悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人

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第56話 お泊り

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「えぇー!? お姉様……もう帰ってしまわれるのですか!?」

 リゾットを食べ、人の姿になってしまったダニエルとセシルを元の姿に戻した後、寮の様子を見に行こかと思っていたら、ナーシャちゃんに全力で抱きつかれてしまった。
 というか、ナーシャちゃんも家に帰らないといけないんじゃないの!?

「あー。ナーシャはエルフたちから、ちょっと冷遇されてもーてるからな。お嬢ちゃんと一緒に居たいんやろ。エルフはこれくらいの年齢で自立するから、親が家で待っている訳でもないしな」
「という訳で、お姉様……私と一緒に寝てくださいっ! 今日だけでも良いですから」
「んー、じゃあ……でも、お風呂は入りたくない? ナーシャちゃんはお風呂とかって、どうしているの?」

 単純に疑問に思ったので聞いてみると、普段はエルフの村の近くにある湖で水浴びをするらしい。
 エルフたちは皆そこで水浴びをするので、その時に冷たい視線を感じるのだとか。
 なので、いつも短い時間でササっと済ませていると。

「なので、私はその辺の川でも何でも平気なんですけど……お姉様は、お湯が良いのですよね?」
「んー、そうだけど……そうだ。ちょっと待ってね」

 こそこそユリアナに聞いて、やりたい事が出来ると分かったので、早速場所を決め……ここにしよっと。
 先ずは土魔法で浅くて広い穴を開ける。
 次に再び土魔法で大きめの石を敷き詰めたら、水魔法でたっぷりのお水を注ぐ。

「お姉様、凄いです! まさか泉を作ってしまうなんて」
「いやいや、これだとまだ未完成だから。最後に、ナーシャちゃんにこのお水をお湯に変えてもらったら完成よ」
「え? お湯に……ですか? 確かに今はお姉様にいただいた料理で魔力が溢れるくらいにありますけど……」
「じゃあ、どーんとやっちゃいましょう! 何かこう、炎の魔法的な感じで」
「こ、これは……分かりました! お姉様が私に自信をつけさせようとしてくださっているんですね? やってみます!」

 えーっと、この中で火魔法が使えそうなのがナーシャちゃんしか居なかったからなんだけど……まぁやる気に満ちているみたいだし、応援しておこう。

「ナーシャちゃん、頑張って!」
「任せてください! どーんと、≪ファイアーボール≫」

 ナーシャちゃんの手から、大きな火の弾が現れ……ちょーっと大き過ぎない!?

「お嬢ちゃん! アレは流石にやり過ぎやっ!」
「お姉ちゃん! 下がってー!」
「え、えーっと、≪クリエイト・ウォーター≫」

 ナーシャが火の弾を放った瞬間、ダニエルが土魔法でお風呂の周りを周りに石の壁を作り、セシルが風魔法で私を守ってくれた。
 私は私で、火を消さなきゃって、水魔法を使い……

「やったー! お姉様、見てください! ちょうど良い感じのお風呂ですよ!」

 奇跡的にちょうど良い感じの露天風呂が出来ていた。

「えーっと、うん。さ、流石ナーシャちゃんね。でも、もう少し弱めでも良かったかも」
「……よく、あの状態から、こうなったもんやわ」
「お姉ちゃん。今のは結構危なかったと思うんだけど」

 ジト目のダニエルとセシルを前に、ナーシャが不思議そうにしているけど……よく考えたら、私の料理を食べると、ダニエルとセシルが人に変身しちゃうくらいに魔力が増えるのよね。
 未だに理由はよくわかっていないけど、料理を食べた後のナーシャちゃんの魔法には気を付けないと。
 ちょっと反省しつつも、良い湯加減なのは事実なので、早速入る事にした。
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