瓦解する甘い盾

流音あい

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四度目の接触、反撃

10、反撃開始

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 十日ほど過ぎた頃、彼はまた現れた。いつもと変わらぬ笑みを湛えて。きよみは眼光鋭くきつく相手を睨みつけた。
「あれ? 素直になったと思ったのに、また戻っちゃった? ま、強気なきよみちゃんも好きだからいいけどね」
 へらへら笑いながら言ってのける彼に、冷めた目を向ける。
「今日も私とヤりに来たんですか」
「ダイレクトだね。そんなに俺のことが恋しかった?」
 挑発的な瞳を受け止めて、きよみは口角を釣り上げた。彼を前にして感じるのは、あの日から育った怒りのみ。心の中で蔑みながら、きよみは自らドアを開け、彼を招き入れた。



 部屋に入るなり、きよみは彼を寝室に連れて行き、ベッドに座らせた。
 彼に見せつけるようにブラウスのボタンを外し、脱ぎ捨て、タイツを脱ぐ。下着とスカートだけの姿で、彼のシャツを脱がしにかかる。

「今日はすいぶん積極的だね」
「先輩は動かないでくださいね」

 上半身が裸になった男を仰向けに寝かせ、跨った。相手はこれから待ち受ける何かを期待して、にやにやと笑っている。
 腰に伸びてくる男の手を引き剥がし、手首を捕らえて頭の上に押し付けた。その顔を覗き込み、きよみは言った。

「先輩は動いちゃダメ。わかった?」

 ああ、わかった、と男は頷いた。
 力で敵わないことは百も承知。それでもきよみは、こうすることを選んだ。自分が優位に立つために。彼に借りを返すために。

 手首から手を離し、悪戯に手の平をくすぐってやる。指の間に指を差しいれ、唇に軽くキスを落とすと、相手は物足りなさそうに唇を動かした。

 身体を起こし、指先を手首からひじ、二の腕へと滑らせて、肩を撫でる。首筋を両手で包み、首を絞めるかのような形にすると、再び身体を折り曲げ、親指で喉ぼとけに触れながら優しく唇を啄んだ。
 顎にキスを落とし、上を向かせ、喉ぼとけの少し上を強く吸う。

 鎖骨に指先で触れたあと、肩をひと撫でして、脇をくすぐる。脇を閉めようとするのを制し、また上に上げさせる。素直に従う彼に、きよみはねっとりと濃厚なキスをした。

 彼の息が上がっていく。その瞳は焦がれるような情欲の色を宿していた。それを冷めた目で見下ろしながら、きよみは自らの舌で男の舌をなぶっていく。

 彼は以前、相手の目が笑っていないのがわかると言った。それなら今もわかるはずだ。きよみの瞳に、強い憎悪が揺らめいていることに。

 口付けに応えてくる男から顔を離し、きよみは静かに見下ろした。相手は名残惜しそうに頭を上げて追ってくる。その上唇に優しく吸い付き、下唇を強く吸う。そうして強く噛みついた。
 う、と呻いた彼は、最初は驚いたようだったが、こちらが笑って見せると、同じように笑みを返してきた。もう一度優しく口付けると、相手もまた応えてくる。

 下りてきた彼の手が、きよみを抱き締めようとする。その手を掴んで引き剥がし、頭上で押さえつけながら耳に口を寄せた。

「動いちゃダメって言ってるでしょ」

 耳朶を二、三度食んだあと、歯を立てる。太い首筋に唇で触れていき、そこにも歯を立てた。

「っ……きよみちゃん、それちょっと」
「痛かった?」
「いや、痛くはないけど……」
「じゃあ、もうちょっと強くしなきゃ」

 そう言って、きよみは宣言通り、鋭く噛みついた。

「うあっ」
 悲鳴と共に、彼の肩がわずかに跳ねた。
「なに、これってきよみちゃんの性癖?」
「どうかしら」
 噛みついた箇所に口づけ、肩口や鎖骨にもキスを落とす。彼を見つめて微笑んで見せると、また笑みを返してくる。

 胸板に手を乗せ、波打つように指を左右に揺らしながら、手を上下に移動させる。硬くなっている胸の突起の周りをくるくると円を描くように指で撫でれば、切なげな眼差しを向けてくる。見せつけるように舌でも周囲を舐めれば、堪えかねるように彼は喘いだ。

「あのさ……これって仕返し?」
「かもね」
 そんな小さなものではない。きよみは口端を上げて見せるが、心は怒りで燃えていた。
「……いいね。こっち側になることはあんまないけど、悪くはない」
 きよみは嘲るように笑った。
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