悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人

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第45話 疑われるルーシー

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――ドンドン! ドンドンドンドン!

 翌朝。突然扉がノック……というか、激しく叩かれ、目を覚ます。
 何事かと考え、今日が週末だという事を思い出した。

「はいはいはい……ちょっと待ってね」
「……おはようございます。ルーシーさん……休日とはいえ、ちゃんと起きましょうね。来客ですよ」
「あははは……が、頑張ります」

 パジャマ姿のままで扉を開けると、寮長さんが呆れながらテレーズさんを案内してくれた。

「おはようございます、ルーシー様。相変わらずのお姿ですね」
「テレーズさん。その……いろいろと忙しくて、寝る時間が遅くなっちゃうから」
「そうですか。……ところで、少しお伺いしたい事があるのですが」
「あ、ローランドさんの事だよね? 明日のお昼に会う約束を取り付けておいたわよ」
「ありがとうございます。ですが、それとは別のお話です」

 別の話?
 テレーズさんはずっとルーシーの家に居た筈だけど、なんだろう?
 でも、ときメイの中だと、家に居るはずのテレーズさんが、何故かルーシーのやらかした事を知っていて、主人公へお詫びの品を持って謝りに来るんだよね。
 ……という事は、知らない間に私が何かやらかしていて、実家に連絡がいっていたっていう事なのかな?

「えーっと、テレーズさん。わ、私……何かやっちゃいました?」
「それはこちらが聞きたいのですが。ルーシー様、一体何をされたんですか?」
「えっ!? な、何が!? 一体、どういう話になっているの?」
「わかりません。ただ、ケヴィン王子様の部下だと名乗る騎士見習いの男性がお屋敷に来られ、ルーシー様の事を細かく訪ねて来られましたので」
「あ、そういう話か。何だ、ビックリしちゃった」

 昨日も、火魔法の授業の教室で、ケヴィン王子と一緒に居る人が、話し掛けてきたもんね。
 ……かなり失礼な事を聞かれたけど。

「えーっと、ケヴィン王子様ですよ? 王族の方から調査を受けるだなんて、一体何があったのですか? ご主人様からも、ルーシー様からお話を聞いて来るように言われておりまして」
「その騎士の人は何か言っていなかったの?」
「一応、調査の理由は仰っていましたが……ケヴィン王子様がルーシー様に興味を持たれたからだと」
「興味……突然、どうしてなんだろうね? 一応、今週起こった事を話すとね……」

 一先ずテレーズさんに、体育館裏――ほんとうはホール裏だけど――でのケヴィン王子との出会いについて話し、続いて魔法大会で優勝した事を話す。
 とりあえず、ケヴィン王子が私に興味を持つ理由なんて、この二つくらいしかないはずだからね。

「ルーシー様を部下に……ですか」
「うん。まぁ断ったけどね」
「……それは受けた方が良かったのではないでしょうか? 女性で、しかも魔法を得意とされるのであれば、階級は騎士でも、実際に働く場所は宮廷魔道士とかでしょうし」
「えっ!? そうなるの!? というか、お城に居る宮廷魔道士とかって、全員騎士なの?」
「正しく言うと、騎士以上の爵位は授かっているかと。公爵令嬢で宮廷魔道士をされている女性だって居ると思いますし」

 そうなんだ。
 知らなかった……というか、ときメイの世界の階級制度なんて知らないわよっ!
 設定上、ルーシーが伯爵令嬢だっていうのは知っているけど、それ以外は王族とか貴族とかって表現だしさ。

「あと、魔法大会優勝は本当なのですか?」
「うん。それは本当だよ。ほら、これ……優勝賞品で貰った腕輪だよ」
「こ……これですかっ!? る、ルーシー様。これ、王家の紋章が記されていますよ!? 偽装は死罪かと……」
「偽装じゃないってば! 本当に賞品としてもらったんだからっ!」

 残念ながら、テレーズさんが魔法大会優勝の話を信じてくれなかった。
 ルーシーって、そんなに魔法が不得手なんだっけ? ……あー、ときメイでは苦手って設定だった気がしてきた。
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