瓦解する甘い盾

流音あい

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八度目の接触、対等な恋人

30、制裁

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「はぁ、ちが……ぅんっ……」
「何が違うの。こんなに感じちゃってるのに」

 胸が弱いと言われて反論したいのに、上手く言葉が紡げない。絶妙な強弱による刺激と、快感を逃がせない体勢のせいで、言語能力を司る機能が働かない。加えて押し寄せる快楽の波にのまれそうになり、頭が朦朧としてくる。

「はぁ、ぁあっ……だめ、まって」
「その『まって』は、『もうイきそうだから待って』って意味だよね。いじりすぎて痛いって言うならやめてあげるけど。どっち?」

 試すような言い方をされ、一瞬きよみの中の反発心が顔を出す。けれど頭で考えている間にも手の動きは止まらず、止まない快感に、嘘を吐く余裕はない。

「まっ、あぁっ! はっ、んぁ……っ」
 彼の手に自分の手を重ね、引き剥がそうとしたけれど敵わない。止まない官能になんとか抗おうとしたけれど、結局身体は耐えられず、びくびくと震えて達してしまった。弛緩する彼女の身体に、それを悟った彼は、漸く手を止めた。


 荒い呼吸でぐったりする彼女に、彼は優しく寄り添った。余裕に思えるけれど今お尻に当たっている硬いものは、彼自身に違いない。彼だって持て余す熱を発散したいはずなのに。

「あ、俺今日まだきよみちゃんの胸にキスしてない。きよみちゃん胸弱くて、手のマッサージだけでイっちゃったから、そんな暇なかったもんね」

 からかうような声色に、体力が復活しつつあったきよみの反骨精神も、顔を出す。

「先輩が言うほど胸弱いわけじゃないですよ私は。今のは体勢が悪かったでしょ。先輩ががっちり押さえてくるから」
「あーあ、そういえばこの体勢って初めてだったよね。刺激強かった?」

 のんきな声が明るく聞いてくる。きよみはむっとして、彼が嫌がりそうな話題を持ち出した。

「そういえば先輩、今日はまだ勝負してませんでしたよね。今から勝負しましょうか」

 にこにこ笑っていた彼の表情が、次第に曇っていく。

「え、あの、俺が負けたら別れる、てやつ? 本気じゃないよね」
「本気です」
「いやいやいや。っていうか、今からなら、俺の方がどう考えて不利だよね。一度もイってないし、俺もうこんなんなんだけど」

 自分の下半身を示して焦ったように言う。きよみはつんと澄まして言った。

「自業自得でしょ。先輩、さっき私がまってって言ったのに、聞いてくれなかったし」
「だから確認したじゃん、痛かったら止めるって」
「痛かったらとかじゃなくて、止まって欲しかったの、私は」
「なんで」
「一緒にイきたかったからよ」

 いつもそうだ。やむを得ずイってしまうのは仕方ないが、彼はそもそも挿入しようとしないし、一方的に相手を高みに追い立てるのを楽しんでいる。一緒に達したい相手の気持ちを無視して。だから反抗心が駆り立てられるのだ。
 そういう傲慢な意地悪さがなければ、片方がイってしまうのは仕方がないと、受け入れられるのに。

「イっちゃったのは、きよみちゃんじゃん」
「だからそれは! じゃあ私がイかなかったら先輩、途中で止めてくれた?」

 彼の沈黙は、雄弁に答えを示す。

「結局イくまで止めないんでしょう。それが気に入らないの私は。だから勝負するんです」
「……ええ?」

 情けない声を出す彼だったが、その下半身はいきり立ったままだった。
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