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八度目の接触、対等な恋人
32、必要だった盾
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「やっぱり先輩、すぐには入れなかったじゃない」
「いきなり入れるのは、まずいかなってさ。ちゃんと解さないと」
「十分解してたでしょ」
「指ではね。舌ではまだだったから」
悪びれることなく言ってのける彼に、きよみは気怠い身体で精一杯睨んでみせる。
「先輩の負けです」
「負けじゃないよ。勝ってもないけど勝負はしてなかったもん」
「ずるいですよ、そんなの」
「不利な条件出したきよみちゃんの方がずるいよ」
言い返しながらも、彼は頬にキスをしてくる。からかわれているようで、気に入らない。
「先輩きらい」
「それ言わないでってば」
「何度でも言いますよ。先輩ずるいもの。嘘つくし、卑怯だし」
「すぐ入れなかったから? じゃあ今度はすぐ入れるよ。今からする? 俺まだ一回しかイってないし」
「今日はもう無理。何回イったかわかんないし」
「そんなにイってたんだ? それは気付かなかったな」
彼の肩をばしっと叩く。
「じゃあしどけないきよみちゃんを見ながら、自分で処理するしかないか」
彼はうつ伏せの彼女に覆い被さり、太ももに自身を擦りつけ始めた。
「そんなに元気なら、さっさと入れちゃえばよかったのに」
「よがってるきよみちゃんを見てるとついね。もっと見てたくなっちゃうし、イかせたくなっちゃうんだよ」
荒い呼吸で、腰を動かしながら、そんなことを言う。きよみは顔だけ彼を振り返る。
「あとどれくらいでイキそう?」
「さあ、どうだろ。手伝ってくれる?」
彼が後ろから耳を食み、肩口にキスをする。
「触って欲しいの?」
「ん、っていうか、入れたい」
「我慢するんじゃなかった?」
「きよみちゃんがホントに無理ならね」
彼の腰は絶えず動いている。振動だけが伝わってきて、疲れているはずの身体が、なんだかもどかしくなってくる。
「ゴムは付けてる?」
「まだ。入れていいなら付けるよ」
「付けて」
すぐさま身体が離れた。背後で何かしている音がする。
「このまま入れていい?」
「ゆっくりね」
背後から、彼が入り込んでくる。また焦らされるかと思ったが、今度は本当にすぐに入れてきた。
「やっぱりきよみちゃんの中、最高」
繰り返される出入りに、きよみはシーツを握りしめる。疲れているのにまだ官能を貪れる自分の身体に驚いた。
やがて本日何度目かの絶頂を迎えると、全身に言い知れぬ高揚感と満足感が拡がった。挿入による達成感は、やはり彼女にとって格別だった。
「大丈夫? きよみちゃん。無理させちゃった?」
「いつも無理させてるでしょ」
「そう?」
すっきりした様子の彼に、きよみは力なく恨みがましい目を向ける。それでも身体は心地良い疲労感に満たされていた。
「やっぱり私は中でイきたいの。今度から最初の一回は全部先輩が下ね。私が先に入れてあげる」
「いやいや、毎回最初の体勢決まってるのとか、つまらないじゃん?」
「先輩が一方的なのが悪いんでしょ。っていうか次ヤるときは勝負だからね」
「またやるの? あれ止めようよ」
「先輩が勝手なことばっかするからでしょ。前は大人しくしてたじゃない。手でしてあげたときとか」
「あのときは、きよみちゃん上に乗ってなかったじゃん」
「乗ってたらダメなの?」
「乗ってたら動いちゃうじゃん。我慢できなくなっちゃうよ。押し倒したくなる」
「でもそのあとも、途中までは大人しくしてたことあったのに」
「途中まではね。なんとか頑張れるときもあるけど、最後までってのは無理だよ」
「じゃ、縛る?」
「そういうプレイはしたことないけど」
「私だってありませんよ」
「……今せっかく敬語抜けてたのに、なんで急に戻るの」
「なんででしょうね」
「次の勝負はしてもいいけどさ、やっぱ名前呼びにしようよ。別れるとかじゃなくて。ね?」
答えない彼女に、彼は、ね? と念を押してくる。
「……次のことは次の時に考えます」
彼がにっこりと無邪気に笑う。こういうときの彼は本当に爽やか好青年のようだ。
「やっぱり先輩は存在が卑怯ですね」
「どういう意味?」
きよみが不機嫌な表情を向けていても、彼は楽しそうだった。
彼には未だ勝ったと思えていないが、負けたとも思っていない。男女差のある体格では、どうしたって力の差も生まれるし、それによる精神的な力加減も加われば、対等というのは難しい。
ただ、今まで彼に対して作っていた防御壁は、もう必要ない気がした。
ベッドの上だけに現れる本質と、何気ない日常で触れた彼の心は、きよみにとって、そう悪いものではなかった。
彼にコントロールされるのではないかと警戒し、身を委ねることに恐れがあったが、今はその感覚は薄れてきている。
硬い彼で貫かれるとき、いつも心で必死に構えていた盾は、今は役目を終えたらしい。
それはきっと、彼と対等である証。口ではまだ勝負と言っているが、振り回される可能性すら、今では楽しめる余裕があった。それを受け入れられるなら、もう不安も恐怖もない。
微笑む彼を見ていると、せっかく作ったうわべだけの怒り顔が崩れてしまう。
甘えるようにすり寄ってきた彼に抱き締められて、きよみはくすくすと笑い声をもらした。
「いきなり入れるのは、まずいかなってさ。ちゃんと解さないと」
「十分解してたでしょ」
「指ではね。舌ではまだだったから」
悪びれることなく言ってのける彼に、きよみは気怠い身体で精一杯睨んでみせる。
「先輩の負けです」
「負けじゃないよ。勝ってもないけど勝負はしてなかったもん」
「ずるいですよ、そんなの」
「不利な条件出したきよみちゃんの方がずるいよ」
言い返しながらも、彼は頬にキスをしてくる。からかわれているようで、気に入らない。
「先輩きらい」
「それ言わないでってば」
「何度でも言いますよ。先輩ずるいもの。嘘つくし、卑怯だし」
「すぐ入れなかったから? じゃあ今度はすぐ入れるよ。今からする? 俺まだ一回しかイってないし」
「今日はもう無理。何回イったかわかんないし」
「そんなにイってたんだ? それは気付かなかったな」
彼の肩をばしっと叩く。
「じゃあしどけないきよみちゃんを見ながら、自分で処理するしかないか」
彼はうつ伏せの彼女に覆い被さり、太ももに自身を擦りつけ始めた。
「そんなに元気なら、さっさと入れちゃえばよかったのに」
「よがってるきよみちゃんを見てるとついね。もっと見てたくなっちゃうし、イかせたくなっちゃうんだよ」
荒い呼吸で、腰を動かしながら、そんなことを言う。きよみは顔だけ彼を振り返る。
「あとどれくらいでイキそう?」
「さあ、どうだろ。手伝ってくれる?」
彼が後ろから耳を食み、肩口にキスをする。
「触って欲しいの?」
「ん、っていうか、入れたい」
「我慢するんじゃなかった?」
「きよみちゃんがホントに無理ならね」
彼の腰は絶えず動いている。振動だけが伝わってきて、疲れているはずの身体が、なんだかもどかしくなってくる。
「ゴムは付けてる?」
「まだ。入れていいなら付けるよ」
「付けて」
すぐさま身体が離れた。背後で何かしている音がする。
「このまま入れていい?」
「ゆっくりね」
背後から、彼が入り込んでくる。また焦らされるかと思ったが、今度は本当にすぐに入れてきた。
「やっぱりきよみちゃんの中、最高」
繰り返される出入りに、きよみはシーツを握りしめる。疲れているのにまだ官能を貪れる自分の身体に驚いた。
やがて本日何度目かの絶頂を迎えると、全身に言い知れぬ高揚感と満足感が拡がった。挿入による達成感は、やはり彼女にとって格別だった。
「大丈夫? きよみちゃん。無理させちゃった?」
「いつも無理させてるでしょ」
「そう?」
すっきりした様子の彼に、きよみは力なく恨みがましい目を向ける。それでも身体は心地良い疲労感に満たされていた。
「やっぱり私は中でイきたいの。今度から最初の一回は全部先輩が下ね。私が先に入れてあげる」
「いやいや、毎回最初の体勢決まってるのとか、つまらないじゃん?」
「先輩が一方的なのが悪いんでしょ。っていうか次ヤるときは勝負だからね」
「またやるの? あれ止めようよ」
「先輩が勝手なことばっかするからでしょ。前は大人しくしてたじゃない。手でしてあげたときとか」
「あのときは、きよみちゃん上に乗ってなかったじゃん」
「乗ってたらダメなの?」
「乗ってたら動いちゃうじゃん。我慢できなくなっちゃうよ。押し倒したくなる」
「でもそのあとも、途中までは大人しくしてたことあったのに」
「途中まではね。なんとか頑張れるときもあるけど、最後までってのは無理だよ」
「じゃ、縛る?」
「そういうプレイはしたことないけど」
「私だってありませんよ」
「……今せっかく敬語抜けてたのに、なんで急に戻るの」
「なんででしょうね」
「次の勝負はしてもいいけどさ、やっぱ名前呼びにしようよ。別れるとかじゃなくて。ね?」
答えない彼女に、彼は、ね? と念を押してくる。
「……次のことは次の時に考えます」
彼がにっこりと無邪気に笑う。こういうときの彼は本当に爽やか好青年のようだ。
「やっぱり先輩は存在が卑怯ですね」
「どういう意味?」
きよみが不機嫌な表情を向けていても、彼は楽しそうだった。
彼には未だ勝ったと思えていないが、負けたとも思っていない。男女差のある体格では、どうしたって力の差も生まれるし、それによる精神的な力加減も加われば、対等というのは難しい。
ただ、今まで彼に対して作っていた防御壁は、もう必要ない気がした。
ベッドの上だけに現れる本質と、何気ない日常で触れた彼の心は、きよみにとって、そう悪いものではなかった。
彼にコントロールされるのではないかと警戒し、身を委ねることに恐れがあったが、今はその感覚は薄れてきている。
硬い彼で貫かれるとき、いつも心で必死に構えていた盾は、今は役目を終えたらしい。
それはきっと、彼と対等である証。口ではまだ勝負と言っているが、振り回される可能性すら、今では楽しめる余裕があった。それを受け入れられるなら、もう不安も恐怖もない。
微笑む彼を見ていると、せっかく作ったうわべだけの怒り顔が崩れてしまう。
甘えるようにすり寄ってきた彼に抱き締められて、きよみはくすくすと笑い声をもらした。
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