レッドストーン - 魔王から頂いた加護が最強過ぎるので、冒険者になって無双してもいいだろうか -

花京院 光

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第一章「王国編」

第十五話「魔王の力」

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 一度レッドストーンに戻り、露天商の方達から頂いた食料を置く。それから冒険者区を歩き、魔術師ギルド・ユグドラシルに向かう。ヘンリエッテさんはやはり王国で仕事をしているからか、大抵のギルドに関する情報を持っていた。

「ユグドラシルは、強力な防御魔法を操るギルドマスター、レーネ・フリートが運営するギルドなのよ。以前、魔導書を作るための羊皮紙や、魔物の素材を納品した事があるわ」
「ヘンリエッテさんは色々な仕事をしているんですね」
「儲かりそうな仕事ならなんでもするわ。それに、強いギルドとは繋がりを持っておきたいからね。ユグドラシル関連のクエストは、積極的に受けていたの」
「それはどうしてですか?」
「将来、この町に店を構えた時に有利だからよ。商人として様々なギルドに品物を納品し続ければ、知名度も上がるでしょう? 冒険者向けの道具屋を構えるつもりだけど、私自身の知名度を上げれば、将来の顧客も増えると思うの」
「確かに、それはそうですね。俺はヘンリエッテさんの夢を応援していますよ」
「ありがとう。これからも沢山助けて貰う事になると思うわ」

 しばらく他愛のない会話をしながら冒険者区を進むと、ユグドラシルに到着した。木造の二階建の建物で、冒険者区の中で最も規模が大きいギルドなのだとか。フローラはここで魔法を学んでいるのか……。

 扉を開けて室内に入ると、体に強い魔力を感じた。フローラが土の壁に向けて雷を放ち、魔法の練習をしているみたいだ。やはりフローラは強い魔力を秘めていたのだろう。俺の予想通り、彼女の魔法は初めて使用したとは思えない程の威力だった。

『サンダー!』

 フローラが魔法を唱えると、彼女の右手からは強い雷が発生し、土の壁の表面を焦がした。今度フローラのために杖を買ってあげようか。きっと杖があれば更に彼女の魔法を強化出来るはずだ。

 室内はまるで書店の様に本棚が並んでおり、本棚には魔法関連の書物や、魔物の素材、魔石等が丁寧に陳列されている。天井がとても高く、美しい装飾が施された螺旋階段が二階へと続いている。二階はどうやら魔術師達の居住スペースになっているらしく、天井は吹き抜けで、二階に居る魔術師達は紅茶を飲みながらフローラの魔法訓練を見ている。

 ダリウスは俺を見ると、翼を開いて飛び上がった。そのまま俺の胸に飛びつくと、嬉しそうに何度も頬ずりをした。ロビンはフローラの練習をサポートしているみたいだ。フローラの魔力が切れると、すぐにマナポーションを差し出し、フローラを支えている。

「ラインハルト! フローラは一日でサンダーの魔法を覚えたんだよ!」
「魔法の威力も高いみたいだし、俺達と一緒に狩りに行けるかもしれないね」
「うん! フローラは聖属性と雷属性に適正があるんだって」
「攻撃魔法と回復魔法に適正を持つという事は、賢者の素質があるのか……」
「レーネさんも同じ事を言っていたよ。フローラはすぐに強い魔法を習得するだろうって」

 ダリウスは嬉しそうに微笑むと、俺はダリウスをヴォルフの背中に乗せた。彼等はまるで兄弟の様に仲が良く、ヴォルフはダリウスを乗せて室内を歩くと、魔術師達が目を輝かせて近づいてきた。

「幻魔獣のフェンリルですか? 書物では見た事がありましたが、実際に目にするのは初めてです! レッドストーンの冒険者様は幻魔獣をも従えているんですね……」
「幻魔獣と共にブラッドソードを退ける最強の冒険者……まさかユグドラシルに来て下さるとは!」

 魔術師達は俺の魔装をペタペタと触りながら、興奮した様子で俺を見つめている。きっと魔王の魔装が珍しいのだろう。それから父の遺品でもある、『魔剣・ヴォルフガング』を興味深そうに見つめると、剣を抜いて魔力を見せて欲しいとせがんだ。見るもの全てを知りたいといった様子で、探究心溢れる魔術師が多いみたいだ。

「ラインハルト様! どうか魔剣を抜いてみてくれませんか? ブラッドソードの暗殺者を切り裂いた剣を見てみたいのです!」
「私からもお願いします! 一体どの様な武器で暗殺者にダメージを与えたのか、研究すれば魔法にも応用出来ると思うんです!」

 若い双子の姉妹は俺の剣さばきを見たいと言うと、室内に居た魔術師達が大いに盛り上がった。ヘンリエッテさんは俺の肩に手を置き、『レッドストーンの強さを見せてあげなさい、仕事に繋がるかもしれないわよ』と囁くと、俺は魔剣を抜く事にした。

 ギルドマスターのフリートさんが近づいてくると、彼女は床に手を付け、土の魔力を注いだ。瞬間、室内には分厚い土の壁が現れた。大きさは二メートル程だろうか。壁からは強い魔力を感じる。まるで父・ヴォルフガングが防御の構えを取っているようだ。父の鉄壁の構えは、当時の勇者でさえ崩す事が出来なかったのだとか。

 ブラックウルフ等とは比較できない程の力を感じる。俺はこんなに優れた技術を持つ魔術師から、ブラッドソード壊滅を依頼されているのか。ここで醜態を晒せば、一気に信頼を失ってしまうだろう。何が何でもこの壁を砕いてみせる。

 魔剣を抜いて構える。魔剣に精神を集中させ、体内から集めた魔力を全て魔剣に注ぐ。全力で挑まなければ、ギルドマスターの土の壁を破壊する事は出来ないだろう。体内に温存しておいた魔力を全て使い切るつもりで魔力を注ぎ続けると、魔剣は強い光を放った。

 魔剣から魔力の刃を飛ばす魔法、ソニックブローを使おう。父が生前に一度だけ見せてくれた最強の攻撃魔法だ。まだ一度も成功した事はないが、丁度良い機会だ。最高の防御魔法を前にして俺の新たな魔法を完成させる。

 魔剣を頭上高く掲げ、全ての魔力を魔剣に込めると、俺は全力で魔剣を振り下ろした。魔剣からは赤い魔力の刃が飛び出し、魔力の刃は高速で土の壁を捉えると、巨大な爆発音を轟かせ、土の壁を木っ端微塵に砕いた。

「なんだ……今の魔法は? 赤い刃が飛んだ様な気がしたが」
「古代の勇者、サシャ・ボリンガーの伝記で読んだ事があるな。剣から魔力の刃を発生させ、対象を切り裂く攻撃魔法・ソニックブロー。まさか現代にソニックブローの使い手が居るとは!」

 魔術師達が大いに盛り上がると、俺は全身から力が抜け、床に座り込んでしまった。フローラは心配そうに近づいてくると、マナポーションを飲ませてくれた。ギルドマスターは愕然とした表情を浮かべ、放心状態で砕けた土の壁を見下ろした。

「まさか……ラインハルト様がソニックブローの使い手だったとは。私の最高の防御魔法、アースウォールを砕くなんて……」

 フリートさんはゆっくりと俺の方に近づいてくると、俺に握手を求めた。俺はフリートさんの手を握ると、彼女は満面の笑みを浮かべた。

「皆さん、ラインハルト様の実力はこの通りです。彼こそが、長きに渡りアイゼンシュタインを、周辺の村や町を苦しめてきたブラッドソードを壊滅させる冒険者です! 魔術師ギルド・ユグドラシル、ギルドマスターのレーネ・フリートは。全力でラインハルト様のブラッドソード討伐計画を支援します!」

 フリートさんが宣言すると、魔術師達は熱狂的な歓声を上げた。十歳の頃から七年間も練習を続けてきたソニックブローを、ついに完成させる事が出来た。思えば、かつての俺では魔力と力が足りなくてソニックブローを撃てなかったのだろう。それに、俺の体には父の力が流れている。今まで努力を続けた技術が、父から加護を受ける事によって、才能が開花したのだろうか。

「ラインハルト。私もいつか目が見える様になったら、ソニックブローを見てみたい……」
「ああ。俺が必ずレッドストーンを手に入れて、フローラの目を治してあげるよ」
「それではだめなの。私もラインハルトを支えられる冒険者になる!」
「フローラ。お互い努力を積んで強い冒険者になろう」
「ええ! そろそろギルドに戻りましょうか」
「そうだね。フリートさん、それでは俺達はレッドストーンに戻ります。これからもフローラの事を宜しくお願いします」
「はい。お任せ下さい。私がフローラを最高の魔術師に育ててみせます! フローラ。この魔石をあなたに差し上げます。魔法石を使って毎日魔法の練習をして下さい。サンダー、ホーリー、ヒールの魔法石です」
「ありがとうございます、レーネさん!」

 ユグドラシルを後にすると、俺はフローラにヘンリエッテさんを紹介しながらレッドストーンに戻った。暫くヘンリエッテさんが俺と共に行動をすると伝えると、フローラはヘンリエッテさんを歓迎した。

「私もフローラに負けていられないわね。今日から魔法の練習を再開しようかしら」
「ヘンリエッテさんは剣も魔法も使えますよね」
「ええ。父が剣士だったから、幼い頃に剣の使い方を教わったの。それから十二歳の時に風の魔法の練習を始めて、今では剣と魔法を使い分けて戦う様にしているわ」
「ヘンリエッテさんの戦い方を見た時は驚きましたよ。ブラックウルフ相手に、風の魔力を飛ばし、剣で切り掛かるんですからね」
「あの時はラインハルトを守るために必死だったからね……」

 俺はヘンリエッテさんの強さを知っている。剣速も早く、右手で剣技を放ち、左手で風の塊を飛ばして攻撃をする。敵との距離を取りながら、次々と攻撃を仕掛ける魔法剣士の戦い方だ。ヘンリエッテさんがスケルトン相手に窮地に陥っていたのは、馬と馬車を守りながら戦っていたからだ。普通に戦えばスケルトン相手には負ける事がないのだとか。

 俺はレッドストーンの扉を開けると、何だか自分の家に戻ったような深い安堵を覚えた……。
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