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妖精との出会い
228話 女装イル君奮闘記③(イル視点)
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カン!カン!と宿の裏にある広い広場で赤い髪をなびかせて木剣を振るう。今は女装用のウィッグを付けているので気を付けながらレドと打ち合いをしている。昨夜お爺様と話したレドは、僕の過去の話を聞いたらしい。
朝広場に身体を動かすために出てきたら木刀を投げられた。投げられた木刀を受け取った僕を見て、レドは木刀を構えた。
「お前は馬鹿だな。不器用すぎる」
「そう…だね。―――不器用でごめんね」
僕がへらりと笑うと、構えた剣をこちらに向かって振り下ろしてきた。
カン!カン!カン!
「別に、お前のそう言う不器用な所嫌いじゃねーよ」
「僕はレドのそう言う所大好きだよ」
僕たちは打ち合いながら、笑い合う。
こういう身体を動かしながら分かり合えるの本当に楽しい。
僕たちが打ち合いをしてしばらくすると、女の子の声が聞こえてきた。
「おばあちゃん、おねーちゃんは何しているの?」
「ふふふ、あのお姉ちゃんは、やんちゃさんなのよ」
「おねーちゃんはヤンチャさんなんだ。へー」
お婆様がカミラちゃんに余計な事を教えているのを聞いて、そちらに気を取られた瞬間、首元に木刀の切っ先が軽く当たった。
「あーーーー」
「よそ見するからだ。バーカ」
「残念。今日こそはレドから一本取りたかったよ」
僕が残念そうにすると、レドは嬉しそうに笑った。
そしてお婆様と一緒にいる少女、カミラを見た。僕は、気づけばレドの一挙一動を追っていた。
彼は本物の貴族で、僕とは違う。
カミラに何か言うんじゃないかと――胸がざわついた。
そんな僕の胸の内を知らないレドは、少女の前まで行って、片膝をついてしゃがみ込んだ。
「ちび、無事起きたんだな。飯しっかり喰えよ」
少し鋭い目のレドを見て、カミラちゃんはびくりと肩を震わせ、お婆様の後ろへ隠れてしまった。
―――― そんなカミラちゃんは、お婆様の足元からおずおずと少し顔を出して、
「はい。ごはん食べたいです」
と、可愛らしく返事をしてくれた。
レドが優しく声をかけてくれたことも、
カミラちゃんがちゃんと返事をしてくれたことも――
その全部が嬉しくて、胸がじんわりと熱くなった。
その後すぐに皆で食事をとった。
―――けれど、カミラちゃんはスープしか飲めなかった。固形物を食べて気持ちが悪くなっていた。
「おいしいのに…食べれない…」
食事を前にぽとぽと泣き出した少女は、しばらく食べていなかったせいで胃が凄く小さくなっているらしい。小刻みに少しずつ食事をしてもらおうとみんなで決めた。
今日はカミラちゃんの体調を考慮して出発を一日延ばすことにした。
そして、これからの旅行に必要なカミラちゃんのモノをお婆様と侍女、その護衛の冒険者って感じで、僕とレドも一緒に動く。
お爺様だけはせっかく来たので、ここを治める領主様に会いに行っている。
カミラちゃんは寝かしておこうと思ったんだが、僕から離れない為、抱っこして買い物に行く事に。
洋品店に入るとお婆様と侍女は嬉しそうに服を選び、カミラちゃんにこれが良い?どうかしら?と当てていく。きれいな色の服をみてカミラちゃんも終始笑顔だ。
ずっと抱きかかえておくつもりだったのに、楽しいせいか、僕から降りてお婆様と侍女のもとに行って三人で楽しそうにしている。
「奥様、カミラさんのお色に合わせるならベージュではないでしょうか?」
「ソナ、私は白が良いと思うの。清楚で可憐で天使みたいだわ」
「キレーね。かわいいねー。ミー全部好き」
「あら、それじゃあこちらもどうかしら?」
これは長くなりそうだ――僕とレドは遠い目をしたよね。
でも…レドが女性の買い物に付き合うのが意外だった。
「レド…暇じゃない?」
「女性の買い物はこんなもんだろ。姉様も母上も、従妹もこんな感じだぞ。半日は大体耐えてる」
「レドが?付き合い良いんだ。やっぱり優しいね。フフフ」
僕が笑うと肘でこずいてくる。
「笑ってんじゃねーよ」
と、仏頂面して怒るレドは思ったより可愛いな。ひとしきり笑っていると、お婆様達の買い物を見ながらレドは言う。
「買い物ってのはな、大体ストレス溜まってる時に行くもんなんだよ。
家のこととか、夫婦関係とか、付き合いとか…まぁ色々あるらしい。
ほっとくと暴走するから、うちでは誰かがストッパーするのが決まりなんだよ」
優しそうに笑いながら言うレドに、僕はやっぱりまた吹き出し笑いをしてしまう。
「ふははは、そういう事にしておくよ」
この日は、旅の休息日のような穏やかな時間が流れた。
僕やレドだけじゃない。昨日あんなに泣いたカミラちゃんが笑ってくれたこと。
そして、お母さまを亡くして気落ちしていたお婆様や、侍女のソナの笑顔まで見られたこと――。
胸の奥がじんわりと満たされていく。
こんな気持ちになるのは、
トーさんとカナに「家族だよ」と言ってもらえた時と、どこか似ているからだ。
―――神様。どうか、今日のような笑顔の日々が、これからも曇ることなく続きますように―――
朝広場に身体を動かすために出てきたら木刀を投げられた。投げられた木刀を受け取った僕を見て、レドは木刀を構えた。
「お前は馬鹿だな。不器用すぎる」
「そう…だね。―――不器用でごめんね」
僕がへらりと笑うと、構えた剣をこちらに向かって振り下ろしてきた。
カン!カン!カン!
「別に、お前のそう言う不器用な所嫌いじゃねーよ」
「僕はレドのそう言う所大好きだよ」
僕たちは打ち合いながら、笑い合う。
こういう身体を動かしながら分かり合えるの本当に楽しい。
僕たちが打ち合いをしてしばらくすると、女の子の声が聞こえてきた。
「おばあちゃん、おねーちゃんは何しているの?」
「ふふふ、あのお姉ちゃんは、やんちゃさんなのよ」
「おねーちゃんはヤンチャさんなんだ。へー」
お婆様がカミラちゃんに余計な事を教えているのを聞いて、そちらに気を取られた瞬間、首元に木刀の切っ先が軽く当たった。
「あーーーー」
「よそ見するからだ。バーカ」
「残念。今日こそはレドから一本取りたかったよ」
僕が残念そうにすると、レドは嬉しそうに笑った。
そしてお婆様と一緒にいる少女、カミラを見た。僕は、気づけばレドの一挙一動を追っていた。
彼は本物の貴族で、僕とは違う。
カミラに何か言うんじゃないかと――胸がざわついた。
そんな僕の胸の内を知らないレドは、少女の前まで行って、片膝をついてしゃがみ込んだ。
「ちび、無事起きたんだな。飯しっかり喰えよ」
少し鋭い目のレドを見て、カミラちゃんはびくりと肩を震わせ、お婆様の後ろへ隠れてしまった。
―――― そんなカミラちゃんは、お婆様の足元からおずおずと少し顔を出して、
「はい。ごはん食べたいです」
と、可愛らしく返事をしてくれた。
レドが優しく声をかけてくれたことも、
カミラちゃんがちゃんと返事をしてくれたことも――
その全部が嬉しくて、胸がじんわりと熱くなった。
その後すぐに皆で食事をとった。
―――けれど、カミラちゃんはスープしか飲めなかった。固形物を食べて気持ちが悪くなっていた。
「おいしいのに…食べれない…」
食事を前にぽとぽと泣き出した少女は、しばらく食べていなかったせいで胃が凄く小さくなっているらしい。小刻みに少しずつ食事をしてもらおうとみんなで決めた。
今日はカミラちゃんの体調を考慮して出発を一日延ばすことにした。
そして、これからの旅行に必要なカミラちゃんのモノをお婆様と侍女、その護衛の冒険者って感じで、僕とレドも一緒に動く。
お爺様だけはせっかく来たので、ここを治める領主様に会いに行っている。
カミラちゃんは寝かしておこうと思ったんだが、僕から離れない為、抱っこして買い物に行く事に。
洋品店に入るとお婆様と侍女は嬉しそうに服を選び、カミラちゃんにこれが良い?どうかしら?と当てていく。きれいな色の服をみてカミラちゃんも終始笑顔だ。
ずっと抱きかかえておくつもりだったのに、楽しいせいか、僕から降りてお婆様と侍女のもとに行って三人で楽しそうにしている。
「奥様、カミラさんのお色に合わせるならベージュではないでしょうか?」
「ソナ、私は白が良いと思うの。清楚で可憐で天使みたいだわ」
「キレーね。かわいいねー。ミー全部好き」
「あら、それじゃあこちらもどうかしら?」
これは長くなりそうだ――僕とレドは遠い目をしたよね。
でも…レドが女性の買い物に付き合うのが意外だった。
「レド…暇じゃない?」
「女性の買い物はこんなもんだろ。姉様も母上も、従妹もこんな感じだぞ。半日は大体耐えてる」
「レドが?付き合い良いんだ。やっぱり優しいね。フフフ」
僕が笑うと肘でこずいてくる。
「笑ってんじゃねーよ」
と、仏頂面して怒るレドは思ったより可愛いな。ひとしきり笑っていると、お婆様達の買い物を見ながらレドは言う。
「買い物ってのはな、大体ストレス溜まってる時に行くもんなんだよ。
家のこととか、夫婦関係とか、付き合いとか…まぁ色々あるらしい。
ほっとくと暴走するから、うちでは誰かがストッパーするのが決まりなんだよ」
優しそうに笑いながら言うレドに、僕はやっぱりまた吹き出し笑いをしてしまう。
「ふははは、そういう事にしておくよ」
この日は、旅の休息日のような穏やかな時間が流れた。
僕やレドだけじゃない。昨日あんなに泣いたカミラちゃんが笑ってくれたこと。
そして、お母さまを亡くして気落ちしていたお婆様や、侍女のソナの笑顔まで見られたこと――。
胸の奥がじんわりと満たされていく。
こんな気持ちになるのは、
トーさんとカナに「家族だよ」と言ってもらえた時と、どこか似ているからだ。
―――神様。どうか、今日のような笑顔の日々が、これからも曇ることなく続きますように―――
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