【完結】能力が無くても聖女ですか?

天冨 七緒

文字の大きさ
71 / 72

考えてほしいって言ったんですよね?

しおりを挟む
 マドリゲスから婚約の申し込みがあり、一度考えてほしいと言われた。

「ケイトリーン嬢、掃除が終わった後時間あるか? 観劇に行かないか? 」

「観劇ですか? 」

 観劇とは舞台を観に行く事よね?
 過去マカリオン王子に、『平民の娯楽に貴族が立ち入るのは良しとしない』と言われた記憶がある。

「興味ないか? 」

「いえ、観たことがないのでわかりません」

「一度も? 」

「はい」

「なら、一度だけでも体験するといい。色んな人の相談を受けているんだ、何かの役に立つと思う」

「……そうですか」

 この国の聖女はかなり容認されている。

「……と言うのもあるが、俺がケイトリーン嬢と一緒にいたい」

「えっ? 」

「遠回しに言っても伝わらないだろう? 」

 彼の言葉の意味を正しく理解できないまま、大聖堂の掃除を終えるとマドリゲスのエスコートで観劇に行くことになった。
 私達の会話を全て聞いていたワーグナーに満面の笑みで見送られる。
 観劇というものは始まるまでは緊張していたが、役者の迫真の演技に魅了されいつの間にか見入ってしまっていた。

「初めての観劇はどうだった? 」

「とても素晴らしかったです。誰かの人生を垣間見せてもらったような感覚でした」

「では、また誘ってもいいだろうか? 」

「えっ……はい……よろしくお願いいたします」

 マドリゲスに王宮まで送られる。
 馬車で二人きりとなると、彼は私に微笑みを向ける。
 私と婚約したいといっていたのに、態度は余裕に見え私ばかりが彼を意識して緊張していた。
 それからもマドリゲスに誘われている。
 「考えてほしい」と言われたのに、考える暇がないというかマドリゲスに振り回されてしまっている気がする。
 そんな私達の関係を面白がるような二人。

「それで、最近はどうなの? 」

「表情を崩さないと言われているマドリゲス様が最近表情が柔らかくなりましたわ。理由は明白……」

 今日も、王女とワーグナーの三人でお茶会を開催している。
 
「どうと言われましても……」

 本日の話題は私とマドリゲスの関係について。

「二人を観ているとじれったいわ。マドリゲス様にはもう少し刺激のある観劇を進めるっようマカリオン様に伝えておこうかしら」

「いいですね。では私は聖女様に官能的な小説を贈ります」

「おおおおお二人とも、お気持ちだけで結構です」

「遠慮しなくていいのよ」

「そうですよ」

 二人は私の為を思ってというより、揶揄って遊んでいるように思える。

「ですが聖女様、油断しているとマドリゲス様取られてしまいますからね」

「えっ」

「ご存じないと思いますが、以前からマドリゲス様は侯爵家嫡男であり王子の護衛騎士として有能な方でしたので婚約の打診は絶えないんです。そして、王子の婚約が決定した事で婚約未定の令嬢達が今こぞってマドリゲス様に婚約を迫っているそうですよ。その中にはイニアス公爵令嬢とゼルーガ侯爵令嬢も含まれております」

 王子の婚約が発表されてから姿だけでなく噂もなかったが、婚約者探しに躍起になっているらしい。
 いくら高位貴族であっても年齢を考えるとのんびりしていられない様子。

「あっあの二人が……ワーグナー令嬢は婚約……」

「私にも最近婚約の話が来ました」

「そうなんですか? 」

「はい、お二人のおかげです」

「私達? 」

 何かした覚えがないので、私も王女も見合わせて首を傾げる。

「聖女様の補佐をすることで王族からの信頼を得ることができ、今日のように王女様主催のお茶会に参加を許可されている事が社交界で広まり婚約の打診がちらほらと……んふっ」

 ワーグナーの反応からして、程よく婚約の打診が来ているのが分かる。
 令嬢は伯爵家なので本来であれば婚約相手に困ることは無い。
 だが王子の婚約候補であった為に、適齢期に差し掛かっても決められずにいた。
 その結果、同年代の高位貴族令息は既に婚約している。
 それでも婚約話がきたのは令嬢の人柄ではないだろうか?

「婚約の打診はワーグナー令嬢が仕事に対して真摯に取り組み、王女様の信頼を得たからですよ」

 これこそ普段の行いと言える。
 そして私は……

「ドレス……マドリゲス様から? 」

 王宮でパーティーが開催されるという事でドレスが届く……マドリゲスから。
 そろそろ婚約の返事をするべきだと思っている。
 だけど、自分から婚約の話をすることに躊躇いがある。
 もしかしたらマドリゲスの気持ちに変化が起きているかもしれない。
 こうしてドレスと宝石が贈られた事で彼を信じて大丈夫だと思いつつも不安が拭えない。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。

アズやっこ
恋愛
 ❈ 追記 長編に変更します。 16歳の時、私は第一王子と婚姻した。 いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。 私の好きは家族愛として。 第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。 でも人の心は何とかならなかった。 この国はもう終わる… 兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。 だから歪み取り返しのつかない事になった。 そして私は暗殺され… 次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。

【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 レドゼンツ伯爵家の次女メルティは、水面に映る未来を見る(予言)事ができた。ある日、父親が事故に遭う事を知りそれを止めた事によって、聖女となり第二王子と婚約する事になるが、なぜか姉であるクラリサがそれらを手にする事に――。51話で完結です。

お姉様優先な我が家は、このままでは破産です

編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。 だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!  愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理! 姉の結婚までにこの家から逃げたい! 相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。

欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜

水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。 魔王乱立の時代。 王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。 だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。 にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。 抗議はしない。 訂正もしない。 ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。 ――それが、誰にとっての不合格なのか。 まだ、誰も気づいていない。 欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。

居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!  って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!  父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。  アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。  最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。

処理中です...