悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

第５３話 見られていたルーシー

　翌日。いつもの様に授業を受け、お昼休みに。
　今日は何を食べようかなと考えながら食堂へ移動すると、何やら物凄く混雑していた。
　何かあったのかなと思いながら、近くの人に聞いてみると、誰かが食堂を貸し切っているのだとか。

「何それ！？　めちゃくちゃ迷惑な話ね！」
「一応、オープンカフェみたいな感じで、外にテーブルが出されていて、そこで食事は出来るみたいだけどね」

　まったく。何処の貴族か知らないけど、何を考えているの！？
　中を覗いてみると、食堂の中が一流レストランのように装飾されていて、テーブルや椅子も何処からか持って来たであろう物と換えられていた。
　これだけ手の込んだ事をするくらいなら、そういうお店に行けば良いのに。
　そんな事を思いながら、かなり長蛇になっている食堂の列に並んでいると、

「おぉ、来たか！　待っていたよ」

　何処かで聞いた事のある声が響く。
　誰か知らないけど、皆に迷惑をかけている張本人は誰かと思って目をやると……ケヴィン王子！？
　確かに王子様なら、こういう無茶な事も通るんだろうけど、だからこそ変な事はしないでもらいたいんだけど。
　ケヴィン王子は一体誰を待っていたのかと考え……ときメイの主人公アメリアだという事に気付く。
　だけど、こんなイベントはあったかな？　と思いながら様子を伺っていると……あれ？　こっちに近寄って来た。
　近くにアメリアが居るのかな……とも思ったんだけど、見当たらない。
　アメリア以外とくっつくルートなんて無かったと思うんだけど……って、いつの間にかケヴィン王子が私の側に居て、列に並んでいた人たちが距離を取ってる！？

「さぁ、ルーシー。おいで。君の為に用意したんだ」
「えっ！？　えぇっ！？　わ、私ですかっ！？　えっと、アメリアさんにではなくて？」
「アメリア？　……誰だ？」

　あ、あれ？　アメリアは攻略対象のケヴィン王子と出会ってないの！？
　とりあえず、ケヴィン王子ルートに進んで居ない事はわかったけど、それよりどうしてケヴィン王子は、今私の所へ来ているの！？

「それより、食事にしようではないか」
「あ、あの。どうして、いきなりこんな事を？」
「ん？　あぁ、いつもルーシーが放課後にクラブへ行ってしまって、俺に付き合ってくれないだろう？　昼食ならば時間が取れると思ってな」
「お昼なら確かに時間はあります。でも、食堂をこんな風にしてしまうと……」
「なに。ちゃんと元に戻すとも。それに、昨日も同じ様な事をしておったではないか」

　……え？　えーっと、昨日ってローランドさんとの昼食の事！？
　ケヴィン王子か騎士の人たちかは分からないけど、他の人たちに見られていたの！？
　な、何だか物凄く恥ずかしいんだけどっ！
　そんな事を思っている間に、いつの間にかケヴィン王子に手を取られ、食堂の列からテーブル席へとエスコートされていた。
　えっ！？　待って！　学園の食堂の窓や扉から、物凄く見られているんだけどっ！

「今日は、急遽家から料理人を呼び寄せたんだ」

　いや、それって、宮廷料理人ですよねっ！？
　たぶん……というか、絶対に凄い人ですよねっ！？
　食堂では、皆の……学生の昼食も作っていると思うんだけど、大丈夫なのっ！？
　メイドさんも十人くらい居て、何から何までやってもらえるし、今まで食べた事の無いような物凄く豪華な料理が出てきたはずなんだけど、周囲の視線とか、申し訳なさとかで、全く味がわからず、何を話したかも覚えていない状態で、お昼休みが終わってしまった。