【完結】能力が無くても聖女ですか?

天冨 七緒

文字の大きさ
51 / 72

恋愛話

しおりを挟む
「聖女様」

 日課の掃除中。
 声を掛けてきたのはイニアス。

「なんでしょう? 」

「聖女様はご存じありませんか? マカリオン様の婚約者について……とか? 」

 イニアスが小声で話すも、普段とは違う動きをすると令嬢同士監視しているようですぐに気付かれる。
 特にゼルーガはイニアスの後方から鋭い視線を向ている。
 内容も内容なので、私の答えに皆関心があるよう。

「私は聖女としての仕事の会話しか王子様とはしておりませんので、婚約などの話は耳にしておりません」

 事実であるが、王族の婚約を詳しく知りたいとは思わない。
 お願いだから私を巻き込まないでほしい。

「そうですか……聖女様がマカリオン様の婚約者になる可能性は……」

「それはあり得ません。私は聖女として活動するだけで精一杯ですし、王子様の隣に立つには不向きです」

 ここで強く否定しておかないと面倒になるのは予想できる。
 関心がない素振りのサラディーンでさえ、私の返答に頷くと一気にこちらに興味を失くした様子。

「……そうですね」

 イニアスは王子の婚約者がなかなか発表されないことで、聖女の私が候補にあるのでは? と疑っていた様子。
 現時点の様子と、私から言質を取りたかったのだろう。
 満足する答えを聞くと、イニアスは再び定位置に戻る。
 今日もイニアスは、掃除をする使用人の監視に徹底している。

「では聖女様、マドリゲス様とはどうなんですか? 」

 マドリゲスの名前を出してきたのは、ワーグナー。
 令嬢の後ろで興味なさそうなフリをしながら、私を確認するエリクソンの姿が映る。
 最近ではエリクソンも掃除をするようになった。
 
「マドリゲス様は王宮の決定を報告に来てくださっています。それと、助言を頂くこともありますね」

「助言ですか? 」

「男性にしか分からない感情について」

「男性にしか分からない感情ですか? 」

「はい、女性と男性では恋愛観が違うようなので参考にさせて頂いております」

「マドリゲス様が恋愛について語るのですか? 」

「恋愛についてと言うより、男性の心理……ですかね? 」

「心理……」

「恋愛について相談された時、その分野は特に難しく知識だけでは答えを出せないので周囲の方に話を伺うことがあります」

 マドリゲスにしか尋ねたことは無いが、濁しておいた。
 勘違いされて良いことはない。

「聖女様はマドリゲス様の事をどう思っているのですか? 」

 ワーグナーはなんだか楽しそうに質問を続ける。

「どう……王子様の護衛です」

「そうではなくて……」

「報告係という事ですか? 」

「他にはありませんか? 」

「他に……ですか? 」

 マドリゲスはマドリゲスで、他にはない。
 それより、令嬢は私にどんな言葉を望んでいるの?
 この質問に正解はあるの?

「案外そうなんですね。マドリゲス様がパーティーでエスコートされたりダンスをするのも珍しいですし、特定の人物と会話を続けるのも今までにはありませんでしたから。お二人はてっきり……」

「その事ですか。エスコートとダンスを婚約者不在の王子様にお任せしては、誤解が生じてしまうという意見もありました。急遽でしたので、マドリゲス様にパートナーを務めて頂きました。あの方は任務に忠実な方ですし、私の立場を考え良好な関係を築こうと配慮してくださっているのだと思います」

「……そうなんですね」

 残念そうな表情を見せ、ワーグナーは掃除の続きに戻る。
 私達の会話に耳を澄ませていたエリクソンも掃除に向き合う。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。

アズやっこ
恋愛
 ❈ 追記 長編に変更します。 16歳の時、私は第一王子と婚姻した。 いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。 私の好きは家族愛として。 第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。 でも人の心は何とかならなかった。 この国はもう終わる… 兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。 だから歪み取り返しのつかない事になった。 そして私は暗殺され… 次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。

【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 レドゼンツ伯爵家の次女メルティは、水面に映る未来を見る(予言)事ができた。ある日、父親が事故に遭う事を知りそれを止めた事によって、聖女となり第二王子と婚約する事になるが、なぜか姉であるクラリサがそれらを手にする事に――。51話で完結です。

お姉様優先な我が家は、このままでは破産です

編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。 だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!  愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理! 姉の結婚までにこの家から逃げたい! 相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。

欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜

水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。 魔王乱立の時代。 王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。 だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。 にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。 抗議はしない。 訂正もしない。 ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。 ――それが、誰にとっての不合格なのか。 まだ、誰も気づいていない。 欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。

居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!  って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!  父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。  アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。  最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。

処理中です...