965 / 2,079
5の扉 再びのラピス 森へ
君が星なんだ
しおりを挟むガラスの向こうにサワサワと 揺れる枝葉
棚に並ぶ 沢山の話石 お気に入りの茶器達。
懐かしい木々が見える窓
しかし 私の記憶よりも格段に伸びているそれは
やはり、私に「時間の経過」を知らせてきていて。
「実際 どのくらい経っているのか」
じっとフワフワの伸びた髪を見ながら、考えていた。
10cm くらい 伸びてる? から
えっ 二年?
そんな 経つ??
いや でも グロッシュラーで 季節が巡って
ん? シャットでは 半年?どうだった??
やっぱり「季節」が無いとサイクルが
分かんない な
いや 季節的なものは あったけど。
なんか。 「実感」が 無いんだよね…
「うーーーん。ティラナが今、9歳だとして………いや、10歳はないよ、ないない。」
「えっ、お姉ちゃん私今10歳だよ?」
「 えっ」
じ じ? じゅ っ ? さい????
思わず細い、肩を掴む。
「えっ、てか、と、いう事は??あれから??三年???経ってるの?????」
「君がどこからどう、跳んでるのかは分からないけど、ここでの時間は三年だ。」
「えっ。」
私達が先に移動した、居間に入ってきたハーシェル
落ち着いたのかその手にはティーセットと湯気の立つポットが 見える。
久しぶりの部屋を堪能していた私に、長椅子に座る様 手で示すと
彼はそれまであった大きな出来事と、私の移動に関しての彼の考えを話し始めた。
「どうぞ。ああ、その「時間」の話だけど。」
私の好きなカップを覚えていてくれて、それを出されたものだから私の視線はそれに釘付けである。
苦笑しながらも綺麗な色のハーブティーを注ぎ、勧めてくれるハーシェルは少し首を捻りながらも彼なりの時系列を説明してくれる。
「君が移動している、「扉」の時間がズレるのだと思うんだ。それぞれの扉は少しずつ、そもそもが違っていてそれは「時間」なのか「流れの速さ」なのかは判らないけれど。僕もラピスに来た当初は、意味が分からなかったけど、なにかはきっとズレているんだ。それは間違いない。」
「 えっ」
やっ ぱり?
「多分だけどね。だから君がシャット、グロッシュラーと。二つも移動し、その後デヴァイまで行った。この前帰ってきた時から、また一年程経っている筈だ。その 」
「えっ?!一年??!」
「そうだ。」
言葉を遮った私の勢いに、笑いながら再びカップを示す緑の瞳。
私も、自分を落ち着ける為に。
そっとお気に入りのその花柄を両手に包み込んだ。
「それが扉を渡る間の事なのか、それとも時間のスピードなのか、人によっても違うのか。検証しないと解らないけど、君の時間が遅い理由は、なんとなくだけど察しが付く。」
「えっ。」
「「遅い」というか、「早い」のかな?他の人が経験している時間より、君の時間は経っていない筈だ。きっと視野が広い、から。人より吸収する量が時間の割に多いのじゃないかな?それで学びが早いんだ。普通の14なら、もっと時間がかかる筈だ。ん?いや、ヨルも15になったかい?まさか………」
えっ
その 「まさか」って。
なんです かね ???
「いや、ここでは大概、16には結婚相手が決まるからね。ほら、祭りで。見ただろう?」
私のおかしな表情を見て、そう答えるハーシェル。
確かに。
冬の祭り も 春の祭りも。
「結婚相手」、そんなこと 言ってた な??
「まあ、ヨルはあまりそこら辺は関係ないだろうけど。」
チラリと隣を見るのは 止めて欲しい。
「それで話を、戻すけれど。」
「えっ、はい。はあ 」
てか 何の話 してたっけ?
きっと まるっと顔に出ているだろう私を見ながらしかし、いつもならば笑う緑の瞳が笑っていない。
どう したのだろうか。
なにか 問題 が?
あったの かな ??
しかし、そんな事をぐるぐると考えながら膝に視線を落としていた、私に。
「鳩が豆鉄砲を食ったような」顔をさせる、話が始まったのだ。
「女神をやって欲しいんだ。」
「え っ ?」
「女神」 を やる ???
「そう、君が「丁度よく」帰ってきてくれた、なんて。言ったけれど。」
「 はい。」
「今、ラピスは迷走状態だ。でも、君が「見える」事によって、きっと良い変化が、ある。そう思うんだよ、僕は。」
「お姉ちゃん………。」
ティラナの心配そうな瞳が 見えた。
ハーシェルは、そこで言葉を切り私の反応と その隣を。
じっと見ながら、「私達がどんな色を示すのか」待っている。
えっ
ハーシェルさん が 「女神」を ?
「やって 欲しい」???
凡そ、彼の性格から 考えて。
私の「負担」になる様な事を 言うとは思えない。
それか、そこまで切羽詰まった 状況なのか
それとも それが「彼的な最善」なのか。
そもそも「女神で イケるじゃん」と
思っていたのは 私だ。
「半分冗談」「半分本気」の。
その 「森滞在計画」 が しかし。
「ハーシェルから 言われてやる」と 言うのは
私からしてみれば「別枠」だ。
その 意図が読めなくて。
とりあえずもう一度緑の瞳を見て、確認する。
「め、神 ですか。」
「うん。まあ、君程の適任はいないからね。それも、あるけれど。」
「?」
「きっと君がここへ戻ってきた事の、「理由」?いや、なんと言うか。「ため」に、なると思うんだ、両方にとってね。君が、「そう振る舞う」事によって。」
ああ そうか。
その緑の瞳の「意図」が はっきりとわかる。
彼は 私を「女神」に「名実共に する」「したい」
そういう事なのだろう。
そうしてそれが、私のステップアップの為にも、なる と。
その、真っ直ぐに向けられた緑の澄んだ色から。
それが 私に直接伝わって くる。
「それが 僕は 一番いいと思う」
その ハーシェルの本心が。
「ヨル、君は「私なんかが」って、言うかもしれないけれど。間違いなく、ここでは君が星なんだ。だから僕は今、君が帰ってきたと思っているし、また新しい風と光を運んで来てくれたんだと。思っている。いや、重荷に感じて欲しくは、ないんだ。」
揺れる 緑の中の 光
しかしその色は、しっかりと揺らがぬ色を 示していて。
彼の言いたい事が よく 解るんだ。
ハーシェルさんは 私に「背負わす」人じゃない
なんなら 「荷物を持ってくれる」人
背中を押して くれる人
だから。
余計に、感じるんだ。
それが「本当」だって。
彼の「真ん中」 「本心」 だって。
いつだって私の味方 ここでの父
なんなら 「嫌なら投げ出したっていい」と
言ってくれる この人が。
「こう 言うんだ」。
「君がまだ、そう素直に思えないのも、解る。しかし、「そうでありたい」とは、思っているだろう?言われなかったかい、誰かに。」
はい。
無言で頷く 私の瞳
顔は動かしていないがきっと「わかった」ハーシェルはクシャリとした笑みを浮かべ こう言った。
「だから。いいんだ、君の、思う様に。光って。そのままで。ただ、「そうある」だけ、「そうなっていい」んだよ。そうでなければ、僕らが、困る。星は、どうしたって星なのだから。」
「いくら僕らが「星だ、女神だ」と言っても、君自身が認めないと駄目なんだ。君が「そうある」から、「そうなる」んだ。それが、当たり前だから。事は、種を蒔けば芽が出る様に至極単純だ。」
「 はい。」
ハーシェルの言葉が ジワリジワリと胸に沁み込んでくる。
この 人に この色に 言われるから
沁みる この暖かさ 温もり 温度
ただただ私を「思う」 気持ちの心地良さ。
その中で くるくると回り始めるカケラ
イストリアか それか白か。
誰かにも 言われた「私が上を見る」
「上で 在る」「そうである」こと。
まず 「私がなる」から、みんなも「なる」こと。
誰も 「なっていない」「光っていない」ならば。
「先頭で光る」のは 私である ということ。
くるくるとスピードを上げ回り 光り始めた「いろ」は
どれも「私」を示す 分かり易い、「いろ」達で。
「自分が 何者なのかを知る」「なにであるか」
それを知るのは難しくもあるけれど それと同時に
既に「知っている」ことでも あるんだ。
どう 見るか どこから 見るか
それは きっと「視点」の違い
「角度」の違い
「応用力」「根気」と「勇気」の 問題
その「自分のカタチ」をどこまで 鮮明に見るのか
見ようと 「目を凝らせる」のか。
それは
単純な様で難しく 同時展開せねば ならないから。
やはりカケラを「無限」へ 放り投げて
遊ばせておくのが 最適なのだと思う。
私にとっては そう。
そうして自分の「なか」にある その空間を
じっと感じながら。
また 改めて 「増えた緑」を見つめ
美しく煌めき回る 光達を 沁み込ませていたんだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます
天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。
王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。
影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。
私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる