透明の「扉」を開けて

美黎

文字の大きさ
1,177 / 2,079
8の扉 デヴァイ 再々

思ってたんと 違う

しおりを挟む

「そう、そうなのよ。だから、私の考えなんて。ちっぽけで、簡単な思い込みだったって。気付いたのよね、そこで。」

「やっぱシャルムは凄いな。」
「えっ、そんな所あった?」

「エローラ、それは酷いよ。 フフ、まあ最初は全然 気にしてなかったもんね?なんかね、穏やかだけど、解ってるよ シャルムは。なんて言っていいのか、わかんないけど。、エローラを好きになったと思うし。」

「えっ。あっ、そうね?」

珍しく照れた顔の 優しい灰色の瞳を見ながら、ついニヤニヤしてしまう自分の顔を ヒョイと戻す。


今日は とても久しぶりに。

ラピスの街へ降り、エローラの店を訪ねて いる。


この間「何をも受け入れる」「想定外など無い」、そのカケラが降って来てから。

「それもそうかも?」と 思い
自分の中で少しだけ引っ掛かりがあった「世界への訪問」をやってみようと思った次第だ。

 が しかし。

訪問する場所が エローラの店だと。
世界引っ掛かり」か どうか
それは怪しいところでも あるけれど。


「確かに自分でも「何に引っ掛かってたんだろう」「大した事なかった」って。思う事って あるよね。うん。」

これは自分に対して言っている事でもあるが、今のエローラの話題に関しても そう言える事である。

「そうなのよね。私の場合なんか、原因がそもそも分からないし。小さい頃から、あの店の素材は良くないって、なんだか思い込んでたんだけど。」

「うーん、でも その直感自体は間違いなかったと思うよ?子供ってその辺鋭いし、何か「そう思う原因」がないと そうは思わない訳じゃん。きっかけ?って言うのかな。でも、それがいつの間にか変化してて 改善されてたのかも。」

「ああ、それはあるわね。」

「まあ、だから結局。って ことだ。」

「まあね。…………ヨルは、特にそうかもね。」

「え? そう??」

「そうよ。あの時さ、シン先生と気焔の事で悩んでた時だってさ…………」

「ちょ、止めて!  なんか、懐かしいけど 。」

 おかしい のか
 恥ずかしい のか

笑いながらエローラの口を塞いで、お皿の上のクッキーを放り込む。


「ん~、ムグ、えっとね。」

「フフフ なに?」


「私達は、合わせるし、合わせられるし、変化するものだけど、決まってる人はそれはそれでいいのよ。ほら、相手好みの服に合わせる子もいるじゃない?」

「ああ、そうだね?」

「でもヨルはそうじゃ、ない。それはそれで、いいけど答えは一つしかないから。うーん、だからそれを見つけられる人はそうなってる、のかな?何言ってるのか分からなくなってきたわ。」

「いや、言ってる事は わかる。」

きっと、エローラの言いたい事は
 「私には決まっている相手が いた」という事だけれど
 「まだ 選びたい遊びたい人もいる」
 そういう事だろう。


ゆっくりと頷きながら、ティーカップを手に取り
少し冷めたお茶を流して 喉を潤して。

 なんだか まったりとした 
  この店の空気を緩りと味わいながら
   お替わりを淹れようとしているエローラの前に
 ズズイとカップを 押す。
 

「でもさ、それに。それって、人に対しても言えるけど。素材に関しても同じじゃない?その方が、分かり易いかも。」

「あー!確かにそれは。 そうだね?」

それは確かにそうだ。

 「素材」 その自分の得意になると
      分かり易い。

 
 どの 場面で どの素材を選ぶのか
 何に使う為に 何色を選んで

 どれに効くのか 映えるのか
 何に合うのか。

確かに 私達は日々「選んで」「合うものを使って」いるんだ。


「 ふむ。」

「だからその、石の話もそうだけど。なに、その「粒子」?ヨルの場合は見ている場所がそこで、なにか形とか見た目じゃ、なくて。その、「粒子のコーディネート」をしてるって事でしょう?」

「上手いこと言うね、流石 エローラさま。」

「なにそれ。止めてよ。でも、確かに思うんだけど。」

「うん、なに?」

「ほら、沢山お客様が来るじゃない?その中でも、「自分の似合うものを知っている人」と「わかってない人」が、来るわけ。だから、私としては自分が思う「その人が一番魅力的に見える服」を選ぶんだけど、それを勧めて「いい」って買ってくれる人もいれば、「私には似合わない」って。止める人も、勿論いる。どちらが良いとか、そんな話じゃないんだけど。………なんか、言いたい事解るよね?」

「 あ~。うん。 わかる。」

確かに。

エローラによると、以前比べて格段とラピスも変わってきているらしい。

 だが しかし。

「変わっている人」「変わっていない人」「変わりたくない人」、それはやはり様々で
色んな場所でそれは 起こって いて。


「 ふぅむ。だがしかし。なにしろ、エローラがいてくれてラピスは良かったって事だよ。」

「えっ。なぁに、それは。」

少し照れた様子で そう聞き返す灰色の瞳は
いつでも私を受け入れてくれる、「相手をわかろうとする いろ」だ。

「いや。なんか。初めから、エローラはけど。 ちゃんと、その人のありのままを、見れるんだよ。ほら、年が幾つだからとか、髪の色がどうだとか、なんか 見た目とか関係なしに、多分きっと 「エローラ探知機」みたいなので、見てるの。多分エローラの場合は服に偏ってるんだと思うんだけど、あ、因みに私は満遍なく偏ってるから。 ああ、それはいいとして。 うむ。」

「なんかね、それで ちゃんとその人の本質に合ったものを、勧めてるんだよ。でも、その人の思い込みが強かったり、自分のことを客観的に見れてないと。 それは、分からないから無難に なる。そういう事だわね?」

「そうかも知れないわね?」

二人で、首を傾げながら。

相槌を打って クスリと笑う。


「なんか、ヨルにそう解説してもらうと。「そうだな」、って感じがするわ。確かに私も「絶対こっちのが似合うのに」とは、思うけど、それはそれで「今は着れないだけ」なのよね。いつ、変わるのかはその人の自由だし。」

「そうそう。こっちから開けようとしても。開かないしね。」

「あー、そう言えばグロッシュラーでヨルが開けた?扉の話?聞いたわ。それと同じよね。「可能性の扉」だっけ?」

「え あ うん、そうだね?  なんか、懐かしいな  。」

「早いわよね………。そう思えば。」

「うん。 」

 あ そうか 。
 こっちとは。

   時間の流れが 少し 違ったんだ
   そう 言えば。


くるくると変わる、大人びた表情を眺めながら
初めの頃のエローラを思い
しかし変わっていない瞳の色に クスリと微笑むと
矢印の矛先が私の方に 来た。

「まあ。ヨルも。、なったわよね。フッ。」

  えっ

    なに  その「フッ」って 。


は、完璧な女の子なんだけどねぇ。これでラピス生まれだったら………でも、つまらないわね、それじゃ。やっぱりヨルは、ヨルじゃなきゃ。」

「うん ??」

「まあ、ほら。「女の子だから」って、あるじゃない、どうしても。うちはおばあちゃんがだから、私も好き勝手にやらせて貰ってるけど、やっぱりそうじゃないもの。まだ、大抵の家はね。もう少し、時間はかかるわ。」

「  うん。そうだね。」

その エローラの瞳に。

 なんとも言えない、色を見て しかし
 それが「暗くない」ことも同時に見て取った私の中身は
 くるくると「久しぶりのカケラ」を回し始めて いる。



 「女としての 私」

   「光の成分」

 「肉体のかたち」「持っている パーツ」

 「その時持って生まれた もの」。



「私、そう 言われてみれば。あんまり、自分が「女の子」だって。 ちゃんと、認識してなかったかも 知れない。」

「ああ、なんかそれは解るわ。」

「 う、うん。」

速攻同意されてしまったが、それもどうだろうか。

「でもね、ある程度大きくなってきてから。「女って損じゃん」って、思った事はあって。でも、ここラピスとかよりは全然、自由? いや、どうだろう なんかとりあえず種類が違うアレだけど、マシではあるかな?? えっと、何が言いたかったのかって 言うと。」

 して 本当に なにが ?

 言いたかったので あろうか 。


「「女は損だ」って、思ってたけど、そうじゃなかった? いや、今でもそう状況は変わってないっちゃ ないんだけど。「今」、「そうで良かった」とは。思うんだ、なんだか。」

「うん。でもそれは、彼と会えたからじゃない?」

「  ぇ」

思わぬ返答が来た。

 え   いま

   そんな話 だった ?

  いや  そんな話 だった か ???


「きっとそうね………ヨルは、彼に会う為に旅に来たのかも知れないわね。会う?って言うと、ずっと一緒だからおかしな感じだけど。旅してきたのよ。そう、「恋はいつも突然やってくる」ものだから。」

「 あ  うん。」

 そうだった エローラには。

 「そんな話」とか「どんな話」とか

 関係ないんだった 。


「あ~、そう考えるといいわ。腕が鳴るわね。フフ、ヨルの結婚式のドレスは  」

「あ、うん。」

とりあえず、ピンクの世界に旅立ったエローラの事は そっとしておこう。


 なにしろ 私は 久しぶりに回った
 「女というもの」、そのカケラに感じた色が
 気になっていて。

  「今の視点」で それを 見てみること

それが必要なのではないかと心に留めて おいたんだ。


「そう。それは後で ゆっくり? いや、とりあえずこれは 面白い いや、楽しい?嬉しい色だし ??」

そう カケラを精査するのも 大切だけれど
目の前の色を 楽しみ味わうのも、私の大切な仕事である。

そうして 勿論。

 エローラの楽しそうな様子を放置しつつ
 そのまま堪能したのは
 言うまでもないので あった。

うむ。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

笑う令嬢は毒の杯を傾ける

無色
恋愛
 その笑顔は、甘い毒の味がした。  父親に虐げられ、義妹によって婚約者を奪われた令嬢は復讐のために毒を喰む。

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます

天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。 王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。 影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。 私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

【書籍化決定】アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

処理中です...