安全第一異世界生活

文字の大きさ
222 / 244
妖精との出会い

221話 白狼一家は力技で今日も爆走する①

しおりを挟む
ドゴン!!

大きな音と共に土煙が舞い上がる。土煙で辺り一面の視界が遮られる中から大きな声が森の中に響く。

「終わったぞぉ!!」

土煙の中から姿を現したのは2mを超える巨体の白狼の獣人。大剣片手にこちらにやってくる。堂々としたその姿に目を細める。
私はエルフゆえなのか、鍛えても鍛えてもまったく筋力が付かず…ギリギリとした思いで魔法師をしている。その私の傍で奴は堂々として憎らしい―――
そんな奴に、私は大きく息を吸って、精一杯の大声で声を掛ける。

「駄狼!! 素材がダメにならないようにって、あれほど言ったのに!
 また肉ダメにしただろ!? 魔石は砕いてないだろうな!」

私の言葉に耳をへにょりとした情けない顔の白狼がやってくる。近くに着いた途端私の肩を掴み引き寄せてスリッと身体をすり寄せ、話し出す。

「ササよ…伴侶を気遣う気は無いのか…」

駄狼は半分苦笑いしながら、尻尾を揺らして見上げてくる。

「駄狼は殺しても死なないから良い」

「俺は不老不死ではないから、殺されたら普通に死ぬからな。俺を何だと思ってるんだ」

大きなため息とばかりにこぼした言葉に、私たちに挟まれていた小さな少女が震える声で質問してきた。

「…旦那さん?狼?」

「あぁ、こいつは乱暴者だけど気のいい男だよ。ところでお嬢さんお怪我は?」

「大丈夫…です…」

先ほど魔獣に襲われそうなこの子を助けるための行動だったが、一般の小さな少女には恐ろしかったのだろう。早く親元に連れ帰ってあげなくては。
駄狼は少女を怖がらせないため横ではなく少し後ろを警戒しながら歩く。肩にはカナメの育てていたにんじんがくっついている。少女は抱き上げている私の肩から後ろに居るにんじんを見て、不思議そうにつぶやく。

「にんじん?」

その声と視線を感じた駄狼がニカっと笑い返事をした。

「ははは、可愛いだろ。こいつが孫に会いたくて旅をしてる所だったんだ。こいつのわがままも役に立つときがあるな嬢ちゃん」

駄狼の言葉にコクコクと縦に頭を揺らす少女に微笑みながら、私たちは近くの村まで歩いて行く。

今回カナメたちの住む辺境に進むべくドラゴンのセルジュの背に乗って移動中――
魔獣に襲われている小隊や、村、冒険者を助けながらここまで来た。
―――この少女の救出で8回目…これはほんとに何かおかしなことが起こっているのではないのか?
私の横をフヨフヨと浮かびながら辺りを見回す契約精霊のヴィーチェはずっと西の方を気にしていた。その姿を駄狼も見ながら、

「それにしてもなんだろうな…辺境に向かう途中にこう何度も魔物を見るのは…どこかで異変が起きているのかもな…」

その言葉に反応したのは、ヴィーチェ。先ほどからずっと気にしていた西の方角を見ながら考えながら話す。

『西の国だよ。地脈が乱れて大気中の魔素がおかしくなっている。小さき者達も落ち着きがない…あそこは火竜の眠る山脈があるはずだが…何かあったのかもしれないな』

「西の国…か…」

ヴィーチェの言葉に反応した私を見ながら少女は不思議そうに首を傾げた。

「お姉さん?西がどうしたの?」

契約精霊と言えど、見える人間は少ない。この少女も見えない人間なんだな…そう思いながら笑いかけた。

「あぁ…何でもないよ。独り言だ。それと―――
お嬢さん、私はお姉さんじゃなくて、お兄さんなんだよ」

少女はにんじんを見た時よりも驚いた顔をして固まった。解せぬ。
そんな私の気持ちなど知らない駄狼は飄々とおせっかいな事を言い始めた。

「ササ―ここいら辺の魔物なら普通の冒険者で対応可能だ。ちと魔物の出る森側を調べてみた方が良いかもしれんぞ」

戦いの後とは思えないほど、駄狼はいつも通りの調子だった。
まったく、この調子で聖女様に良いように使われるんだから―――

「はいはい。ただ働きはしないから。しっかり聖女様に連絡して報酬決めてから動くよ」

「はいはい。で希望は?」

ニヤニヤと私の顔を覗きながら話す駄狼にイラっとしながら要望をきっちり伝える。

「羊羹20本と新茶2kgは欲しい。あとエドから最近聖女様が作ったお芋のお菓子もおいしかったって」

「ほいほい。交渉してくるわ」

私の頭に大きな手をポンと乗っけてワシワシと優しくなでると、通信の魔道具を用意して離れながら嬉しそうに笑う。

「ほんとうちの奥さんは甘いものが好きだな。俺にもお礼とかくれるんだよな?」

「うっせ!―――交渉成功したら、夜に駄狼も甘やかしてやる…から…
――――気合い入れろよ」

「任せておけ!!楽しみだな」

「交渉成功してからぬかせ!バカ狼」

私は顔を真っ赤にして離れていく駄狼を見る。そして気づく…
少女を抱っこしたままだったことに…
おそるおそる少女に視線を向けると、私と同じように真っ赤になっていた…

意味わかったの君…
恥ずかしいぃ――――――

そんな私たちを呆れた顔でヴィーチェは見てた。超見てた!凄くあきれた残念なものを見る目で―――

『主らも変わらんの…まぁほどほどにな』

ヴィーチェはそう言うと西の森の方向を見た。
森は先ほどの戦闘が嘘のような静けさに包まれ、木々が風に揺れる。
その静けさの中、私は赤い顔のまま少女を抱き直した。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

できない子に転生しましたが、家族と食卓があれば十分です ―人間不信だった私が、ゆっくり育つ異世界生活―

愛朱ひいろ
ファンタジー
人の顔色ばかり伺い、心を壊した26歳の会社員女性。 彼女は死後、異世界で「できない子」として転生する。 魔法は使えない。 体は不器用で、成長も人より遅い。 前世の記憶のせいで、人と関わることが少し怖い。 けれどこの世界には、 見守り支えてくれる両親と、 あたたかい食卓があった。 泣いて、つまずいて、できないことに落ち込みながら、 彼女は少しずつ「できないままでも、生きていていい」と知っていく。 これは、 最強でもチートでもない主人公が、 家族と食事に支えられながら、ゆっくり育ち直す 生活密着型・異世界転生×成長×グルメファンタジー。 ……の、予定です。 毎日更新できるように執筆がんばります!

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について

いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。 実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。 ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。 誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。 「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」 彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。 現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。 それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。

『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』

鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」 幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された 公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。 その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、 彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。 目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。 だが、中身は何ひとつ変わっていない。 にもかかわらず、 かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、 「やり直したい」とすり寄ってくる。 「見かけが変わっても、中身は同じです。 それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」 静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。 やがて彼女に興味を示したのは、 隣国ノルディアの王太子エドワルド。 彼が見ていたのは、美貌ではなく―― 対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。 これは、 外見で価値を決められた令嬢が、 「選ばれる人生」をやめ、 自分の意思で未来を選び直す物語。 静かなざまぁと、 対等な関係から始まる大人の恋。 そして―― 自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。 ---

勇者召喚に失敗したと捨てられましたが、魔王の家政婦になりました。

藤 ゆみ子
ファンタジー
家政婦として働いていた百合はある日、会社の倒産により仕事を失った。 気が沈んだまま家に帰り、おばあちゃんの仏壇に手を合わせていると突然知らない場所にいた。 訳がわからないまま、目の前にいる神官に勇者の召喚に失敗したと魔王の棲む森へと捨てられてしまう。 そして魔物に襲われかけたとき、小汚い男性に助けられた。けれどその男性が魔王だった。 魔王は百合を敵だと認識し、拘束して魔王城へと連れていく。 連れて行かれた魔王城はボロボロで出されたご飯も不味く魔王の生活はひどいありさまだった。 それから百合は美味しいご飯を作り、城を綺麗にし、魔王と生活を共にすることに。 一方、神官たちは本物の勇者を召喚できずに焦っていた。それもそう、百合が勇者だったのだから。 本人も気づかないうちに勇者としての力を使い、魔王を、世界を、変えていく。

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした。今さら戻れと言われても、もうスローライフ始めちゃったんで

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、 優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、 俺は必死に、置いていかれないようについていった。 自分には何もできないと思っていた。 それでも、少しでも役に立ちたくて、 誰にも迷惑をかけないようにと、 夜な夜な一人でダンジョンに潜り、力を磨いた。 仲間を護れるなら… そう思って使った支援魔法や探知魔法も、 気づかれないよう、そっと重ねていただけだった。 だけどある日、告げられた。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、優しさからの判断だった。 俺も分かっていた。だから、何も言えなかった。 こうして俺は、静かにパーティを離れた。 これからは一人で、穏やかに生きていこう。 そう思っていたし、そのはずだった。 …だけど、ダンジョンの地下で古代竜の魂と出会って、 また少し、世界が騒がしくなってきたようです。 ◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇

処理中です...