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8の扉 デヴァイ 再
音程 音階 調和
しおりを挟む「…………ん みんな、おはよう………。」
ゆっくりと目を開け、星空の天蓋を目に、映す。
心地の良いフォーレストの寝息が部屋の隅にあって、お腹の辺りにウンがいる。
今日は薄い青紫の蝶が二匹、仲良く天蓋の下で遊んでいて。
「有難いなぁ………。」
目が覚めて「幸せ」が映ること
温かなベッドが心地良いこと
フワフワがあること
誰かの寝息が聴こえること
見えなくとも「みんな いる」感覚
毎日が 美しいこと。
あの人が、いなくなってからウンがいつも一緒に寝る様になった。
極彩色は何故だか、この頃来ない。
なにか、あるのだろうか。
なんか 言ってから行ったのかな
寂しくはないが、いつ帰って来るのか、それは少し気になる。
なんとなく、だけど。
心の準備が必要だからだ。
「なんだろうか、なんっか………。」
あの時、シンがああ言ったから「次 会った時」絶対に狼狽える自信があるのだ。
「いやいや、私、大人になったから。うん。」
なんとなくポッポとしてきた頬を押さえ、「さあ起きよう」と視点を戻す。
「新しい いろ」 「調和」
「あれ?綺麗………。」
ふっと齎された優しい水色と白の蝶、「調和」という言葉。
空と 雲 みたい
起き上がろうとしていた身体を止めて、じっと見つめる小さな空。
さっきの二匹に加わって、楽しそうに舞う空の色だ。
「あっ?」
えっ?
しかし、急にその水色と白の蝶が「ユラリ」と揺らぎ、「融合して」。
二匹が、一匹の少し大きな蝶に、変化したのだ。
え なに 綺麗だけど
なん で ???
いや? てか 普通に今までも あった のかも???
ある意味蝶達は私の「なか」に在る時、こうして「全部が一つ」になっているのだろう。
「融ける」様に揺らいで、「合わさった」二つ、そこから生まれた蝶は空の中に浮かぶ雲を表す様に美しい紋様で、少し大きく変化している。
その、違和感の無い「調和」、相性はあれど「どの色とも合わされる」「親和性」「全ては一つ」「なかに ある」ということ。
自分の中にある蝶だから、それがよく
解る。
「ふぅむ…………「調和」ね。」
ベースが 同じ だからなのか
それとも そういう「性質」か
「うーん。」
なにしろそろそろ支度をしよう。
私はシリーに起こしてもらわねばならない、子供ではないのだ。
うむ。
無意識に一番に目に付いた、空色の着替えを選んで、そのままボーッと緑の扉を開ける。
そうして朝の支度をしつつも。
また私は自分の「性質」を 掘り下げ始めたのである。
青のホールでまた、回ろうかと思っていたけれど
私がボーッとしているのは未だベッドの上だ。
いや、支度をして朝食へ行こうとチラリと部屋を確認した時「あれ」に気が付いた。
先日、新たに手にしたカードの箱である。
お気に入り棚でこれ見よがしに光って見せたそれは、「引いてみて」と言っている様で
とりあえず手に取りベッドへ座った。
しかし。
その箱を手に取り腰掛けた時点で、私の中に浮かんできた「調和」
それはやはりカードの齎す「いろ」でもあって。
箱の大きさ
文字の色
サラリとした質感
淡い色の組み合わせ
その、「絶妙なバランス」少し違えばこうはならない、というセンスと私の「なか」に響く「色」。
「好きな色」なのは勿論だけれど、その組み合わせと色の量のバランス、カードの質感、厚みと程良い箱の大きさ。
多分 これ 「私に似てる」から 「好き」なんだ
そう、気付いて。
はた、と思い付くと 勝手にカケラ達が舞い始めた。
これまでずっと思っていた「漏らしている」「溢している」「自分のチカラが 流れてゆく」
そう、思っていたけれど。
それはある意味「正解」でもあるが
「正確」ではなく また違った側面が、見えたんだ。
そう 多分 きっと
私が 取っているのは 「場の 調和」で。
「外」へ出ると 「調和」が
乱れているから 疲れるし
「調和」を取ろうとして 自動的に疲れるのだ。
誰も頼んでない
勝手にやっている
そう なんだけど。
「多分、勝手にそうなる、んだよね………なんなんだろうな、これ………。」
しかし、フワリと現れた炎の鳥が最も簡単にその「こたえ」を齎す。
さも「当然」だと、言う様に。
「それは チカラは高くから低きへ 流れるからだ」
「それ即ち 自然の摂理 その 輪を どう 廻してゆくのか それは自分で 考えるのだな」
「えっ?」
そういうこと???
でも、確かに そう 言われれば。
「存在」「振動」「光」「純度」
「白 黒」「侵食」 「空」 「満」
光の質が、違う。
多分それもあるとは思うけど。
でも 「空いているところを 埋める為 チカラが動く」
「暗い色が侵食する」「水は低い方に流れる」
自然界ではよく見る現象、それは確かに「自然の摂理」であって。
「いい、悪い」でもなく「そういうこと」なのだ。
「成る程……………えっ、それで?私が勝手に「空いたコップに注いじゃう」、って事だよね??」
「まあ そうなる な」
「うん、………成る程?まあ、いいのか??………私がちゃんとチャージすれば………??うん?」
その後?
どう する か どうしていく か ??
本来ならば、「みんな」「満ち溢れれば」問題など起こらぬし、それが一番いい。
私が求める「みんながそれぞれの色で光り輝く」というのは、そういう事でもある筈だ。
「まあ、それをやっていく、って事なんだよね、うん。どうやるのか、それが問題なだけで。え、なんだろ、この振り出し感。」
そしてなんだか、含みのある黎の言葉。
まあ、でも。
とりあえず自分の「いろ」「性質」が解るのは、いい事でもある。
そうしてまた、新しい色を増やして、鮮やかになって。
沢山の色を、含みたいのだ。
「ふぅん?成る程、調和ね、調和………確かに?そうだわ………。」
「調律」「バランス」「合わせる」
「適材適所」「どの 色も 音も」
それはいつでも私がやっていた、事でもある。
「一人一人の 色」「音」それはやはり
違って、特異で、面白くて。
色んな世界で「役に立たない」と切り捨てられる、人、もの、色々な事。
でも、それひとつひとつは独自の色と音を持ち、「あるべき場所」へ誘えたなら。
やはり「その色にしか 出せない音」で、光り輝くんだ。
「うーーーむ。なんか、とりあえずデヴァイの人事権でも握るかな…。その上で私が「外に」?出られる様に?いや?出なくて、出ない方が?いいのか???」
「なぁに、怪しい事言ってんのよ。」
「あ。いや、やっぱり適材適所かな、って思ってさ。あるじゃん、私の世界でも。「使える」「使えない」って。私、あれ凄い嫌。私達は「もの」じゃないし。いや、そんな事言ってる奴が「もの」以下だわ。「もの」に失礼。」
「珍しく怒ってるわね…。」
「いや、怒ってないよ………多分。」
「なにそれ。」
きっと朝食へ呼びに来たのだろう。
呆れた様に尻尾を揺らす朝に、誤魔化しの微笑みを向けポスンと寝転ぶベッドの、上。
朝はシーツに広げられた新しいカードを興味深そうに嗅いで確かめている。
「なんか、匂う?」
クスクスと笑いながらそう問い掛けると、意外な答えが返ってきた。
「そうね。」
「えっ?」
「あの男でしょ、これは。それにいい感じにアンタの匂い、あとは…………なんだろうな、これは。」
再びカードに鼻を付け始めた様子を見ながら、受け取った時の事を思い返す。
先日、いきなり私に「暇だろう?」と本部長が寄越したそれは、コーネルピンが創ったカードだ。
だからかな…?
見た目も、手触りも、申し分ない出来のそのカードはある意味「私好みの匂い」は、しそうである。
「でも。込もってる「なにか」の、匂いなのかもね?」
「まあ、それはあるかもだけど。珍しいじゃない、お腹空いてないの?」
「あ。」
タイミングよく鳴った音に、苦笑いしてカードを集める。
キラキラと散った私のカケラを集める様に、くるくると纏めて、しっかりと箱に仕舞った。
「ウイントフークさん、コーネルピンさんに会ったのかな?」
「訊いてみれば?」
「まあ、そうだね、うん。でも食堂にはもういないだろうな………。」
「まぁね。珍しくあんたがのんびりしてるからでしょ。」
「はぁい。じゃ、行こっ。」
ん?
振り向くと朝の姿は既に無く、猫用扉が揺れているのみである。
「おいてかなくてもいいじゃん………。」
そうしてそっと、カードをお気に入り棚に戻すと。
お小言を言われない、ギリギリの速さで食堂に向かい歩いて行ったのである。
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