悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人

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第28話 リンゴと物々交換

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「ごめんね、遅くなっちゃって」
「お、帰ってきたな。どや、お嬢ちゃん。色々集めて来たで」

 森へ移動すると、さっそくダニエルが近寄ってきて、倉庫魔法から色々と出し始めた。

「先ずは、このキングホワイトスネークの皮や」
「……蛇の皮? だ、大丈夫なの?」
「あぁ、皮って言うても脱皮したやつやから大丈夫や。本人としては、ゴミみたいなもんやから、持って行ってくれって言うてな」

 蛇の抜け殻かぁ。
 ときメイでは、そんなドロップアイテムは無かったから、どれくらいで買い取ってもらえるかは未知数だけど、大きな蛇みたいだし、良いんじゃないかな?

「それから、お次はコレや」
「えーっと、大きな鳥の羽?」
「せや。けど、ただの鳥とはちゃうで! 何とロック鳥の羽や!」
「えっ!? 凄い! あの、めちゃくちゃ大きな鳥だよね?」
「そうそう。これも、元々抜け落ちてたやつと交換してもろてるから、お嬢ちゃんは何も気ぃ使わんでえーからな?」
「そうなんだ。ありがとう!」
「はっはっは。ワイとお嬢ちゃんの仲やないか。気にしたらあかんで」

 そう言って、次から次へと色んな物を出してくれる。
 しかし、ヒート・プレートの価格を聞いていなかったのは失敗だったなー。
 ロック鳥の羽は、ときメイでも出て来るから、この話一つで、買取価格が銀貨五枚だという事を知っている。
 仮にダニエルが持って来てくれた物が全部ロック鳥の羽と同じくらいの価値だとすると、銀貨五十枚くらいになるんだけど、それだけあれば流石に買えるよね?
 いや、ゲームに登場していない生活用品なんて、全然価格が分からないから、ただの希望なんだけどさ。

「あれ? そういえばセシルは?」
「いや、見てへんから未だ帰って来てへんのとちゃうか?」
「うーん。大丈夫かなー? セシルは元々道に迷って帰れなくなっちゃったんだよね。また迷子になっていなければ良いんだけど」
「せやなー。もーちょっと待って戻って来ーへんかったら、探しに行ってこよか?」
「そうね。悪いけどお願い!」

 一先ず、ダニエルが持ってきてくれた物を倉庫魔法で収納し、お礼……という程でもないけど、リンゴを生やして、ダニエルにあげる。
 あと、大豆が好きって言っていたので、大豆の苗を生み出し、昨日ダニエルが耕してくれた場所の端へ植えてみた。
 育て方は良くわかっていないけど、水をあげて、木魔法で成長させると、あっという間に沢山の豆が実る。

「えっと、確か今の緑色の状態だと枝豆なのよね。これを更に成長させると大豆に……」
「おっ! ワイの好きな豆やないか! お嬢ちゃん、ありがとうな」

 そう言って、早速ダニエルが食べ始めちゃったけど……まぁ今回はダニエルにあげるつもりで植えたから良いか。
 ただ、ダニエルはこの前の事を、もう忘れちゃったのかな?
 そんな事を考えていると、

「お姉ちゃーん! お待たせー!」
「セシル! 良かった、心配したのよ……って、えっと、お父さん?」

 ダニエルが大きな熊と一緒に現れた。

「はじめまして。セシルの母です。この度、うちのセシルがお世話になったようで」
「お姉ちゃんのリンゴと何かを交換してくれないかなーって、歩いてたら、ママに会えたんだー!」
「良かった。迷子じゃなくて、お母さんに会えたんだね。本当に良かった」

 親子の感動の再会を想像して泣きそうになっていたら、セシルのお母さんが、何かかを地面にそっと置く。

「あの、こちらセシルがお世話になったのと、美味しいリンゴをいただいてしまったので、そのお礼です」
「ママったらね、お姉ちゃんのリンゴが美味し過ぎて、沢山食べちゃったんだよー」
「そ、それは内緒って言ったじゃない」

 ふふっ、仲が良さそうで何よりだと思いながら、微笑ましく様子を見ていると、セシルが改めて受け取って欲しいと言ってきたので、置かれた物に目をやり、

「え? これって……まさかハチミツですか!?」
「はい。あのリンゴには敵いませんが、甘くて美味しいですよ」

 大きな竹のカップに並々と入った、ハチミツをいただいてしまった。
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