【完結】能力が無くても聖女ですか?

天冨 七緒

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トランビーノ国 逆行

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<ドランビーノ国>

 聖女が不在という事実が国全体に知れ渡る。
 王子は聖女との婚約を正式に解消し、公爵令嬢との婚約を公表。
 それによって、国は大きく変わった。

「また海賊が現れたってよ……」
「食い物は持ってかれるし、町も荒らされてなぁ……」
「この前なんて、教会も襲撃されたらしい」
「王子の婚約者が寄付したって話はよく聞いたからな」

 一度襲われ目を付けられてからは、何度も海賊の被害に遇うようになった。
 その後も騎士を配置するも海賊の方が戦い慣れている為、撃退する事は出来ず食料も金目の物も奪われ町は破壊され戦力も奪われる一方だった。

「今日も……おいっ、話を聞けっ。公爵令嬢にお礼を言ってから……」

 定期的に開催されていたノウエー公爵令嬢の食事配りだが、食料不足が続くと開始の合図を待たず我先にと奪い合うようになった。

「これは俺んだっ」
「寄こせっ」
「ちょっと、あんた離しなさいよ。私が先に取ったのよ」
「うるせぇ」

 代表を務める男が公爵令嬢に礼を告げる話など誰も聞かず、目の前の食べ物に群がる平民達。
 
「まぁ、なんて野蛮なの」
「恐ろしい光景」
「落ちた食べ物も口にするなんて……」

 毎回食事に群がる平民を高いところから見物していた貴族も、現状に恐怖を覚える。
 彼らの欲望が自分達に向く前に、貴族達はそそくさとその場を離れ静かに屋敷へ退散。
 
「全くなんなのよ、あれっ。誰も私に感謝しないじゃない」

「お嬢様。今は食料不足が続いている為、平民の統率が難しくなっております」

「本当、平民って下品で下劣で不快極まりないわね。もう、やめてもいいわよね」

 漸く婚約発表されたというのに、現状は筋書き通りにはいかず令嬢は荒れている。
 今日も平民に感謝される為にやりたくもない施しを行ったというのに、彼らからは感謝の言葉が一切なかった。
 施しがなくなることで、どれほど有り難かったのか思い知らせるために食事の配布を終了した。
 だが、それが更なる展開を引き起こす。

「うわっ。ここもやられたか……」
「最近じゃ海賊よりも質が悪い……」
「金品だけじゃなく、遺体すら盗まれるらしいな」

 最近では墓荒らしが横行し、遺体すら売り買いされるようになった。
 盗賊や強盗が増加し、それだけでも足りず墓荒らしも発生。
 以前は海賊を警戒していたが、今では同じ町の人間を疑わなければならない程困窮している。
 遺体が盗まれ高値で売れることが知れ渡ると遺体を作ってしまおうと考える人間も静かに現れていた。 
 治安が悪化し続ける事で、他国からの商人の出入りは減少し貿易産業も停止。
 トランビーノ国は時代が逆行し始めていた。
 ある専門家の話では、元に戻るには百年は掛かるのではないかと噂されるように。
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