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二章 ハーレムルート
アレッサンドロ ギノフォード
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私は侯爵家の次男であり未だに結婚していない。
次期当主である兄が既に公爵令息と結婚し子供もいる。
なので私が焦ることはないし、教師としての職に就いてはいるもののいつでも魔法省に勤めることが出来るので高位貴族と結婚し婿に入らなければならない等という下らない事は考えていない。
父と兄が魔法省に勤め役人というのもあるが、私自身魔法に特化していたので魔法省の方から常に声が掛かっている。
自慢ではないが、私は魔法に関しては幼い頃より優秀であった。
家庭教師の真似をすれば大抵の事はすんなりと出来てしまい、出来ない苦しみを知ることはなかった。
難しいと感じたとしても、数度試せば出来てしまった。
その為、私は努力とは無縁だった。
没頭するほど何かに打ち込みたい。
出来ない者が必死に訓練するように、私も魔法に熱中したかった。
私には理解できなかった、魔法が出来ない者・魔力の無い者の気持ちが。
必死に魔力と向き合い学ぼうとする者が羨ましかった。
自分では理解できないと判断したので、教師という道を選んでみた。
ABクラスの者は努力すれば手に入れられる者ばかりで、私と似た人間だと言えた。
Cクラスの者が私の理想的な人間といえる。
程よく魔力があり上を目指そうとする姿勢、見ていて気持ちがいい。
DEFクラスに関しては魔力が上がることがないよう訓練すらしない者や魔法に興味がないもので、私を不愉快にする人間達で溢れていた。
子孫を残すことは大事ではあるが、だからと言って魔法を学ばないという姿勢は見ていて目に余る。
それでいて、私を婚約者にと望む愚者もいた。
魔法を軽視する者達の中にいるくらいなら教職でなく魔法省に勤めた方が有意義だと頭では理解している。
理解しているのに何故か止められずにいる。
まるで運命を待っているかのように教師を続けた。
変わらない日々を過ごしている中、ある者達の入学で学園は大騒ぎとなり私の仕事を悩ませるものとなった。
魔法関連であればやる気も出るのだが…たかがペア決めでつべこべ言われたくない。
私にとっては、ただの苦情処理に過ぎなかった。
切っ掛けは王子の入学であった。
王子が入学すれば、ペア決めは混乱すると予想していたが、予想以上に私への疲労があった。
貴族達…主に宿す側抱かれる側が盛り上がりペアの用紙には王子の名前が書かれることが多くなった…というよりほぼ全ての貴族が王子を指名している。
私としては問題が起きないよう、当たり障りのない「無害」そうな貴族を割り当ててみたが、ペアになった途端豹変し王子が拒否していることが分かった。
最低限の回数が決まっているものの王子は「公務」という技を使い午後の授業を早退したり、騎士に「火急の件で王宮にお戻りください。」と一芝居打つこともあった。
王子のペアで悩んでいれば、今度は珍しい光属性が現れた。
魔力検査でたった一人、光属性の反応が出た者がいた。
今の学園には光属性は彼しか存在せず私も興味を引かれたが、私の意欲を掻き消すように今度は抱く側が光属性の彼の名前を書く者が多数現れた。
男爵家の彼であれば基本は相手は男爵、良くて子爵となり相手がいなくなれば平民の中でも裕福な商人などが割り当てられるところだった…が、抱く側の伯爵家・侯爵家・公爵家が名乗りを挙げ出した事態は変わった。
ここで平民や下位貴族をペアにしてしまうとより問題が起きると考え、仕方なく高位貴族中心にペアを決めていった。
そうなってくると「いくら光属性でも高位貴族のペアには相応しくないのでは?」と抗議する貴族が現れる。
光属性と同じ抱かれる側の人間達だった。
彼らも婚約や結婚後を考え自身の立場を守ろうと必死なので、光属性が愛人候補にならないよう少しでも自分達の婚約者や爵位が同等の結婚する可能性がある男達との接点を減らそうという作戦だった。
こうなってくると希望を聞かずにペアをランダムで決めたいのだが、更なる問題児に頭を抱えた。
それは「あの人は嫌だ」「ペアをしたくない」とワガママを言い出す者だ。
大体の人間はペアが決まれば不満がありつつも納得し表だって抗議しに来ることはない。
抗議しなければならない相手が次男とはいえ侯爵家であり魔法省に顔が利く人間だからだ。
それにも関わらず抗議しにきた人間がいた…公爵家の次男だった。
彼は何度も諦めることなく「ペアを止めたい」「変えてほしい」「もう嫌だ」と私のところへやって来た。
彼は人目を気にせずペア交代の交渉を私にしてきた為に、誰もが王子と組みたがっているのだと予想し勝手な噂を流されていた。
実際は、彼のペア用紙から王子の名前が書かれたことはなかった。
ペアについて不満を漏らす人間達が自分が目立たないように彼を利用し悪目立ちさせ悪評を流すことで王子の婚約者候補から外させようとしている。
そして、こっそり私の所にペアについて抗議しに来ているのを目立たなくさせていた。
いい加減にして欲しい。
こんな下らない面倒の為に私は教師になった訳じゃない。
魔法に真摯に向き合う姿が見たかっただけなんだ。
不快になりつつも日々を熟していると、私の中で転職を考え出していた。
今まで何とも思わなかった「獣人」について興味が湧いたからだ。
百年も前に滅びた可能性が有るものの、夢を捨てきれない研究家達を学園で偶然見かけたのが切っ掛けだ。
私にとって魔法も獣人も未知の領域であり、探求心を擽られる。
何年掛かるか分からない何十年かも知れない、それどころか生きている間に解決出来ないかもしれない事を追い続ける者達。
なんて、面白い研究をしている人達なんだ。
知れば知る程心が踊った。
獣人について調べている集団は二通りだ。
王宮への報告や定期的に学園で開かれる獣人会と言う名のサークルと顧問をしたりと興味のある人間に分け隔てなく知識を広める学者達と、獣人について過去の文献や独自で入手した見聞録を元に調査する集団か研究家だ。
学者とは違い、研究家達は立証されるまで自分達の研究を外に漏らすことはない秘密主義ともいえる。
そこがまだ興味を擽られた。
次期当主である兄が既に公爵令息と結婚し子供もいる。
なので私が焦ることはないし、教師としての職に就いてはいるもののいつでも魔法省に勤めることが出来るので高位貴族と結婚し婿に入らなければならない等という下らない事は考えていない。
父と兄が魔法省に勤め役人というのもあるが、私自身魔法に特化していたので魔法省の方から常に声が掛かっている。
自慢ではないが、私は魔法に関しては幼い頃より優秀であった。
家庭教師の真似をすれば大抵の事はすんなりと出来てしまい、出来ない苦しみを知ることはなかった。
難しいと感じたとしても、数度試せば出来てしまった。
その為、私は努力とは無縁だった。
没頭するほど何かに打ち込みたい。
出来ない者が必死に訓練するように、私も魔法に熱中したかった。
私には理解できなかった、魔法が出来ない者・魔力の無い者の気持ちが。
必死に魔力と向き合い学ぼうとする者が羨ましかった。
自分では理解できないと判断したので、教師という道を選んでみた。
ABクラスの者は努力すれば手に入れられる者ばかりで、私と似た人間だと言えた。
Cクラスの者が私の理想的な人間といえる。
程よく魔力があり上を目指そうとする姿勢、見ていて気持ちがいい。
DEFクラスに関しては魔力が上がることがないよう訓練すらしない者や魔法に興味がないもので、私を不愉快にする人間達で溢れていた。
子孫を残すことは大事ではあるが、だからと言って魔法を学ばないという姿勢は見ていて目に余る。
それでいて、私を婚約者にと望む愚者もいた。
魔法を軽視する者達の中にいるくらいなら教職でなく魔法省に勤めた方が有意義だと頭では理解している。
理解しているのに何故か止められずにいる。
まるで運命を待っているかのように教師を続けた。
変わらない日々を過ごしている中、ある者達の入学で学園は大騒ぎとなり私の仕事を悩ませるものとなった。
魔法関連であればやる気も出るのだが…たかがペア決めでつべこべ言われたくない。
私にとっては、ただの苦情処理に過ぎなかった。
切っ掛けは王子の入学であった。
王子が入学すれば、ペア決めは混乱すると予想していたが、予想以上に私への疲労があった。
貴族達…主に宿す側抱かれる側が盛り上がりペアの用紙には王子の名前が書かれることが多くなった…というよりほぼ全ての貴族が王子を指名している。
私としては問題が起きないよう、当たり障りのない「無害」そうな貴族を割り当ててみたが、ペアになった途端豹変し王子が拒否していることが分かった。
最低限の回数が決まっているものの王子は「公務」という技を使い午後の授業を早退したり、騎士に「火急の件で王宮にお戻りください。」と一芝居打つこともあった。
王子のペアで悩んでいれば、今度は珍しい光属性が現れた。
魔力検査でたった一人、光属性の反応が出た者がいた。
今の学園には光属性は彼しか存在せず私も興味を引かれたが、私の意欲を掻き消すように今度は抱く側が光属性の彼の名前を書く者が多数現れた。
男爵家の彼であれば基本は相手は男爵、良くて子爵となり相手がいなくなれば平民の中でも裕福な商人などが割り当てられるところだった…が、抱く側の伯爵家・侯爵家・公爵家が名乗りを挙げ出した事態は変わった。
ここで平民や下位貴族をペアにしてしまうとより問題が起きると考え、仕方なく高位貴族中心にペアを決めていった。
そうなってくると「いくら光属性でも高位貴族のペアには相応しくないのでは?」と抗議する貴族が現れる。
光属性と同じ抱かれる側の人間達だった。
彼らも婚約や結婚後を考え自身の立場を守ろうと必死なので、光属性が愛人候補にならないよう少しでも自分達の婚約者や爵位が同等の結婚する可能性がある男達との接点を減らそうという作戦だった。
こうなってくると希望を聞かずにペアをランダムで決めたいのだが、更なる問題児に頭を抱えた。
それは「あの人は嫌だ」「ペアをしたくない」とワガママを言い出す者だ。
大体の人間はペアが決まれば不満がありつつも納得し表だって抗議しに来ることはない。
抗議しなければならない相手が次男とはいえ侯爵家であり魔法省に顔が利く人間だからだ。
それにも関わらず抗議しにきた人間がいた…公爵家の次男だった。
彼は何度も諦めることなく「ペアを止めたい」「変えてほしい」「もう嫌だ」と私のところへやって来た。
彼は人目を気にせずペア交代の交渉を私にしてきた為に、誰もが王子と組みたがっているのだと予想し勝手な噂を流されていた。
実際は、彼のペア用紙から王子の名前が書かれたことはなかった。
ペアについて不満を漏らす人間達が自分が目立たないように彼を利用し悪目立ちさせ悪評を流すことで王子の婚約者候補から外させようとしている。
そして、こっそり私の所にペアについて抗議しに来ているのを目立たなくさせていた。
いい加減にして欲しい。
こんな下らない面倒の為に私は教師になった訳じゃない。
魔法に真摯に向き合う姿が見たかっただけなんだ。
不快になりつつも日々を熟していると、私の中で転職を考え出していた。
今まで何とも思わなかった「獣人」について興味が湧いたからだ。
百年も前に滅びた可能性が有るものの、夢を捨てきれない研究家達を学園で偶然見かけたのが切っ掛けだ。
私にとって魔法も獣人も未知の領域であり、探求心を擽られる。
何年掛かるか分からない何十年かも知れない、それどころか生きている間に解決出来ないかもしれない事を追い続ける者達。
なんて、面白い研究をしている人達なんだ。
知れば知る程心が踊った。
獣人について調べている集団は二通りだ。
王宮への報告や定期的に学園で開かれる獣人会と言う名のサークルと顧問をしたりと興味のある人間に分け隔てなく知識を広める学者達と、獣人について過去の文献や独自で入手した見聞録を元に調査する集団か研究家だ。
学者とは違い、研究家達は立証されるまで自分達の研究を外に漏らすことはない秘密主義ともいえる。
そこがまだ興味を擽られた。
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