透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再

芸術家

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 「時間」 「空間」

 「点」  「線」   「奥行き」

   「かたち」  「素材」

 「質感」   「組み合わせ」   
                 「相性」

 「経年劣化」      
            「付着する 想い」
 「時の刻む 重み」

       「蓄積」

        「空気が侵す 物質の 色の変化」

     「経験」   


沢山の「見えないもの」、それを加味し、時に無意識に計算して「もの作品」を創ること。

人によって、時代によっては本当に「計算」しているのだろうけど
私から言わせて貰えば、「芸術家」達はみんな「枠の外」だ。

きっと、彼らも。

私と同じ様に、自分だけの「なかみ」「世界」を持っているに、違いない。


ある意味「数学者」も芸術家の仲間なのだろう。

多分、現す手段が「絵」なのか「数字」なのか、「音楽」なのか。
はたまた「建築」か。

その「違い」だけの、筈なのだ。


 「歌う」のか 「奏でる」のか 「数える」のか
 そんな様な 違い


きっと、頭の中を「かたち」にする、「もの」にすることは。

やはり「空間把握」や自分の中の「次元の活用」の一種なのだと、思う。

だから、「学者」だとか「先生」だとか肩書は関係無くて。
その人本来が持つ「色」を、余す事なく発揮し「活用」できていれば。

自ずと、「自分のかたち」は拓くのだろう。



「だからさぁ、私が算数苦手でも、いいわけよ。得意な事はみんな違うし、そんな時のベイルートさんな、訳で。」

「ヨルはやりたくないだけだろう。」

「いや、でもそれ正解ですよね??やりたい人、得意な人がやればいいし??私がやって間違ってたら、事件が起きるかも知れない…………そもそも小難しい本を読まなくても、とりあえずそこから感じる色とか波長とかで分かると思うんですよ。その内容に、意味があるかどうかは。あ、でもそれ「私にとって」ですけどね…。」

「なあに、ブツブツ言ってんの、この子は。」

「どうやらコーネルピンに会いたいらしいぞ?」

「ああなるほどね。…………でも。まあ、ねえ?」

チラリと青い視線が極彩色へ飛んだのが、分かる。


部屋の隅、珍しく私達の話を黙って聞いているあの狐は何をしているのだろうか。

欠伸をしたり、くるりと丸くなってみたり。
暇そうなのだけど、出て行く素振りは見せない。
まあ、別に居てもいなくとも、私の考える事などお見通しなのだろうけど。


「うーーーん。でもさ…。」

多分、「ああいう類い」の人は「次元」を超越しているから。
きっと私の姿にも、そう違和感を抱かないと思うのだ。

だって、あの時だって「普段は姿なのですな」とか、言ってたし?
まあ、持論だけど。


「まあ、ヨルの言いたい事も解るけどな。ああいう手合いは、あまり理に関心が無い。思うに、俺は。ヨルの使う「まじない」と俺達の認識している「まじない」は違うものだと思うんだがな?」

「えっ?「ことわり」?まじないの種類??」

「そうだ。俺が「こう」だから、感じるのかも知れんが。俺達の使うまじないは、所謂体系化されたまじないだ。石をエネルギーとして使う、まあまじない道具みたいなものだな。使い方だって、お前さんの様に自由ではないしそうやって使うなんて、考えた事も無い奴の方が多い。だから、石が無いとまじないを使えなかったりする。しかし、ヨルの場合は何と言うか………。」

思わず、唾を飲み込む。
ベイルートが恐ろしい話をするとは思っていないが、なんだか心臓がドキドキしてきたからだ。

「自分のエネルギー、なんだよな。多分「思考」にも、近い。多分もう、石が無くとも力を使えるだろう?………うん?試した事はないのか?しかし可能だろうな。」

「初めからヨルの事は不思議な子だと思っていたが。………まあ、なんだ?今はこうなった事が、当然の様に思えるからな。「自身の力を自由に使い 創造する」なんて、まるで自分じゃ気付いてないが、「神」の様だろう?」

「  え。」

「だって、だとしても不思議じゃない。俺達からしてみれば、お前の曾祖父はここでは「神」と崇められていた金の家の長だ。その「代わり」にしようとされていたお前が、神だとしても。皆なんら、おかしいとは思わないだろうな。うん?隠れる必要、無いんじゃないか?」

勝手に話を纏め、くるくるとテーブルの上を回り出した玉虫色の光。


ボーっとする、頭。

 玉虫色が 撒いた カケラ 光の種が
  私の目の前を キラキラと転がり 
            かたちを 成してゆく

その、キラキラと変化する色をじっと眺めていると。
次第に私の頭も、くるくると働き始めた。



 「神」「まじない」「チカラ」

   「自由」  「縛り」  「固定観念」

 「想像力」   「創造性」  


    ある様でいて ない様な ルール


それは あるの?

 「神」?
しかし神ならば確かに、ルールに縛られず自由に創造する事は可能だろう。

「創造主」と 言うだけに。


そして 「理」。

あの、星占いの件でイストリアと話した時にも出てきた言葉だ。

それは「ルール」か「統計」か
 それとも私達の「常識」か「固定観念」か。

人によって「理」の イメージは違うと思うけれど
所謂辞書的な「答え」が 欲しい訳じゃないんだ。

そう
私の「こたえ」それは なんだ ろうか。


まじないの、理。

「………それは魔法か魔術か、私の適当か数学か、みたいな話に似てるよね………?」

「似てないわよ。」

「あれ?口に出てた??」

「まあ、言いたい事は解るけどね。」
「でしょ??」

「ベイルートさんだって、石が無くても計算は得意だろうし、コーネルピンも絵が上手い。必要なのは計算式じゃなくて、その人自身の「チカラ」って事だよね?」

「まあ、そうなんでしょうね。でもそれを上手く発揮するのが難しいんじゃない?」

「………だよね…………。」

「成る程。確かにそれはあるだろうな。ヨルの言っていた「かたち」、あれはヨルの計算の実力じゃ到底出て来ない図形なんだ。そもそも「知識」として頭に無いだろう?しかし、頭じゃ理解していなくとも「知っている」んだろうな。」

「………うん?まあ、そうですね………。」

結局私はなんにも変わってなくて、「阿呆」のままで、できないことも沢山あるし、苦手なこともある。
でも、そういうことじゃ、ないのだ。

「勉強」は関係無いし「解ってない」訳じゃ、ないのよ、うん。


「「知識」と「智慧」の違いだろうな。まあ、頭でっかちの長老共には解らんと思うが。」

「「知識」と「智慧」か…成る程。とりあえず、図書館にでも行こうかなぁ………なんか、ヒントがあるかも?」

「それならいいんじゃない?こっそり行ってきたら?」
「そうだね………?」

とりあえずコーネルピンの件は保留にするとして、本部長に確認するまでは図書館で楽しもうかな…?

「フフフ」
「なぁに、怖いわね。ついて行った方がいいんじゃないの、これ。」

「えっ、一人でいいよ!」
「まあ、気が向いたらな。」
「なによそれ。」

慌てて朝の提案に手を振るが、極彩色は微妙な返事だ。
しかし、私は図書館は一人でゆっくり楽しみたい派である。

「本当に、大丈夫だからね?」

とりあえず丁重にお断りして、午後から出掛ける計画を練ることにした。




白い床、白い壁、白い扉のシンプルだが美しい造り、静かにピンと張った、空気の中で。

つらつらと歩く 私が探すは
興味のある、もの、こと、美しいもの 魂が 喜ぶ もの。


「これなんか、良さそう………?」

読めない文字が多い、奥の区画。

開いて見ないと分からない本が沢山並ぶ禁書室の奥は、一人で散策するには丁度良い場所でもある。

しかし、何故だか「ラギシーを使う」と言ったのにピタリと付いてきた極彩色は、入り口を入るとすぐに丸くなっていた。
「番犬」よろしく、「番狐」の千里はどうやら扉の前で見張り兼昼寝をするらしい。
あの人に昼寝が必要なのかは、分からないけど。

 まあ、いいんだけどね………。


ここなら基本的には、人に会わない筈だ。

ウキウキとステップを踏みながら奥へと進み、「それっぽい」本を探し始める「新しい目」。
勿論読めないものが多いがしかし、装丁からして「わかる」その雰囲気。

そう「同じ系統」「好み」の人が創ったであろう本は、なんとなくその「色」を発し私を呼んでいる様な気がするのだ。

でも、多分なんだろうけど。

久しぶりの図書館に足取りは軽く、ここ禁書室だと言うのも相まって、私の「なかみ」はフワフワと舞い上がっている。


「ふんふ~ん♪」

ん? あれ?

そう、既に鼻歌を歌いながら腰を屈め、怪しい格好でカニ歩きをしていた。
しかしその、目の端にチラリと動くものが映り、顔を上げるとどうやら、あれは人だ。

それもきっと、あの人は………。


 コーネルピンさんだよ ね ?
 え でも どうだろうか
てか なんで ???

 ああ 銀の家だと 入れるからか。
でも 声 掛けると。

 怒られちゃう?かな??


くるくると回る頭の中、しかし私の「なか」は心地の良い色にカチリと嵌る。

 でも さあ ここまで来て 「会った」ならば。

「話しかけていい」って こと じゃない???

私の「なか」ではそう結論付いたけれど、きっと始めに気付いていたであろう極彩色の色は見えない。

それならば。
多分、話し掛けても 大丈夫って ことだよね?


頭の中でもう一度「話し掛ける」を、反芻する。
けれども気配を感じないあの色は、とりあえず咎める気は無いのだろう。

「それならば。いざ、行かん。」

とりあえず本棚の影に一旦隠れ、自分の姿が見えるか慶に確認し、出来るだけ「普通っぽく」とビクスにお願いする。

そうして身支度をして、チラリと覗くと。

 いるいる やっぱり コーネルピン さんよ


「フフフ」

「ん?………おや?」

いかん。
どうやら怪しげな笑い声が聞こえてしまった様だ。

これは姿を現さねばなるまい。


そうして私は「すんなりと」、彼の前に姿を現して。

案の定「普通に」、受け入れられたのである。

うん、予想通り。
ただ「彼の普通」では、あったけれど。






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