透明の「扉」を開けて

美黎

文字の大きさ
1,075 / 2,079
8の扉 デヴァイ 再々

寄り道 レナの店へ

しおりを挟む

ふと 思い付いて。
 顔を上げ、薄茶の瞳に問い掛けてみた。

「イストリアさんが子供達に教える時、気を付けてる事って何ですか?」

「うーん。そうだねぇ。まあ、当たり前のことばかりで、君なら大概細かい所は大丈夫だろうけど。しかし、なにしろあれかな。「こちらが良かれと思ってやる事は大概お節介」という事かな?知っているだろうがあそこの子達は、個性派揃いだ。ここの様な温室育ちと違って、クセが強い。」

 思わず初めの頃を思い出して 大きく頷く。

「しかしこちらは、相手の事をやるだろう?それは、いいんだ。それ自体は。だがそこできちんと相手の意向を確認して「NO」と言われたら潔く引く事かな。どうしたって私達大人は、自分が正しいと思いがちだ。だが、その子が自分よりも秀でている所が無いなど見た目では分からないからね。本当は物凄い才能が隠れている、そうかも知れない。解るね?」

「成る程です!ありがとうございます。」

思わず自分がやりそうな、事である。

流石のアドバイスを しっかりと胸に刻んでカケラに 投げる。

 そう 私は 「新しい目」で あの子達を 見る。


そんな私を 微笑んで見つめるイストリア

そうして最後に出て来たアドバイスは、これまでの私に太鼓判を押してくれる とても素敵な色だったんだ。

「これまで君がやってきた事を、振り返って。全てのタイミング、その時考えた最善、それはやはりのだと。解っているだろう?だからそれでいいんだ。なにしろ自分を信じて、やる事だね。それなら万事、上手くいくだろう。」

「 ありがとうございます 。」

なんだか 言葉が ない。

 ジワリと沁み込む いろ
   これまでの 自分の道 行動

  それを見ていてくれた人が いること。


ゆっくり、深く息を吐いて 呼吸を整えると。

くるりと視点を切り替えて、今日の予定を考え始めた。




 きっとイストリアが言うのは
  「可能性を潰さない」という事
流石である。

今朝のそんなやりとりを思い出しながらテクテクと歩く 灰色の道
造船所までの道中。

そのアドバイスを復習しながら、思い出すのは「可能性の扉」だ。

「うん、やっぱり。そう だよね。」

 さっき 神殿で 舞った時も

   思ったけれど

  いつでもどこでも  そうなのだけど 。


やはり、大事なのは「伸び伸びと」「小さな宇宙の拡大」。

 思い切り 自分を出せる こと
 羽を伸ばしてチャレンジできる こと。

手を広げ、くるりと回りながら「可能性のカケラ」を想像し、自分の中を満たしておく。

「うん。」

そうして。

 フラフラと 歩く 灰色の道

 少しだけ覗く 茶色の土 変化のカケラ

それを見てふと、思い付いたのは。

「うーん。でも、見えるし 寄っていこう。」

 約束は してないけど。

でも なんとなく「今は 空いてる」気はする。

そう、私の視界に入ったのは レナの店
きっとあそこなら。

この頃のグロッシュラーの様子が よく分かるに違いない。
造船所も、行く事を知らせている訳ではないし
寄り道しても大丈夫な筈である。

 ただし 話が 長くなり過ぎなければ だけど。


「うん。 まあ、その時は その時で。」

そうしてぴょんと、石畳を逸れると。

 ふむ  やはり  地面が
 うん。

ジワリと沁みる 感触 
 変化を確かめたい 好奇心
  新しい色が ありそうな予感 
 ムクムクと湧き上がる ワクワク 。


その 湧いてきた色を引っ提げ、先ずは優しい色のレナの店に 視線を定めて。

自分の中の変化を感じながら ゆっくりと歩き始めた。




 ん?  
     あれ?

 ここ 外観って こんなんだった っけ ??


段々と近くなる店の外観を眺めながら
「どこが変わったのか」、私の中身はくるくると忙しく「レナの店 外観」を検索していた。

「 うーーーん??」

ピタリと手前で立ち止まり、腕組みをしてその白く暖かく、しかし洗練された癒しの雰囲気を 確かめる。

 
  白い 壁  土の雰囲気 
 柱はそのままを生かした 木
 しかしスッキリと削られたそれは くっきり直線で白壁を区切り
 この店が「清潔」「清廉」な事を 示している。

「ふむ。」

少しだけ伸びた蔦が、いい感じに屋根から下がり これがぐっと這い出したらさぞ素敵だろうと 謳いたくなったがとりあえず口を噤んだ。

なんだか レナに。
 叱られそうな 予感がしたからだ。


 なんだ ろう  なんか。

 「大人っぽく」? 「洗練された」??

 機械的でなく しかし「均一に」塗られた 壁
 はっきりと「清廉」を示す 「白」
  同じ「白」でも沢山の色があるが 
  この「脇が甘くない色」を出せる人など
  そういない。


 凡そ 移動前まではこの世界になかったこの雰囲気
 どちらかと言えば 私の世界の「現代的」な
 スッキリ感。

「 あー。でも。」

あの二人だからか。

 そう 多分 この「色」は。
 レシフェのまじないが入っている筈だ。

 この コントラストが 上手い感じ
 角のキッパリとした 切り返し
 「潔さ」と「完全」の同居
それを「完成させる」事で 張られている結界の様な 空気。


凡そ「決められない人が多い」、この世界で。

 この 洗練された空気を出せる人は
  殆ど いないんだ。


多分、「覚悟」の無い人はこの店に入ろうと思えない筈だ。

 「癒し」とは。
 自分の中身が ドロドロと出てくるものでも 
 あるからで ある。


「はぁ~。 なるほど ? この、角とか? このきちっと ピッと なんか そう ね??いいなー。」

その時 カチリと音がして。

「………やっぱりね。」

呆れた目をした、久しぶりのレナに迎え入れられたんだ。





「 はぁ~ 前来た時も思ったけど、私、好み。それになんか、またもっと落ち着いた?いや、上がった のか。」

「うん?」

「いや、なんかね。 なんて言っていいのか。なんかほら、ラピスはまだいい方なんだけど、デヴァイは。「女の子とは」「女性らしく」「女子とはこうあるもの」、みたいな服とかインテリアなんだよ 。あ、ガリアの事思い出しちゃダメだよ。あれは、特別。」

 なんか ウケてるけど。
 だってそうなんだから、仕方が無い。

「でも、それはあるでしょうね?だって殆ど決められてるんでしょう?まあ、明確じゃないにしても、母親からずっとそうして育てられてきてるから。まあ、そうなるわよね。私は最近、やっぱりイストリアの畑とか、自分達の畑もやってるし。」

「 だよね。うん、わかる。土は いい。」

一人しみじみと頷き始めた私を他所に、お茶の支度をしてくれているレナ
青い髪が艶やかに揺れる後ろ姿はとても魅力的である。

 最近 どうなの かな 
  ねえ レシフェと 

 でも このまじないは 絶対レシフェだし
 ふむ? やはり 二人は  ふむ ??


「て、言うか。近況を聞きに来たんじゃ、ないの?」

「あ 。 そう、だね? 」

「なに、それ。」

フフフと笑いながら、示してくれた椅子に腰掛ける。

そう、これもシンプルでいい椅子だ。
程良いクッション、デザインも勿論スッキリしているが、どちらかと言えば座り心地を重視しているのだろう。
 誰か シャットにでも 頼んだのかな?

そんな事をつらつらと考えていると、ティーカップがカチリと目の前に置かれる。

そうして まだ、問いを発していない私に 的確な話題の提供が始まったのだ。


「とりあえずは。そう大きな変わりは無いんだけど、一人出禁になった奴がいるわ。」

「えっ ?貴石、だよね ??」

「そうよ。フフ、まさかうちじゃないわ。」

「ああ、そうだよね。びっくりした。」

やはり「レナ一人じゃ」「レシフェも在住した方が」「でも私が口出しするのもな」と。

私がごちゃごちゃ考え始めた所で 話は続いていく。

「これまでだったら。勿論、なんでもなく処理されていた所よ。でも、なんか、あのアリスなんとか?と、レシフェが繋がってから。多分その伝手なんだろうけど、止められたのが一人。でもまだ、一人だけどね。とりあえず一番酷いのは、大丈夫になったのかな?その後は詳しく聞いてないけど…。」

「 そうなんだ。」

 アリスが。

 レシフェと。

 
なんだか意外な気もしなくないが、レシフェはああ見えて多分デヴァイを仕切ろうと思えば仕切れる筈だ。
 ずっと前に 本部長が言っていたか
 フローレスだったろうか。

 「他に類を見ない 黒の石」を持つ レシフェ
 実力もチカラも 頭脳も ついでに優しさも。
 私は もう 知っているんだ。
 
くるくると回り始めた「黒のカケラ」、ついでに「黒いシン」も回り初め 話が逸れそうになるのをくるりと修正する。


「なんか。 いいライバル?に、なればいいね?」

「えっ?そんな感じなの?」

「いや、分かんないけど。なんとなくね フフフ 」
「なんかあんたがそう言うと、怖いわね………。」

そうしてレナに 疑いの目を向けられながらも。
とりあえず続きを促し、お茶を コクリと飲んだ。


「そうねぇ…。後は、畑に来れる人が…まあ、少しずつだけど増えて来てるのかな?実際数えた訳じゃ無いけど、多分、そう。それでね、この間!やっとうちにデヴァイからお客さんが、初めて、来てくれたと思ったら。」

「えっ 」

「なんと、ヨルの知り合いじゃない。しかも、完全に。トリルみたいな。私が求めてるのは、そうじゃないのよ、じゃ………」


 えっ  レナ  さん ???

「ガチャリ」とカップを置きながら ツッコミを入れ話を聞くと、どうやらお客様はメルリナイトだ。
しかも全く癒しが必要なくて、店を楽しむだけ楽しんで帰ったらしい。


「フフフ 。良かったじゃない?でも、宣伝はしてくれそうだな 。」

「まぁね。広めたい、とは言ってたわよ?向こうでも色々試してるみたいね、彼女は。」

「 そう、確かに。」

そうなんだ。
あの 二人は。

 あの暗い空間に 光を撒こうと 繋ごうと
 これまでにも小さな魔法を沢山 仕掛けてきているんだ。

 確かにそれが、発芽してきて 「今がある」のは
 間違いない。


「うんうん。そうだよね 。」

「そうね。でも、その位かな?向こうの事はよく分からないけど、こっちは順調だと思う。やっぱり畑?緑があると、全然違うわね。ヨルが「森、森」って言ってたの、やっと解ったわ。」

「 ああ。そうだよね 。」

そこで一旦 途切れた話

目の前でしみじみとそう言う、茶色の瞳がキラリと 。

 あの 懐かしの色を映したんだ。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

笑う令嬢は毒の杯を傾ける

無色
恋愛
 その笑顔は、甘い毒の味がした。  父親に虐げられ、義妹によって婚約者を奪われた令嬢は復讐のために毒を喰む。

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます

天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。 王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。 影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。 私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

処理中です...