透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再々

逃げと選択

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 「うわさの星」

そんな 不思議な名が 
聞こえてきたのは 暫くしてからのこと
私がここデヴァイに滞在して あちこち見たりして。
少し落ち着いてからだった。


ここのところ
 金の蜜を創ったり
 森のお風呂を堪能したり
 空間の中を光で探ってみたり
 天井裏を歩いてみたり。

色んな事をしながら、自分の振る舞い、考え方
見るもの食べるもの
呼吸からして 体に取り入れるすべてを吟味し
そうして
 そこから派生する 思い 考え 思考
  アイディア 
   ぐるぐるさせる カケラの 色 まで。

それを「そう在りたいもの光の女神」へ 近付けるべく日々、過ごしながらも
気になることがあった。

 時折、みんなの会話から漏れてくる素敵なワード
 「うわさの星」
それが気になってイストリアに訊いたのは
ある日の朝食時だったんだ。


「て言うか、最近よく聞く「うわさの星」って、何か知ってますか?なんか素敵アイテム?それともまさか、星屑が見える様になって光っちゃってるとか ??」

私がパンを千切りながらもワクワクして質問すると、イストリアはなんだかウケている。

「ヨル、それは残念ながら。そういう星じゃ、ないんだ。」

「えっ」

「これはここに伝わる言い伝えみたいなものなんだけど。四日だったかな?七日だったかな?その、「うわさの星」が流れるとみんなが頻りにしていた噂が流れてしまうんだ。ほら、この閉鎖空間だろう?噂が浸透するのは、早い。そして普通は根強いものなんだ。」

「はい。 」

「でもね、その「うわさの星」が流れると。その噂は何処かへ行ってしまって、落ち着くんだ。みんなの話題に上らなくなる。何故かは、分からないけどね。でも、なぁ。」

「 むん?」

いい話になってきた所で、首を傾げたイストリア
水色髪がサラリと流れる。

しかし、表情は暗くない。

ゴクリとパンを飲み込んで、お茶を一口飲み
そのまま思案している薄茶の瞳を 見ていた。

 なんだか その 雰囲気が。

 キラリとした 星を持って来そうだったからだ。


「やはり。でも。そうなのかな。」

「 ??」

くるりと回って、楽しそうに私を見る薄茶。
その 中にはキラキラした好奇心の色が、見える。

「あのね、その「うわさの星」は。滅多に、流れないんだ。本来ならば。」

「あ 」

「そうなんだ。以前はある意味伝説、までは行かなくとも言い伝え程度だった。誰かが真摯に祈れば。流れるとか、なんとかそんな感じだ。しかしね、今は。なかなかどうして結構、流れるらしい。「見えない」のだけどね。夢で流れるんだ。」

「えっ 夢で ??」

「そう。そこも不思議なのだけど。以前はだから、祈った誰かの夢に流れて、そこから噂が減少し始めると思われていた。しかし、最近色んな人の夢に出るらしいんだ。だからかな、噂が消えるのも、早い。」

「 へぇ ほう ?」

「君、流してないよね?」

「えっ ??  どう かな??」

悪戯っぽくそう尋ねるイストリアはしかし
私なのだと。
確信しているのだろう。


 私は
 でも なにか 意識的に 
  わけじゃ ないんだけど 。


「うーん。でも、光を流す、って言うか。チカラを流してデヴァイ全体を探検するって言うか。なんか、やってない訳でも ないんですけど。」

「それだね。」

「でも確かに。あの、祈りの場を繋ぐ光は。強くなった気は します。」

「フフ、まあ悪い事など何も無いよ。しかし伝説を蘇らせるとは、恐れ入ったな。」

「いや、どうなんだろうか でも。ありがとうございます。」

「いいや。お礼ならばこちらがいくら言っても言い足りないよ。」

そう、以前は遠慮 謙遜していた事も、最近は素直に受け取る様にしている。

 きっと 私が そう すれば。

 それが「実現する」、それもわかってきたからだ。


 「女神」が 「女神」らしくあること

 「そうで在り」「そう 存在して」

 それを続けて行くことで 強く しっかりとした
 「シンボルになる」。

それはやはり神社に行って手を合わせるのが好きな私が、自分で実感している部分だ。

 「神が そう 在り 」

 「祈りが 浄められ 高まる」。

全てに関して それを行い
「生き方」を光に変えて行くこと
「祈り」そのもので あること
「女神」になっていく ということ。


「なにしろまだまだ、始まったばかり。」

「フフ、また何が起こるか楽しみだね。」

「えっ そうですか?」

「そうだね?しかし君から発生し、起こる事ならば。なにしろなにも、心配無いよ。」

「 あ りがとうございます。」

そう 言ってもらえることの 有り難さ
信頼の瞳と色
暖かな空気。

「うん、頑張らないけど 頑張ります。」

「そうだね、程々ゆっくり、君のやりたい事を。やる、それでいいんだ。」

「はい。」


そうしてゆっくりと流れた朝食の時間
日々の素敵な時間に 改めて有り難さを思う。

 ああ やっぱり ここはいいな

しみじみと噛み締めていると、ふと緑と赤のカケラが私の周りを回り始めた。

「あ。」

そうだ。

「! いけない。」

「ああ、今日はお客さんが来るのだろう?」

「そうなんですよ、すっかり忘れてた!ご馳走様!」

「やっておきますよ。」
「ありがとう!」

ニコニコしながら出てきたマシロにトレーを頼み、イストリアに手を振って食堂を出る。

 そう 今日はあの二人が来るんだった。

「身支度?お茶の支度?いや、そう焦らなくとも まだ イケる 筈。」

パタパタと青縞の廊下を歩きながら、そう思い立ち記憶を手繰り寄せる。

 うーん 確か

  水の時間か なんか どうだったっけ な?

そもそもの「今の時間」が、曖昧だ。

 ま、とりあえず 鏡に訊こう うん
 まだ 大丈夫な 筈。

緑の部屋にある鏡は、大概何処の家の鏡とも知り合いなのである。

 この間 ふと思い付いて
 訊いてみると「そうだ」と言って。

しかしなんだか反則な気がして鏡に色々訊く事は無いのだけれど、「あの二人が家を出たか」位は聞いてもいいだろう。

「よし。」

そうやる事を決めた足は、焦りを排し 緩やかにスムーズなステップを踏みながらウェッジウッドブルーの扉を開ける。

 ふむ。

そうして可愛いらしい部屋の奥、とりあえず緑の扉へ。

向かってスキップを始めたので ある。


 




「ねえ、ヨルはどう思う?」

そう言って相談を持ちかけてきたのはパミールだ。


いつもの魔女部屋での 私達のお茶会
支度は結局余裕で間に合い、特にお茶以外は用意するもののない私は 久しぶりに魔女部屋の探索をしながら二人の事を のんびりと待っていた。


あれから時々遊びに来てくれる二人は、各家それぞれの改革に本格的に乗り出している様だ。

 しかし やはり 長老達との摩擦
 変わりたくない人々
 動きたいけど 動けない者
 
様々な事が絡み合う、ここデヴァイで最近特に「問題」とされているのが。

「出て来れないみたいなの。周りも結局、始めは気を遣ってそっとしておいてるんだけど、やっぱりこのままじゃ良くないとか、困るとか、怠けてるとか。色々言い始めて。」

「そうなの。結局、どっちの気持ちも分かるし、どっちの為にもならないのかなって思って。迷ってるのよ。」

「でも無理矢理引っ張り出すのだけは、やりたくないし。」

「うん、でもあそこではやったらしいわよ?でもその後が…。」
「ああ。、そうだったんだ。」
「うん。」

その、二人の口ぶりとフワリと浮いた 「色」で。

 その 人が 亡くなってしまったのが わかった。


「 そうか。」

ポツリと呟いた私の一言に、ピタリと止む会話
二人の視線は私に向いてはいないけれど。

 きっと 何かヒントを くれる

そう思っているのは、わかる。


「まあ、そうだよね 。」

どの、気持ちも 光も、色も わかる。

「うーーーーーーーん。」

しかし。

チラリと確認した二人の様子、変わらず気を遣って視線を向けていないパミールとガリア。

 とりあえずは潜っても 大丈夫だろう。
 そう 判断して。

私は再び「スポン」と、自分の中へと
 潜って行ったのだ。



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