27 / 72
そう簡単には変わらない
しおりを挟む
私は王子と共に奥の部屋へと向かうと、司祭は既に王子をもてなす準備をしていた。
「ケイトリーン嬢の今後についてなのだが、大聖堂で聖女誕生を国民に向け宣言し、パレードで王宮まで向かいお披露目パーティーを開催したいと思っている」
王子は人前では私を『聖女様』と呼ぶが、事実を知らない者がいないところでは『ケイトリーン嬢』と呼ぶ。
聖女でない私が『聖女』と宣言するのは心苦しいが、覚悟を決めるしかない。
王子も教皇も私に確認を求めるが、これは王族が既に決定し私に報告している段階なので受け入れるしかない。
「畏まりました」
「こちらも問題ありません」
司祭も協力的だ。
「ありがとう。当日の流れなどは追って連絡する。着用するドレスもこちらで準備するがデザイナーがケイトリーン嬢の元に訪れるので、その日は大聖堂での活動は補佐達だけに任すつもりだが問題ないか? 」
「はい、こちらで対応させて頂きます」
「それでケイトリーン嬢は……ここでの生活はどうだろうか? 」
「はい、以前より余裕があるのでゆっくり過ごさせていただいております」
「余裕がある……あの生活でか? 」
王子は唖然とした表情を見せる。
「はい」
あちらの国では午後の掃除が終わると国民の意見に直接耳を傾け、その後王宮に戻り王妃教育を学び祈りを捧げ、一日の授業内容を復習する生活だった。
まだ『聖女』と公表していないので、国民と直接対面し話を聞く事は出来ず。
更には王妃教育も学ぶ必要もないので、その分の時間は空いている。
なので、私の午後にはかなり余裕がある。
「聖女様は……まさか……以前お仕えしていた聖女様と同じ生活を? 」
「いえ、午後の授業はありませんので夕方から夜にかけての時間は空いております」
「夕方から夜……」
確か、こちらの国の聖女は高齢で無理をさせない為に祈りだけに専念してもらっていたと聞く。
補佐達も聖女様の体調を考え、刺激するようなことはせず優雅に過ごさせていたらしい。
そのせいで司祭は、聖女様がお亡くなりになっても補佐達に奉仕活動など提案を躊躇っていた。
それが聖女の生活と刷り込まれた彼らからしたら、私の生活は信じられないもののようだ。
「ケイトリーン嬢は大丈夫なのか? 世話係だったとはいえ、聖女の生活を実行するというのは体に負担がかかるものだろう? 」
そうだった。
私は聖女の世話係という設定でした。
「いっ今のところは問題ありません」
「そうか。だか、無理はしないでくれ。『聖女様』は多くの者が待ち望んでいた。それなのに倒れられたら……」
王子の心配の仕方は複雑ではあるが、心配してくれたのは素直に嬉しい。
あちらの国では、誰も私を気に掛けてはくれなかった……
「はい」
王子は目的を果たすと王宮へ戻って行った。
私は再び大聖堂に戻ると、大聖堂の扉の前で待機していた使用人が慌てた様子で大聖堂に入って行くのを確認した。
大聖堂に入ると驚愕の光景を目にした。
「えっ……」
今まで頑なに掃除を行わなかった令嬢達が皆、箒を手にしていた。
困惑のまま中を歩いて行く。
「聖女様、お帰りなさい。えっと……ジェイコブ王子は……? 」
私に声を掛けていながら、イニアスは私の後方に視線を送る。
「王子は王宮に戻りました」
「へっ? 」
王子が既に去ったことを告げると、イニアスと漸く視線が合う。
私達の会話を聞いていた令嬢達は、持っていた箒を使用人に押し付け再びいつもの定位置に着く。
先程掃除をしていたワーグナーだけ王子と会話した事で、掃除をすれば王子に声を掛けてもらえると考え皆掃除をしていたのだろう……
「まさか……」
大聖堂の前にいた使用人はいつ王子が戻ってくるのか扉の前で待機していたのか?
そう簡単には変わらないですよね。
「ケイトリーン嬢の今後についてなのだが、大聖堂で聖女誕生を国民に向け宣言し、パレードで王宮まで向かいお披露目パーティーを開催したいと思っている」
王子は人前では私を『聖女様』と呼ぶが、事実を知らない者がいないところでは『ケイトリーン嬢』と呼ぶ。
聖女でない私が『聖女』と宣言するのは心苦しいが、覚悟を決めるしかない。
王子も教皇も私に確認を求めるが、これは王族が既に決定し私に報告している段階なので受け入れるしかない。
「畏まりました」
「こちらも問題ありません」
司祭も協力的だ。
「ありがとう。当日の流れなどは追って連絡する。着用するドレスもこちらで準備するがデザイナーがケイトリーン嬢の元に訪れるので、その日は大聖堂での活動は補佐達だけに任すつもりだが問題ないか? 」
「はい、こちらで対応させて頂きます」
「それでケイトリーン嬢は……ここでの生活はどうだろうか? 」
「はい、以前より余裕があるのでゆっくり過ごさせていただいております」
「余裕がある……あの生活でか? 」
王子は唖然とした表情を見せる。
「はい」
あちらの国では午後の掃除が終わると国民の意見に直接耳を傾け、その後王宮に戻り王妃教育を学び祈りを捧げ、一日の授業内容を復習する生活だった。
まだ『聖女』と公表していないので、国民と直接対面し話を聞く事は出来ず。
更には王妃教育も学ぶ必要もないので、その分の時間は空いている。
なので、私の午後にはかなり余裕がある。
「聖女様は……まさか……以前お仕えしていた聖女様と同じ生活を? 」
「いえ、午後の授業はありませんので夕方から夜にかけての時間は空いております」
「夕方から夜……」
確か、こちらの国の聖女は高齢で無理をさせない為に祈りだけに専念してもらっていたと聞く。
補佐達も聖女様の体調を考え、刺激するようなことはせず優雅に過ごさせていたらしい。
そのせいで司祭は、聖女様がお亡くなりになっても補佐達に奉仕活動など提案を躊躇っていた。
それが聖女の生活と刷り込まれた彼らからしたら、私の生活は信じられないもののようだ。
「ケイトリーン嬢は大丈夫なのか? 世話係だったとはいえ、聖女の生活を実行するというのは体に負担がかかるものだろう? 」
そうだった。
私は聖女の世話係という設定でした。
「いっ今のところは問題ありません」
「そうか。だか、無理はしないでくれ。『聖女様』は多くの者が待ち望んでいた。それなのに倒れられたら……」
王子の心配の仕方は複雑ではあるが、心配してくれたのは素直に嬉しい。
あちらの国では、誰も私を気に掛けてはくれなかった……
「はい」
王子は目的を果たすと王宮へ戻って行った。
私は再び大聖堂に戻ると、大聖堂の扉の前で待機していた使用人が慌てた様子で大聖堂に入って行くのを確認した。
大聖堂に入ると驚愕の光景を目にした。
「えっ……」
今まで頑なに掃除を行わなかった令嬢達が皆、箒を手にしていた。
困惑のまま中を歩いて行く。
「聖女様、お帰りなさい。えっと……ジェイコブ王子は……? 」
私に声を掛けていながら、イニアスは私の後方に視線を送る。
「王子は王宮に戻りました」
「へっ? 」
王子が既に去ったことを告げると、イニアスと漸く視線が合う。
私達の会話を聞いていた令嬢達は、持っていた箒を使用人に押し付け再びいつもの定位置に着く。
先程掃除をしていたワーグナーだけ王子と会話した事で、掃除をすれば王子に声を掛けてもらえると考え皆掃除をしていたのだろう……
「まさか……」
大聖堂の前にいた使用人はいつ王子が戻ってくるのか扉の前で待機していたのか?
そう簡単には変わらないですよね。
378
あなたにおすすめの小説
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。
ラディ
恋愛
一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。
家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。
劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。
一人の男が現れる。
彼女の人生は彼の登場により一変する。
この機を逃さぬよう、彼女は。
幸せになることに、決めた。
■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です!
■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました!
■感想や御要望などお気軽にどうぞ!
■エールやいいねも励みになります!
■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。
※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。
0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。
アズやっこ
恋愛
❈ 追記 長編に変更します。
16歳の時、私は第一王子と婚姻した。
いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。
私の好きは家族愛として。
第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。
でも人の心は何とかならなかった。
この国はもう終わる…
兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。
だから歪み取り返しのつかない事になった。
そして私は暗殺され…
次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。
【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
レドゼンツ伯爵家の次女メルティは、水面に映る未来を見る(予言)事ができた。ある日、父親が事故に遭う事を知りそれを止めた事によって、聖女となり第二王子と婚約する事になるが、なぜか姉であるクラリサがそれらを手にする事に――。51話で完結です。
お姉様優先な我が家は、このままでは破産です
編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。
だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!
愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理!
姉の結婚までにこの家から逃げたい!
相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。
欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜
水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。
魔王乱立の時代。
王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。
だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。
にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。
抗議はしない。
訂正もしない。
ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。
――それが、誰にとっての不合格なのか。
まだ、誰も気づいていない。
欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。
居候と婚約者が手を組んでいた!
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!
って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!
父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。
アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。
最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる