【完結】能力が無くても聖女ですか?

天冨 七緒

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呼び方

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 マドリゲスに送られながら先程の会話を思い出す。
 王子は私を『ケイトリーン嬢』と呼んだ。
 その意味は……私が聖女と召喚され世話係だったと知った時は、『ケイトリーン嬢』と呼んでいた。
 だがその後、偽聖女を演じるようになって周知させるために王子は率先して私を『聖女』と呼ぶようになり、私の人格が消えた。
 そして、今日。再び『ケイトリーン嬢』と呼びだしだのは、私が『聖女』である事を重荷と感じ取っていると判断してくれたからだと思う。
 
「聖……ケイトリーン嬢」

 マドリゲスもまた私を名前で呼ぶ。
 それは王子に倣ってだろう。

「……はい、あっ、送って頂きありがとうございました」

 すでに部屋の前に到着していた。

「少しお話をいいですか? 」

「はい……では、私の部屋でも?」

「あぁ」

「どうぞ」

 部屋へと案内し、ソファを促す。 

「聖女、今回の事件について……自分のせいで王女が巻き込まれたと思っているかもしれないが、実際は俺のせいで聖女が巻き込まれた。申し訳ない」

「いえ、マドリゲス様のせいではありませんので謝罪は必要ありません」

「いや、俺が聖女に対して親密に思える振る舞いをしていたのは事実だ」

「親密に思える振る舞い……ですか? 」

 親密に思える振る舞いとはなんだろうか?
 他愛ない会話をした記憶があるが、それだけだ。

「……あぁ……その……ケイトリーン嬢、俺と婚約者してほしい」

「……婚……約」

 婚約? 
 私とマドリゲスが? 
 もしかして、やはり不確かであっても『聖女』の能力を国で管理しようという王子の判断なのだろうか?
 この国も同じなのか……
 『味方』あの言葉、嬉しかったのに……

「ケイトリーン嬢は知らないと思うが、俺が誰かをエスコートしたのはケイトリーン嬢が初めてだった。それに……ドレスと宝石……俺が贈らせてもらった」

「ドレス……あっ……」

 確か、隣国の王女がいらっしゃるという事で以前お披露目で使用した白いドレスや宝石ではなく、新たな物が贈られた。
 全て青系の物で統一され……青系……
 マドリゲスの髪も瞳を深い青……
 この国に来て使用人に教えてもらった事を思いだす。
 婚約者に自身の色のドレスや宝石を贈る……

「今まで女性にこのような事をしたことがなかったので、ケイトリーン嬢には伝わっていなかったみたいだな」

「あっ、いや……私がそういう事に疎いこともあり……男性に贈り物をされた事が無かったもので……」

「……以前は婚約していたのだろう? 」

「相手は王子で更に私が聖女だったこともあり、不用意な贈り物は散財・強欲と印象が根付く恐れがあると言われ、贈り物はほとんどありませんでした」

「……それは……他国について批判するつもりはないが、我が国は聖女であろうと愛する者に贈り物をすることを咎められる事はないから安心してほしい」

 愛する者……深い意味はないんだろうが、マドリゲスから「愛する者」という単語を聞くと照れてしまう。

「そっ……そうなんですね」

「ケイトリーン嬢、俺は真剣だ。なので、俺との婚約を一度考えてみてもらえないか? 」

 考える? 
 私に選択権があるということなんだろうか?

「ぇっと……はい」
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