何か。ヒントは、ないか。


「絶望」と「諦め」が並ぶ、この暗い洞窟で。

私が。

「ひかり」を 感じられる もの


いつもの燈は胸に、ある。

しかし凡そ最後が見えない、この空間、そのずっと先まで続いている、「私の屍」の行列。

もう少し、灯りが欲しい。

贅沢を言えば「ひかり」が。


小さな、少しの「それ」が あれば。

「勇気」を出して
全ての「私」を。

拾ってゆける、気がするんだ。

この、道を、ずっとずっと。
歩き続け、加え続ける、為に。


私の「なか」に、色として加えられる、ものとは。


 なん だ  ?


ぐっと意識を集中する。
自分の「真ん中」に。


「あ。」


すると、パッと浮かんだのは、あのイストリアが持たせてくれた水色のアレだ。

「ここぞという時、開けるといい」そんな事を言っていた、薄茶の瞳。

暗い洞窟に灯った瞳の色に、胸がじんわりと熱くなる。


あれには。
何が、入っているんだろう?


ゴソゴソとポケットを探り、取り出したあの髪色の袋。
スルリと紐を解いて、なかみを開けて、見た。


「うん?なんだ、ろ?」

中はやはり、まじない袋だ。
見た感じは、何も見えない。

そっと手を入れ、中身を探る。

「ん?石?…………二つ、?」

小さな石と、大きな石か。

そう思ってそのまま手を抜く。
多分、それ以外は何も入っていない筈だ。

「私が今、必要なもの」

それを思って開けたならば、「それ」はきっと必ず、手に触れる筈だからだ。


「え。うん、ガラス………と、種?」

拡げた手のひらから、出てきたのは多分私のガラスと何かの種だ。

「えっ、綺麗、だけど………。」

でも。

私の ガラス………???

でもイストリアさんが私の「役に立つ」ものを入れたって?
言って、たよね??


「と、言うことは…。」

多分、ただのガラスじゃ、ないんだ。

そう思って、仄暗い空間だが透かして見る。


あ これ   もしか して


それに、気付いた時に。

ブワリと漏れ出した涙、温かくなる、胸の中。


ちょっとイストリアさん…………。
なんか、もう…………。


言葉が、無い。

ガラスそれ」は。

見た事のある「色」が含まれた、私の撒いた星屑で。

その「見た事のある色」は、雪の祭祀でみんなが並んだ時に、見た。

沢山のみんなの、色。

見覚えのある青、紺色、金茶や赤。
子供達、シュレジエンやラガシュ、イストリア自身の色、白い魔法使いの白灰も見える。

レナの変化した赤紫、レシフェの黒も心強い。
その、中に。
小さな、見覚えのある色がある。

まさか、この「緑」は。


ああ でも  

見た事ないけど 絶対、そう だ


「その色」から感じる波長、「それ」は私に「大丈夫」と無言で訴えかけていて。


なんで 色が  喋る
いや  喋ってる訳じゃないんだけど


 でも。 全力で。

 私に  「大丈夫」って。

伝えているのは  わかるんだ


 その「想い」が。

  痛いくらいに  刺さって 訴えて 

 私を  支えようと してくれてるのが  


         わかる。



止め処なく流れる涙を、瞬きで流しながらもう一つの種を、見る。

「大丈夫」「私は やれる」「できる」

「青い私」だし

「新しい私」でも ある

「海の 観音」だよ?


 できないこと  なんて。


   「なんにも ない」 んだよ



そうして調べ始めた、その「種」に。

おかしな所は、なんら、無い。

しかし。

イストリアが意味の無いものを寄越さない事は、重々承知だ。

きっと、なにか。

 意味は ある筈  なんだ。



そうしてじっと、眺めたその種は少し大きな種である。

見た目は全く、分からないけれど。
イストリアの店にあった、どの種とも違う。

あとは?
私の知る、「種」?


 「あ」


まさか
いや

 多分 絶対   



「えっ。じゃあ、植えなきゃ。」


そう言ってその、種をギュッと握り、一緒にガラスも握ってチカラを回す。

そう、きっと「みんなの色」は。

私の、チカラになるし。

灯った沢山の色、それを自分の周りにあの焔の様に舞わせると、ぐるりと周囲を見渡し最適な場所を探す。


地面は?
硬いかな?

でも、きっと「できる」。

だから柔らかい場所が、ある筈なんだ。
絶対。


少しずつ奥へ進みながら、足元を確認して行く。

どうせ、全部私の「なか」へ還すんだ。

それなら。
真ん中、辺りが丁度いいかなぁ…………。


てか 真ん中   どこ

 ずっと  ずーーっと  


   続いて るん ですけど ???



暫く歩くと、少し地面が柔らかくなってきた。

それでもまだ、終わりは見えない。

しかし、私には。


「これ」が、何の種だか分かった瞬間、「勝利」は確信できていたし。

「全部の私」を回収して、「新しい私」に、なって。

あの、闇の神だか、なんだかを。

見返してやろう、と。


「いけすかない」風を、扇ぎ返してやろうと、思っていたんだ。


やられたらやり返すのは、性に合わないけど。
「扇ぎ返す」くらいは、いいよね??


そんな事を考えながら、奥をしっかりと見据え、歩き続ける。


 「やられた事を やり返す」

そんな「安い」ことじゃ、まだ不十分だ。

もっと。

もっと 逆に  「与えて」。

 「これでもか」って。


 逆に 「満たして」 黒から 白に

   転換  させて  やろうじゃん



  みんな みんな  「闇」すら

   「満たして」。


  最後に。

  ドヤ顔で  微笑むわらうのは


  私だから  ね ?



いつの間にか止まっている涙、しっかりとしてきた足取り。

その、鋭敏になった感覚から地面の感触が直接伝わってくる。


「ふむ。ここでいいかな?」

蹲み込んで、少し地面を掘る。


どのくらいが適切なのか、分からないけど私は今、「海の観音」なのである。

きっと。

私が祈ったならば。


そう


 「花の種」くらい お茶の子 さいさい  な

              筈   よ



薄く土を被せて、立ち上がった。

握った手を開き、ガラスを確認してくるりと回り、周りの焔も愛でておく。

何故か金色も飛んでいるけど、私の中にあるのだからなんだろう。


うん?

あの 焔と 一緒だから こう 飛ぶのかな?


見慣れた光景、「いろ」が違うだけの焔達を眺めながらその美しさを充分取り込んでゆく。


 さて?

 準備は オッケー

 いざ 。


 謳おう か  祈ろう か

 それとも?

 なんだ  ろう 




多分、これは。

あの花の種で。

「その景色」を思い浮かべると、自然と湧いてくる「銀糸の旋律」、美しい歌声と、その色。

歌詞は分からないから、その旋律に合わせて鼻から息を出していく。

静かに、ゆっくりと滑り出した「音」は、やはり自然と「言葉」になって。


この 仄暗い洞窟を  滑って  ゆくのだ


 
 「 私は   小さな  星


   いつでも  ひとり 光る



  ずっと  ずっとひとつだった けど


   みんなが 上を 見上げて くれた から



    一緒に  なる  よ  」




「 喜ばしいこと 」

「えっ?」

フォーレストの声が聴こえた気がして、パッと耳を抑え、辺りを見回したけど。


いな い  よね ?


「あっ、えっ、綺麗 凄 」

そう、その、見渡した景色の中には。

見事な、桃色のグラデーションが加わって、いたのだ。



「えっ」「凄」「なにこれ」
「ヤバい」 「予想以上」

私の残念な感想に、ツッコミを入れる役は不在である。

ぐるぐるとその花の周りを回りながら、眺めて見るも、どこからどう、見ても。

「これって………はす、だよね………。」


植えた種は、ひとつだけ。

しかし、そのひとつが。


物凄く、巨大な「蓮の花」なのである。


「うーーむ。しかし、これは………。」

そう、その蓮は。

とてつもなく、良い香りがしてそれがまた巨大な花なものだから、周囲にずっとその香りが漂い始めたのが、分かる。

その香りは勿論、「始まりの私」があの神殿で気に入っていた「あの香り」。


そう、多分、だから。

きっと 大丈夫

 このまま  この「香り」が

  ずっと ずっと  遠くまで

 端っこの 「私」まで  届けば。


   きっと 目醒めて  還って くる



そう 私にはが わかっていた


なんでかは、知らないけれど。



 きっと この 「絶望と諦めの私」達は

 立ち上がることすらできない 私 達で。


 これまで私の夢に出てきた

 何かの拍子に 思い出せた 私達とは

 違うんだ


  動けない

  止まった まま

  死に続けている  自分


 でも。

きっと

   そんな 私 で  さえも。


  この 「繋がりの光」「似た光」

    「縁」 「あの 金色」


  「みんな」の 光と


  この 「香り」


   直接  なかへ  「奥」まで 届く


  この  二つ が   あれば。



      きっと。 「大丈夫」なんだ。




「みんなの光」、「想い」「あの金色」がハラハラと私の上に、堕ちてきて。

それが、すっかりと浸透して、私の「なか」にも堕ちてくる「想い」。


それを、私は。


 「ああ 大丈夫」

 「全部  連れて 行ける」

 「みんな 還る  私の なか に」



そう すっかり解って。


ただ、その場に座り、「香り」が隅々まで届くまで。

その桃色の、美しい姿を眺めて いたのだった。




 





 














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