代役の花嫁

もちうさ

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見えなかった5分間

 理沙はじっと画面を見つめていた。

──美緒が、命と引き換えに残した映像。

そこに映っていたのは、式場の裏庭。
夜の闇に沈むその場所で、誰かが美緒に近づいていた。

「この影……光さん、じゃない……」

理沙の声が震える。

画面の中で、美緒は何かを問い詰めていた。
言葉までは拾えない。だが、身振りと表情から、緊張感が伝わってくる。

──美緒の手には、小さなUSB。
──その相手は、それを奪おうとする。

そして次の瞬間──もうひとつの影が背後から飛び出し、美緒に向かって腕を伸ばす。
画面が大きく揺れ、何かがぶつかる音。
叫び声。そして、暗転。

映像は、そこで終わっていた。

「……このもうひとつの影が、犯人……?」

陽介は、録画を巻き戻し、フレーム単位で確認していく。

「……この体格、この動き……どう見てもプロの動きじゃない。でも、素人とも違う。知ってる動きだ……」

理沙は、頭を押さえてうずくまった。

「……私、このとき、近くにいた。確かに。……でも、思い出せない……!」

その瞬間、陽介のスマホにメッセージが届いた。

件名:まだ気づいていないだろ?
差出人:光(仮名)

本文:
『姉さん。あの夜、あなただけが覚えていないことがある。美緒は、前のカップルの死の真相を知ってしまった。だから──消された。あなたも、その記録の中にいる。』

「……どういう意味……?」

理沙の視線が泳ぐ。

 陽介は、もう一度USBの中を確認する。
先ほどのフォルダとは別に、隠しフォルダが見つかった。

中には、ひとつの動画と、テキストファイル。

再生を押すと──画面に映ったのは、数か月前の式場のリハーサル映像だった。

祭壇の前に立つ、新郎新婦らしきカップル。
その少し離れた場所に、別の人物が立っている。
──カメラマンの光だった。

「……これ、前のカップル……?」

理沙がつぶやく。

そして、映像の中。
新郎が階段を降りた瞬間、誰かの手が背中に伸び

──突き飛ばされる。

悲鳴と共に、新婦が駆け寄り──そのままふたりは、階段の下へ。

映像はここで切れた。

「……美緒は、これを見たんだ。前のカップルが、事故じゃなく、殺されたって知ってしまった」

陽介が声を潜める。

理沙の脳裏に、あの晩の言葉が蘇る。

──「私、気づいちゃったの。式場にはおかしな記録がある」
──「カメラマンさんが見ちゃったの」
──「でも、誰も信じてくれないと思って……」

理沙の手が震えた。

「……じゃあ、美緒はその記録を持ち出そうとして、誰かに……」

「止められた。口封じのために、事故に見せかけて」

陽介が続ける。

「そして──おそらく、その真相を追い始めた理沙さんも、巻き込まれた」

「……だから、私は記憶を失っている……」

理沙の顔が青ざめていく。

「光さんは、目撃者。でも共犯じゃない。
彼はきっと、美緒を止めようとしただけだった。
でも……その場にもうひとりいた」

陽介の声が、重く落ちた。

理沙は、再び思い出そうと目を閉じた。

──崩れる音。
──悲鳴。
──あの夜、聞いた最後の声──

「……だめ……それ以上は、言わないで……!」

理沙の手が、口元を押さえた。

「……あの声、私……知ってる……!」
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