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8の扉 デヴァイ 再
レナから見た 私の変化
しおりを挟む「なんか、さあ。」
「うん?」
暫く黙っていたレナが、徐ろに口を開いた。
それは、なんだか含みのある色の声だ。
「ヨル、少し変わった、よね?」
「うんん??そう?」
「まあ。そう、変わったと言えば変わったんだけど、なんて言うか………。その変化とは、また違った「なにか」があるのよね………。」
そう言って立ち止まり、まじまじと私を観察し始めた茶色い瞳。
くりくりとよく動くその美しい輝きを眺めながら、「レナもまた美人になったな?」なんて。
私はのんびり、考えていたのだけど。
「ふぅん?あれから進展は、無いのよね?」
「し 進展?」
「………ふぅん?そうじゃない、とすれば。なんだろうな………?」
ぐるぐると動き回りながら私を観察するレナ、しかし私達はまだ歩いている途中だ。
「ねぇ、とりあえず着いてからにしようよ。」
「まあ、そうね。」
そうしてそのまま、誘われる様に。
崩れた回廊、太陽の踊り場、オルガンの部屋をチラリと見、奥の礼拝堂へズンズンと進むレナの青い髪を追う。
小部屋の方が 話し易く ない?
そんな私の思惑など知らぬレナは、キョロキョロと塵の溜まる広い場を見渡し左の方へ進んで行った。
どうやら、あの階段を登る事にしたらしい。
そのまま小さなレナの足跡を追い、私も天窓の下へ向かった。
なんだかこの場へ来るのは、久しぶりの様な気もする。
多分 きっと そう大して時間は
経っていないのだろうけど。
「さて、と。」
ぐるりと丸い半円状の手摺に凭れ、こちらへ向き直った瞳は再び観察を始めた様だ。
私は、あのハキの出てきた鏡面の文字を眺めながらチラチラとレナも見つつ、ぐるぐると回っていた。
そういや トリル は この文字
訳した かな?
今度 イストリアさんに 訊いてみよう
そんな、全く関係ない事を考えている私の元に、話の続きがやってきた。
「なーんか。「加わった」のよね。「足された」?多分ね、前は無かった「色」「色気」、みたいなものが。あるのよね………。」
「えっ」
「でもさ。それも、ただの色気じゃなくて、なんて言うか………こう………いや、「加わった」んじゃなくて「見える様になった」のか、なあ…。」
うん?
そう言ってまだ首を捻っているレナ、その審美眼は中々の鋭さだ。
これは「女の勘」というやつ、だろうか。
「所謂分かりやすく「安い色気」じゃなくて、なんて言うか「全部」「許してくれる」系の………でも母親じゃないんだよね………言葉にするのは難しいんだけど、なんだろうな………??でも。前は、無かったのは確か。可愛かったけどね、前も。」
「えっ。今は、可愛くないの?」
その言葉につい、ツッコんでしまうけれど。
「まあ。………ねぇ、うん。大丈夫よ、それ以外の魅力があるから。」
「えーーー。」
「でもさ………まあ、今でもそうなんだけど。これがもうちょっと進化したら「アレ」になる………わね?………ああ、でもそういうことなの、か………。」
「ん???」
同じ様に首を傾げる私に見向きもせず、下を向いて考え込んでいる。
青く、長いウェーブが。
くるくるとカーブする手摺の装飾と相まって、その美しい曲線に見惚れて、いた。
レナも 大人っぽく なっ た?
どうなんだろうな でも きっと
私には 予想も付かない 苦労を して
沢山の準備もして 根回しもして 姉さん達と協力して。
ここまでずっと やってきたんだもんな…
「やっぱり………レナは、凄いよね。」
「ん?…………ああ、なに?どうしたの?」
それはこっちのセリフ、とも思ったけれど。
とりあえず胸にフワリと浮かんでいた、暖かい言葉を口に出してみる。
「いや、色々あったけど。やっぱり、レナだから出来たんだろうし、レシフェもそうだけど。「行動する」って、凄いよね。誰も何も、やらない中なら、余計に。」
「…………うん。なんか。ありがとう。…………いや?あのさ。」
「ん?」
「あの、ね。とりあえず流して、聞いて欲しいんだけど。ただ、私が言いたいだけだから。」
「うん?うん。」
珍しく言い淀むレナ、しかし「あの時のあの場所」の、話と。
同じ様な雰囲気に、じっと黙って隣に沿った。
ヒヤリとする手摺は冷たかったけれど、隣の熱い茶の瞳にはそんな色が微塵も感じられなくて。
なにしろ大事な話なのだろうと、頷いてその言葉を待つ。
きっと、私の為にレナが言ってくれる言葉だと、知っているからだ。
「あの、さ。ヨルは。多分、長の血縁で、うちとも少し関係があって、なんか細かい所は分かんないけど。でも、確かに。私達の「基盤」なのは、解るの。あの、重く取らないでね?解ると思うけど。」
「わかってる」という、頷きで返し続きを待つ。
「多分ね。多分、だけど。きっとあんたが今、ぐるぐるしてる事ってきっと「これからどうするか」みたいな事だと、思うんだけど。「それ」は、また私達に預けて、いいの。貴石と同じ。こっちはこっちで、ちゃんとやるから。………ああ、分かってる、解って言ってるのよ。あんたが私達の事を頼りないと思ってる訳でもないし、私達が頼りたくないと思ってる………のはあるか。いや、じゃなくて。」
「「次」に、進むんでしょう?また。それも、解るから。私達があんたの足を引っ張る訳にはいかないでしょうが。あんたはみんなの、「星」よ。星でありきっと、「基盤」でもある。この間も言ったけど。ヨルがブレれば、みんなブレるの。あんたは「そっち側」で、安定してなきゃ駄目なのよ。それは、解るよね?」
「うん、ならいいわ。でさ。」
まだ あるの??
既に涙が出ている私を苦笑している茶の瞳、ハンカチを差し出す手に「金色から 役目が変わった」と思う、私の側面。
そう 確かに。
「感動して涙する 私」「それを外から見る 私」
今の 私には 沢山の 側面があっ て
レナが 言っているのは そういうこと
「加わった」「見えなかったものが 見えるように」
「表に出てきた」
きっと そんな 感じ。
それはきっと 慶の 光にも、似て。
沢山の 顔も持つ 千手観音
「幼い」顔もあれば 蘭のような「色気」もあって
きっと 「怒り」や「慈しみ」 なんかも ある。
沢山の顔が加わった私のことを。
レナはきっと、本能的に感じているのだろう。
「それでね?でも、あんたの事だからまた「置いていけない」とか、思ってウロウロぐるぐる、してるんだろうけど。でも多分、もう無理なのよ。あの絵の事もそう、「そのこと」も、そう。多分ね、越えれば。また、変わるのよ。なにがどうなるのかは、分かんないけど多分ヨルの中で踏ん切りがつくんじゃないかな。」
「だからある意味、やっぱり「あんた達」はこの世界の軸で。閉じ込めなきゃいけない訳でもなく、無理矢理やらせるものでもなく、「どうしても光って人を惹きつける 光」なんだと思う。長がどんな人だか、知らないけど。そういう面も、あったんじゃないかしら…。」
「ああ、だからその辺りはいいのよ。あんたが目の前?この世界?から、いなくなったとしても「星」が消える訳じゃないし「光」だって消えないで、「ある」。それを私達はみんなに知らせる為に頑張るし、私達だって光る。そういうこと、でしょう?」
私の顔を読んで返事をし、話を纏めドヤ顔をしているレナ。
背後からは薄い光が差し、空色に透ける髪の流れとフワリとしたスカートの艶。
あの生地はエローラの生地だ。
懐かしくなって顔を上げ、その立ち姿全体を、目に映す。
ああ やっぱり。
「美しい な 」
既に私の正面に仁王立ちをして、腕組みをして上を向いている、姿が。
美しくって、綺麗過ぎて。
「ポーズはアレだけど…………ぅぅ、っ。泣ける。」
「何言ってんのよ。まだ、話は終わってないわよ。て言うか、本題に入ってないわ。」
ガラリと変わった声に、私も釣られて我に返る。
「…………。」
「なぁに?………でも、聞くわよね?するわよね?その話。」
「…………はい。お願いします、 」
既にシオシオしている私を、逃す気はないらしい瞳が爛々と燃えている。
さっき、いい話をしてくれていた時よりも。
輝いて見えるのは、気の所為だろうか。
そうして私達は、やっとこさ本題の「その話」へと
突入する事になったので、ある。
☆
☆R18部分は別掲載します
内容は続きですが、きっと語句など引っかかると思うので。
宜しければそちらもどうぞ。
こちらで更新の無い日はそっちを更新しています。
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