瓦解する甘い盾

流音あい

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三度目の接触、侵食

9、喪失感と決意

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 彼のリズムに合わせ、きよみは自らも腰を揺らし……ているつもりだったけれど、実際はきつく抱き締められているせいで、まったく動けていない。一方的に揺さぶられるのは嫌いなはずなのに、彼が相手だとそんなに悪くない気がしている自分に気付いて、屈辱感が湧いた。

「んあっ」

 そんな思いとは裏腹に、身体は快楽の波に勝てず、またも絶頂を迎えてしまう。
 けれど今度こそ彼自身を締め付け、相手の苦悶の表情と喘ぐ姿を見ることが出来たので、満足していた。

「先輩は一回で大丈夫なんですか?」
「んー? 何度もやったら、きよみちゃんが大変かなと思って」
「先輩が無駄に焦らすからでしょ」
「でもそれがいいんでしょ?」
「ただの先輩の性癖でしょう」
「そう言われると、否定できないかな~」

 力なく笑う彼に、きよみも頬が緩んでしまう。今回も流されてしまったけれど、今は心地良さの方が勝っている。
 すっかり穏やかに過ごせている彼とのひと時に、きよみは自分がつまらない意地を張っているだけのような気がしてきた。どちらが優位に立っているかなど、互いが甘いひと時を味わえるなら、こだわる必要はないかもしれない。
 悔しさはまだ消えないけれど、きよみは自分の胸に温かなものが育っているのを感じていた。



 次に彼が家に来た時、きよみは生理だった。告げるとあっさり踵を返した彼に、安堵と共に喪失感に襲われた。次いで込み上げてきたのは憤り。

 身体の関係を楽しむのは悪くない。きよみも積極的な方ではあった。けれどあれほどきよみの心と体を乱しておきながら、次の約束もせずにあっさり帰るなんて、許せなかった。

 対等ではないと感じたのは間違いではなかった。彼は最初からきよみのことを、ただの性欲のはけ口としか思っていなかったのだ。自らの性欲を満たせれば、誰でも良かったのだろう。

 絆されかけていたきよみは、自らの失態を恥じた。本音がわかるなんて嘘だ。単に流されやすい相手を、便利な性欲処理にしただけではないか。

 心を開きかけていた自分に腹が立つ。大事にしてくれているのかもと、一瞬でも過ったことを打ち消したい。
 やはり優位性は必要だ。否、対等でなければならないのだ。
 どちらが優位かを気にしなくてもいいのでは、と自らの価値観を崩されかけたことに、腹の底からの怒りが湧き上がる。
 自分の価値基準を手放してはならない。少なくとも、自分が優位に立って相手を利用しようとする人間になど、壊されてなるものか。

 彼はまた来るかもしれない。そのときにはもう流されない。きよみは静かに心の中で決意した。
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